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xTECH EXPO 2019レビュー

5G時代到来でデータセンターはどう変化?

日本データセンター協会(JDCC)

5G時代到来で変革期を迎え
データセンターはどう変わるのか

2019年10月9日から3日間、東京ビッグサイトで開催された「日経 xTECH EXPO 2019」。その中で開催されたのが、「次世代データセンター研究サミット2019 ~未来のデータセンター像を考える~」だ。移動通信システムに大きな変革をもたらすといわれる5G(第5世代移動通信システム)のサービス開始を控え、注目されるデータセンターのあり方について、どのような議論が交わされたのか。当日の模様をレポートする。

5Gへの幻滅期を克服するカギ
握るのはデータセンタービジネス

江崎 浩 氏
オープニングトーク
日本データセンター協会
運営委員長
東京大学大学院 教授
江崎 浩

 オープニングトークをしたのは、日本データセンター協会(以下、JDCC)運営委員長の江崎浩氏だ。

 江崎氏は、“インダストリー4.0”から“ソサエティ5.0”へという流れを踏まえ、今後のデータセンタービジネスを考えるポイントとして、分散化・プライベート化・DFFT(信頼性のある自由なデータ流通)の3つを列挙。また、中国データセンター協会との交流やサイバーセキュリティー対策など、JDCCの活動成果についても報告を行った。

 続く基調講演は、技術展望と市場展望に分けて実施。技術展望について講演したのは、企 代表取締役のクロサカタツヤ氏だ。

 クロサカ氏は、2020年からサービス開始が予定されている5Gの最新事情を紹介しながら、データセンターが5Gにどう関わってくるのかという視点で講演を行った。高速通信・大容量化・低遅延化などが期待される5Gだが、クロサカ氏は課題も多いと語る。

 「5Gで最初のサービスは、ゲームと動画配信ですが、5Gが割り当てられる周波数帯域は電波がつながりにくいという特徴があり、期待が大きいだけにサービス開始からしばらくは幻滅期が訪れるでしょう」というのがクロサカ氏の見方だ。

 この課題を克服するカギを握るのがデータセンターだとクロサカ氏は言う。

 「5Gで重要なのは、とにかく基地局を増やしてネットワークを張り巡らせることです。5Gというのは、単なる移動通信システムの世代交代だけではなく、ネットワークが空間に浸透し、ヒトやモノを包む環境を実現します。マルチクラウドやエッジコンピューティングとも関係するので、データセンターが果たすべき役割も重要になるはずです」

クラウドと非クラウドをつなぐ
エッジの役割が重要になる

 市場展望については、IDC Japan ITサービスでリサーチマネージャーを務める伊藤未明氏が講演を行った。

 まず、伊藤氏が指摘したのは、データセンタービジネスの二極化だ。「市場規模は2023年には約2兆円に上るとみられていますが、伸びているのはAWSのようなクラウド系のサービスで、従来の専有型データセンターサービスは減少。大規模な集約の傾向は、今後も続くことが予想されます」とした上で、現在のデータセンターの建設ラッシュは、2023年頃までに落ち着くのではないかという見方を示した。

 こうした中、伊藤氏がポイントとして挙げたのがエッジデータセンターだ。

 「マルチクラウドやハイブリッドクラウドが浸透し、1つのデータセンターでシステムが完結する時代ではなくなっただけに、混在するクラウドと非クラウドをつなぐエッジデータセンターの役割は重要です」

 最後に、伊藤氏はデータセンター運用の今後の課題として複雑化するキャパシティ管理があり、いずれAI活用の可能性があることを示して講演を締めくくった。

クロサカ タツヤ 氏
技術展望
企 代表取締役
慶應義塾大学 大学院
政策・メディア研究科特任 准教授
クロサカ タツヤ
伊藤 未明 氏
市場展望
IDC Japan IT サービス
リサーチマネージャー
伊藤 未明

マルチクラウドやエッジを踏まえ
「つなぐ」が最新のキーワードに

泓 宏優 氏
モデレーター
NECフィールディング
ソリューション事業部長
泓 宏優

 基調講演に続いて行われたパネルディスカッションでは、モデレーターを務めるNECフィールディング ソリューション事業部長の泓宏優氏の司会で、4名のパネラーがそれぞれの立場から意見を交わした。

 パネラーとして参加したのは、NTT国際通信でデータセンターサービス部門の担当部長を務める本橋寿哉氏、JDCC副理事長でさくらインターネット代表取締役社長の田中邦裕氏、ブロードバンドタワー取締役執行役員の樋山洋介氏、JDCC 事務局長の増永直大氏だ。

 データセンターを巡る現状についての考えや各自の取り組みについて、本橋氏は「NTT グループは自社サービス中心のビジネスを行う傾向でしたが、マルチクラウドなどの新しいニーズに対応し、他の事業者との『協創』や『つなぐ』ことで、顧客の利便性の向上に資するように舵をきっています」と語る。

 田中氏は、「データセンターの成長はまだ見込めますが、ライバルがGAFAでは分が悪いですよね。エッジデータセンターも活用しながら、ソフトウエアでデータセンターを統合するようなサービスを展開することが、重要だと考えています」と語った。

 これに賛同する形で、データセンター間接続の重要性について説いたのが樋山氏だ。

 「ビッグデータやAI、5G時代に向けて、東京・大手町に新データセンターを開設しました。8月にAWSの東京リージョンで大規模障害が発生したことを受け、マルチリージョンに対するユーザーの関心も高まっています。地方に分散したエッジデータセンターとの接続やマルチクラウドの動きに対応できるコネクトサービスを提供していきたいですね」

本橋 寿哉 氏
パネラー
NTT国際通信 ICTインフラサービス部
データセンターサービス部門 担当部長
本橋 寿哉
田中 邦裕 氏
パネラー
日本データセンター協会 副理事長
さくらインターネット 代表取締役社長
田中 邦裕
樋山 洋介 氏
パネラー
ブロードバンドタワー 取締役執行役員
DC・クラウド・ストレージ 営業担当
樋山 洋介
増永 直大 氏
パネラー
日本データセンター協会 事務局長
増永コンサルティング
増永 直大

オンリーワンのサービスとして
自社の強みを提供することが必須

 GAFAやBATを“敵”と考える国内のデータセンター事業者も少なくない中、増永氏からは、インターネット時代初期の古いデータセンターが更新時期を迎えているという指摘とともに「GAFAやBATをコンピューター資源と考えて、うまく活用することを考えてもいいのではないでしょうか」という提言が出された。

 データセンタービジネスの今後については、立地や電力の問題、中央集中化、地方分散化、さらに基調講演で出された5Gの課題などもあり、正確な未来像はまだ描けないとの意見が多かった。

 その一方で、単にサーバーや場所を提供するだけでなく、コンテンツやサービスがあってこそのデータセンターであるという観点で自社の強みを見極め、オンリーワンサービスとしての提供が重要だという点ではパネラー全員の意見が一致した。

 5G時代の到来に向けて大きな変革期を迎えつつあるデータセンター業界だが、次世代データセンターの予測も含めて、これからどのような準備をするのかがカギになると明確に示されたシンポジウムとなった。

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