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ミクシィが語るクラウド活用の秘策とは!?

日本IBM

「モンスターストライク」を運営するミクシィのクラウド活用術

スマホアプリ「モンスターストライク」を運営するミクシィでは自社データセンターでのオンプレミス環境とパブリッククラウドを組み合わせ、利用者のことを考え抜いたサービス環境を構築している。このクラウドサービスの1つに高速・低遅延でサーバー間接続が可能なIBM Cloudを採用した。その背景などをミクシィの吉野純平氏と日本IBMの髙良真穂氏が解説する。

オンプレミスとクラウドを
組み合わせリソースを確保

吉野 純平 氏
株式会社ミクシィ
開発本部 インフラ室 部長
吉野 純平

 「モンスターストライク」(以下、モンスト)は、自分のモンスターを引っ張って弾き、敵のモンスターに当てて倒していくスマートフォンの特性を活かした新感覚アクションRPGだ。最大4人まで同時に遊べるマルチプレイが特徴で、2013年10月の提供開始以来、世界累計利用者数は5200万人を突破している。

 ミクシィではユーザーが快適にモンストを楽しめるよう、サービスの提供基盤となるアプリケーションサーバーを自社データセンターと複数のパブリッククラウドに配置した、ハイブリッドかつマルチクラウドな環境で運用しており、オンプレミスのサーバーだけでも1000台に上るという。


髙良 真穂 氏
日本アイ・ビー・エム株式会社
クラウド・ソリューション・アーキテクト
IBMクラウド エバンジェリスト
髙良 真穂

 巨大なシステムを構築・運用する上で、ミクシィの吉野純平氏は「変更したい時にいつでも変えられる構造のシステムを作ること」、そして「バランスをどうとるかが重要になります」と話す。オンプレミスのシステム開発には多くの時間と労力が必要になるが、パブリッククラウドを組み合わせることで、開発に専念する時間が確保できる。このバランスを心掛けることで自分たちが目指すものを作ることができる。

 ミクシィでは、モンストのサービスを開始した2013年からオンプレミスと、パブリッククラウドによるハイブリッドクラウドを導入。延べ8つのクラウドサービスを利用し、最大200Gbpsのネットワーク帯域でオンプレミスとクラウド間を接続してきた実績がある。

 モンストのシステムは、「バックアップサーバーから配線ルートまで余分にリソースを用意し、可用性を担保しています。管理対象が増えるので大変ですが、1系統が故障してもサービスが止まることはありません」、これを吉野氏は「N+2から3の設計」と説明する。

IBM Cloudの低遅延接続と
ベアメタルサーバーを採用

 吉野氏は、N+2または3の設計の考え方の優れた点として、「いつでも問題となるクラウドの使用を止められる」ことを挙げる。1つのクラウドを止めても利用者のプレイは止まらない設計なのだ。この顧客目線の考え方は、オンプレミスとクラウドのサーバー間の低遅延な接続要求にも現れている。遅延時間はモンストを快適に楽しめるかどうかを大きく左右するからだ。そのため、サーバー間の遅延時間は1ミリ/秒以下を目標としている。これらの要件を満たすクラウドサービスとして「IBM Cloud」が採用されている。

 吉野氏は、「IBM Cloudはハイブリッドクラウド・マルチクラウド環境でマイクロ秒レベルの低遅延が可能です。ミクシィのオンプレミスのデータセンター、IBM Cloud、他社クラウド群を冗長化したネットワークを構成し、ユーザーが快適にゲームを楽しめる環境を整えています。データセンターとIBM Cloudのそれぞれのアプリケーションサーバーの間で1ミリ/秒という高速・低遅延の接続が可能です」と評価する。

 ミクシィのデータセンターとIBM Cloudのハイブリッドクラウド環境において、ミクシィの目標としている低遅延の要件を可能にしているのがIBM Cloud Direct Linkだ。

 また、ミクシィはパブリッククラウドに、「IBM Cloudベアメタルサーバー(物理サーバー)」を利用。この「ベアメタル」とは英語で「むき出しの金属」を意味し、仮想化のためのハイパーバイザーが無い物理サーバーを指している。その特徴は、クラウドのウェブ管理画面やAPIを通じて、仮想サーバーのような柔軟な対応を物理サーバーで享受可能な点にある。さらに、仮想サーバーでは到達できないような、ハードウェアを直接アクセスする故の高いパフォーマンスやセキュリティが得られる点である。

 吉野氏は、「アクセスの増えるキャンペーンなど一時的なシステムの増減はクラウドで吸収するなどオンプレミスとクラウドの連携によって投資を最適化できます。今後も、複数のパブリッククラウドを利用したマルチクラウド、ハイブリッド環境を適切に活用し、モンストの安定したサービスをユーザーに提供していきます」とミクシィのクラウド活用法を述べる。

企業のハイブリッドクラウド採用の理由
今後クラウドネイティブの適用が加速し、それらを支える実行基盤が求められている
企業のハイブリッドクラウド採用の理由
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Kubernetesでマルチクラウドの
オペレーションを共通化

 セッションの後半、日本IBMの髙良真穂氏は「機敏性や柔軟性、繁忙期の対応などを理由に、ハイブリッドクラウドの利用が増えています。今後、企業のクラウドネイティブ適用が加速し、ハイブリッドクラウド、マルチクラウドが当たり前になる時代を迎えています」と述べ、新たな段階へと進む企業をサポートするIBMのソリューションを紹介した。

 その一例として、クラウドネイティブ開発で利用されるコンテナと、オープンソースのコンテナオーケストレーションツールKubernetes(クーバネティス)の技術について解説。まず、仮想サーバー上のアプリケーションはクラウド環境に依存するのに対し、コンテナ化したアプリケーションは実行環境があればどこでも動作でき、クラウド間を移動することも可能だという。

 また、クラウド事業者は、クラウドのインフラと企業システムをつなぐAPIやツールを提供しているが、事業者ごとに仕様が異なるため、企業は各クラウドに合わせた対応が必要になり、容易にハイブリッドクラウドを利用できないという課題がある点を指摘。

 髙良氏は、「Kubernetesは各クラウドサービスの違いを吸収しオペレーションを共通化でき、ハイブリッドクラウド、マルチクラウドでのシステム開発を促進します」と解説し、Kubernetes、OpenShiftのコンテナ技術をベースにアプリケーションの開発・テスト・運用に必要な機能を提供する「IBM Cloud Paks」などを紹介。

 最後に、「IBMでは、今後も企業のハイブリッドクラウド、マルチクラウドの活用を支援していきます」と髙良氏は意欲を語り、講演を締めくくった。

ハイブリッドクラウド、マルチクラウドを加速するKubernetes
Kubernetesは各クラウドベンダーのAPIの違いを吸収しオペレーションを共通化
ハイブリッドクラウド、マルチクラウドを加速するKubernetes
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