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xTECH EXPO 2019レビュー

チャット機能だけではないSlackの魅力

Slack Japan

競争力強化のカギは“全社一丸”
散在するレガシーの壁を破る基盤とは

デジタルによる新しいビジネス創造が盛り上がるなか、日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)への対応遅れが指摘されている。社内に散在するレガシーが足かせとなり、データ連携や情報共有が進んでいないことが原因だ。こうした状況を打破するには、全社一丸で業務遂行や情報共有を実現する基盤が必要になる。

日本企業再浮上のカギは
全社一丸の基盤づくりにあり

溝口 宗太郎 氏
Slack Japan 株式会社
シニア テクノロジー ストラテジスト
溝口 宗太郎

 今から30年前の1989年、時価総額ランキングで日本企業はグローバルトップ10の7社を占めていた。30年後の2019年、残念ながら日本企業はランキングトップ10には入っておらず、代わりに米国のIT企業が躍進している。

 さらに近年は、デジタルを活用して新しいビジネスモデルを切り開いた企業が躍進している。一例を挙げると、AirbnbやUber、かつてはDVDレンタル事業を営み、現在は動画配信サービスを手掛けるNetflixなどがそれに当たる。そうしたビジネスモデル変革にも、日本企業は残念ながら出遅れている感がある。

 Slack Japanの溝口宗太郎氏は、日本企業がITやデジタルを十分に活用できていない状況に対し、その理由を3つ挙げる。

 「1つは日本企業においては、これまで企業内や部門内など、部分最適でシステムを構築してしまい、相互運用ができず包括的なデータ連携を阻んでいること。もう1つは、古いシステムで保守運用費がかかり、新たなIT投資ができないこと。そして最後に、システムトラブルやデータの滅失などのリスクが高まってきたことです」

 経済産業省の『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』によれば、2025年にはこうした課題に起因する経済損失が年間最大12兆円に上るという。

 年間12兆円の経済損失は、日本企業が競争力を失っていった「失われた30年」どころではなく、世界との格差がますます広がることを意味する。

 そうならないためには、日本企業はすべてが一丸となり、システムを含めた強い組織やチームづくりにまい進しなければならない。「データ連携やスムーズな業務プロセスを実現するだけでなく、課題や新しい取り組みなどを共有し、組織全体が活発にコミュニケーションできる包括的な共通の業務基盤が必要なのです」と溝口氏は力説する。

Slackとフルクラウドで
働きやすさを実現

 その包括的な共通の業務基盤が「Slack」だ。もちろん溝口氏も、日々Slackを活用している。Slackというと、一般にはチャットツールというイメージが強い。だがSlackはいまや単なるチャットだけでなく、企業内のコミュニケーションハブであり、業務基盤となっているという。

 実は溝口氏は、Slack Japanで働く前は大手外資系IT企業のマーケティング部に勤務していた。そのIT企業も最先端のテクノロジーやネットワークを活用し、働きやすい環境ではあったが、組織の規模感や組織体制がSlack Japanは当時とはまったく異なり、「格段の働きやすさを感じます」(溝口氏)という。

 以前は同じ部門とはいえ、各人が自分のKPIや役割を持って動くチームだったため、一体感のあるチーム構成というよりは、“個人の寄せ集め”に近かったという。各人が個別にKPIを持っているため、個々人が自分の成果をExcelで管理するようになり、ほかのチームスタッフがどのようなパフォーマンスを上げているのかの共有があまりなされていなかった。

 加えて、自分の成果が評価に直結するため、重要な情報は独占するような傾向も見られ、結果として会社のミッションに向かって団結できず、行き詰まっていると感じることもあったという。

 当時と比べてITの面で変化しているのは、Slack Japanでは組織全体で最新クラウドアプリケーションをフル活用し、業務を遂行していること。単に全員が同じ業務アプリケーションを使っているだけではない。「これらの業務アプリケーションの基盤にSlackを導入し、業務プロセスからデータ活用、コミュニケーションに至るまで、すべての基盤としてSlackを通じて仕事を進めています」(溝口氏)

オープンなコミュニケーションや
情報共有をSlackで推進

 Slackはメールと異なり個々人の「メールボックス」は存在せず、「チャンネル」のなかでコミュニケーションを行う。チャンネルとは、自由に設定できるコミュニケーションの場で、部門別であったり、特定のプロジェクト別であったり、全社員を対象にするなど、目的に沿って参加ユーザーを招待できる。各ユーザーの会話はチャンネルのワークスペースで開示されるので、メールのように当事者同士でコミュニケーションが閉じることはない。

 「誰かの発言に対し、自由に感想を述べたり、新たに提案したりするなど、オープンでコミュニケーションが活発になります」と溝口氏は説明する。

 なおSlack Japanでは、営業部門が提案資料をSlackで共有し、それをチーム全員でブラッシュアップして、より良い提案や資料作りに生かしているといい、「こうして全社一丸で業務に取り組むことで、強い組織体制やカルチャーが醸成されます」と溝口氏は説明する。

Slackの画面例
Slack Japanでは、営業部門が提案資料を共有・ブラッシュアップしている
Slackの画面例
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 またSlackは、業務基盤としてクラウド業務アプリとAPI連携できる。そのためSlack経由で業務アプリを呼び出して活用することが可能で、「2025年の崖」で指摘されているようなデータやシステムの壁を払拭できることが特徴だ。例えばSlack Japanでは、カスタマーサポートのZendeskやクラウドCRMのSalesforceとSlackを連携しているので、顧客からの意見や質問を営業部門が確認したり、顧客のアカウント情報を別部門の社員が閲覧したりなど、部門を超えた情報共有がスムーズにできるという。人事システムとも連携し、Slack経由で有給休暇の日数確認や申請が簡単にできる。

Slack導入のメリット
各種データや人とのコミュニケーションが、Slackによって1つになる
Slack導入のメリット
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 このようなSlackは、IT企業だけでなく、米国連邦政府や州政府、NASAなどのほか、国内では文藝春秋社や日本経済新聞などの伝統メディア企業でも積極活用されているという。特に日経新聞では、日経電子版の開発チームにおいて、読者から上がってくる評価をすべてSlackで共有し、改善に役立てている。

 溝口氏は最後に、2002年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏の「イノベーションに天才は不要。異分野融合の場こそ重要」という言葉を出し、「Slackはそのようなオープンな融合の場を実現し、全社一丸の基盤を実現するツールです」と述べ、講演を終えた。

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