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xTECH EXPO 2019レビュー

「はやぶさ2」を支えたチームづくりの秘訣

AIやIoTなどテクノロジーの進化によって様々な産業の構造やビジネスモデルが変わろうとする中、「日経xTECH EXPO(クロステック・エキスポ) 2019」が開催された。エンタープライズICTやクラウド、セキュリティ、ビジネスAIなどの分野に加え、ものづくり、金融、流通・サービス、建設・土木、医療・健康といった産業のビジネス変革に向けた展示や講演などを通じ、ビジネスと技術の「クロス領域」で起こるイノベーションの最前線を体感するイベントとなった。

基調講演

小惑星探査機「はやぶさ2」の
世界初を支えたチームづくり

津田 雄一 氏
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
宇宙科学研究所
はやぶさ2プロジェクトマネージャ
津田 雄一

 2014年12月に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ2」。小惑星「リュウグウ」に2019年2月と7月の2度のタッチダウンを成功させるなど多くの成果を上げ、2020年末に地球へ帰還する予定だ。このはやぶさ2プロジェクトでは、ロボットによる小惑星表面の移動探査や地下物質の採取などいくつもの「世界初」を達成した。

 約600名のプロジェクトチームのマネージャーを務めるJAXAの津田雄一氏は、「メンバーの大多数は部下ではなく、同じ志を持つパートナーです。そのため、共通のゴール設定と誰もが納得するマネジメントが重要でした」と語る。

 探査型プロジェクトならではのチームづくりの難しさもある。宇宙探査は事前に答えが分からないからだ。リーダーも答えを知らない。「答えを解けるチームではなく、問題をつくれるチームづくりが必要でした」

 メンバー自身に設問者になってもらい、いくつもの突破口を用意する。どの突破口が役に立つか分からないが、お互いに議論できるコミュニケーション環境が重要だという。

 そして津田氏自身の経験から、探査型プロジェクトを育てる上で4つのステップがあるという。ゴールの共有とチームのメンバー個々の能力・専門性を研鑽する「草創期」、自己主張をぶつけ合いお互いに磨き合う「混沌・衝突」、お互いの専門性を強めてチームとしての高い自律性と自己成長性を獲得する「一人格化・自律化」、高度なチームワークで成果を量産する「収穫期」だ。

 「探査型プロジェクトにおいてリーダーの役割は組織を極力フラットにすることです。上司に忠実にさせるのでなく、自然の摂理に忠実にさせることで相互承認が深まります」と津田氏は説明する。

 安易にまとまらず、対立軸を作ることも重要になる。チームがまとまりそうになったら、あえて対案を提示することで事業に信頼性が増し、緊張感と当事者意識が高まるという。そして、メンバーが安心してアイデアを出せる環境をつくり、組織内でリーダーが責任を取ることを明示する必要がある。

 「リーダーの大きな役割は、五分五分の判断が必要になった時に決断することと、結果責任を取ることです。そして、道を示し、変化を生み続けることです。これにより、チームは成長します」と津田氏は強調する。

基調講演(パネルディスカッション)

製造のキーパーソンが語る
ものづくりデジタル化の未来

 マツダの木谷昭博氏は「マツダのデジタル化の取り組み」について話した。1996年にスタートしたMDI(マツダ デジタル イノベーション)1では、車の開発・生産領域でデジタル技術を駆使し、図面の完成度を上げるモデルベース開発を進めてきた。

 現在のMDI2は工場から物流、拠点、ディーラー、ユーザー、車まで領域を広げ、IoTなどを使って業務を革新する。

「このコネクテッドで得られた様々な情報をフィードバックし、快適な車の開発など、ものづくりを進化させる情報革新を推進します」と木谷氏は語った。

 独シーメンスのサッシャ・メヌル氏は「オートメーションの未来」について語った。製造現場では「AIやエッジコンピューティング、AR(拡張現実)などの活用が重要になる」という。工場内の複数ロボットをAI(人工知能)で制御しながら作業を効率化することも可能だ。自社工場ではAIとエッジコンピューティングを用い設備機器の予兆検知を実施。「設備機器の振動や温度などのデータを収集・分析し、事前にメンテナンスを行うことで障害を防ぎ、コストを削減しています」とメヌル氏は述べた。

 米ロックウェルのジョセフ・バルトロメオ氏は「コネクテッドエンタープライズの取り組み」について話した。かつて同社の各工場では情報共有がされず、ノウハウやスキルも属人化され、工場全体の統合システムもなかったという。そこで工場のデジタル変革を行うコネクテッドエンタープライズに着手。各工場をICTでつないで情報共有を行うことにより、生産性向上を実現。「デジタルものづくりでは、小さくスタートし、大きく成長させることで、競争力を強化できます」とバルトロメオ氏は強調した。

木谷 昭博 氏
マツダ株式会社
執行役員 MDI&IT本部 本部長
木谷 昭博
サッシャ・メヌル 氏
独シーメンス
ファクトリー オートメーション 海外営業担当シニアディレクター
サッシャ・メヌル
ジョセフ・バルトロメオ 氏
米ロックウェル・オートメーション
エンタープライズアカウント&ソフトウエアセールス
担当副社長
ジョセフ・バルトロメオ

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