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バッテリーの需要拡大に応える生産技術

攪拌装置メーカーのプライミクスが、独自技術をもとに事業を拡大させている。化粧品や食品などの分野で培った同社の技術は、ミクロンレベルで均質な混練が求められるリチウムイオンバッテリーのスラリー製造でも生かされ、高いバッテリー性能の実現に寄与している。バッテリーの需要拡大に対応するために、新しい生産技術を開発するとともに2019年5月に第2工場を新設。有能な技術者を集めるための職場環境の充実にも取り組んでいるところだ。

攪拌装置のニーズ拡大に応えるため5月に新設の第2工場と敷地内のバーベキュー場

材料を混ぜる攪拌の世界は実は奥深い。単にかき混ぜて乳化や分散を行うだけでなく、原料を均一に分散しなくては商品として十分な効果を発揮できないものが多いためだ。混ぜる過程で素材の粘度が変わっていくものは、混ぜ方にも変化が必要になる。さらに生産性を高める工夫も施さなくてはならない。

その攪拌の分野で実績を持つのがプライミクスだ。化粧品や食品、医薬品など、原料を均一に混ぜることで特性を出す商品の生産現場で、同社の攪拌装置は広く使われている。中でもここ数年同社の攪拌装置の活用が急速に進んでいるのが、リチウムイオンバッテリーの分野だ。リチウムイオンバッテリーの電極は、原料を混ぜたスラリー(塗料)をフィルムに塗って製造する。原料を混ぜる際、原料の粒径をミクロンレベルまで細かくし、粒子を均一に分散させることがバッテリー性能を左右する。そこで攪拌技術で高度なノウハウを持つ同社の装置に注目が集まっているのだ。

同社の高い攪拌技術を象徴する装置「フィルミックス®」では、小さな孔を多数持つホイールが容器内部で回転し、その内側に投入された原料を遠心力で通していく。一般的な回転体の羽根でかき回す方法では原料の中で羽根が当たる部分しか力を受けないが、遠心力を使うフィルミックス®では原料全部が強いずり応力を受けて微粒化する。内部に混ぜ終えた素材が滞留することがないのも特徴だ。

フィルミックス®の内部構造。下から投入された原料は遠心力でホイールに押しつぶされ、微粒化した後オーバーフローで上から取り出される

もともと化粧品などの製造で使われてきたフィルミックス®は、今ではその攪拌性能が評価され、バッテリーの製造でも使われるようになった。さらにバッテリーの需要拡大に向けて同社が用意したのが、連続生産方式の「CDM(Continuous Dispersion Mixing)プロセス」だ。

連続生産で後工程と同期を取ることが可能に

一般的な攪拌装置では、タンクに原料を投入してから混ぜる作業を始める。しかし大量生産のためにタンクを大型化しようとすると、原料が微粒化して十分混ざるまでに時間がかかってしまう。またタンクに原料を投入する間や、混ぜ終えたスラリーを取り出す間は攪拌作業を止める必要があるため、装置の稼働率を高めにくいうえに、スラリーは一定時間ごとにしかできあがらない。そのため混ぜたスラリーを使ってバッテリーを製造する後工程と同期を取ることができず、バッテリーの需要拡大に応えられる生産性を実現できないという問題があった。

そこでフィルミックス®に前後の処理を行う装置を組み合わせ、装置を止めることなく原料からスラリーを連続的に生産できるようにしたのがCDMプロセスだ。前工程のプレミキサーで原料を流体にした後フィルミックス®に下から投入。フィルミックス®では混ぜたスラリーを上からオーバーフローさせることで取り出すため、連続的に後工程のタンクに投入できる。

装置を止めないため、同じ生産量を確保する場合でもタンクの大きさは従来の方法の半分で済み、完全自動化もしやすい。電気自動車の台頭などで増えるバッテリーの需要に対応できる生産性向上を、CDMプロセスは可能にしている。

部品レベルで設計を見直して実現した定置洗浄機能

攪拌装置の生産性向上の点で同社がもう一つ取り組んでいるのが、メンテナンス性の向上、中でも手のかかるとされる装置の洗浄作業の効率化だ。特に化粧品や食品のように人間の体内に吸収されるような製品を作る場合、素材の安全性が重要になる。そのためメーカーは頻繁に装置を分解して内部を洗浄し、終わった後再び組み立てているが、その作業は現場の作業者にとって大きな負担だ。また人が手作業で洗う限り、手から雑菌が混入するリスクを完全に避けることはできない。

そこで同社が2018年に発売した研究用の真空乳化装置「クリアスタア®」では、負担の大きい洗浄作業の自動化機構を組み込んだ。装置内部に洗浄液を高圧で回しかけ、最後に純水で洗い流すまでを、装置を移動させたり分解したりすることなく行える。洗い終えた後に水がたまる部分があるとそこが雑菌繁殖のもとになりやすいため、羽根の形状など部品一つひとつについて設計を見直したほか、ボルトによる締結を溶接に置き換えて、液体が入り込みやすい隙間をなくすなどの工夫も施している。

分解することなく内部を洗浄できる真空乳化装置「クリアスタア®」の生産機と研究機

化粧品や食品は雑菌対策のために材料に防腐剤を使うものが少なくないが、一方で防腐剤は消費者の健康志向とは相容れない存在。メンテナンス性を向上させながら素材の安全性を高めた装置で、メーカーは消費者が気にする防腐剤の使用量を抑えることが可能になるわけだ。

「仕事を楽しむ」環境に人材集まる

こうした新技術を次々と生み出す背景にあるのが、同社の職場環境だ。同社は創立90周年を2年後に控えた2015年、本社と大阪淀川工場および埼玉工場を兵庫県の淡路島に移転した。大勢の社員の転居を伴うような移転を行った大きな目的は、「仕事を楽しむ」環境作りだ。美術館風の本社に海に面したオフィス、空調を効かせた工場は、一般的な製造業のイメージからは程遠い。オフィスの席は毎日くじ引きで決まり、敷地内にはバーベキュー場やゴルフ練習場、フットサル場も配置するなど、随所で遊び心を演出している。

それらの効果は大きく、淡路島だけでなく地域一帯から注目を浴びる存在となり、人材採用にも好影響を与えているという。技術者不足が懸念される中でも、同社は継続的に有能な人材を集められる環境を整えたわけだ。さらに2019年5月には本社敷地内に第2工場を新設し、新たな攪拌装置のニーズに応えられる体制を固めている。

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