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xTECH EXPO 2019レビュー

ソラコムが目指すIoTの民主化

ソラコム

最新のIoT SIMが実現するビジネス変革

「IoTテクノロジーの民主化」を自らのミッションとするソラコムは、2015年の「SORACOM Air」のサービス開始以来、新サービスを次々と発表している。現在ではクラウド側のシステムも提供するほか、エッジコンピューティングにも進出。まだIoTが行き届いていない分野や業界がより簡単に使えるよう、工場や介護、農業などの用途別ソリューションを月額で提供する取り組みも開始している。

プログラムを書き換えできる
SIM内蔵ネットワークカメラが登場

玉川 憲 氏
株式会社ソラコム
代表取締役社長
玉川 憲

 ソラコムがIoT専門の仮想移動体通信事業者(MVNO)としてサービスを開始したのは、2015年9月。スピーカーの玉川憲氏は「IoTテクノロジーの民主化」を目指す同社ビジネスの最新状況を多くの事例とともに紹介した。

 特に注目されたのが、エッジコンピューティングへの取り組み姿勢だ。ソラコムの従来のサービスはMVNOとしてのものがほとんどだったが、2019年7月に発表された「S+(サープラス) Camera Basic」はネットワークカメラというハードウエアなのである。

 ポイントは、通信環境となる同社のIoT SIMだけでなく、アルゴリズム(プログラム)を処理するための小型のコンピュータ(Raspberry Piベース)も内蔵していること。玉川氏は、「S+ Camera Basicは電源を入れるだけで稼働し、内部のアルゴリズムはクラウドから自在に送り込めます」と説明する。どのようなアルゴリズムをS+ Camera Basicに送り込むかは、ソラコムのWebコンソールからユーザーが自由に選択できる。

 アルゴリズムには、ソラコム製、ソラコムのパートナー製、自社作成の3種類がある。「S+ Camera Basicのパートナーとして、AIに強いスタートアップ企業の『Acroquest Technology』と『ABEJA』の2社が最近加わりました」と玉川氏は説明。今後は、AIを活用したプログラムも出てくるだろう。

「S+ Camera」で実現できること
ユーザーがアルゴリズムを選択可能
「S+ Camera」で実現できること
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クラウドとの連携を強化
IoTのマーケットプレイスも開始

 クラウドに関するサービスもますます強化されている。もともとソラコムは2016年の時点でアマゾン、マイクロソフト、グーグルの3大メガクラウドとの連携を実現済み。ソラコムのWebコンソールで転送先を選ぶ方式なので、誰でも簡単に使えて柔軟性も高い。

 さらに、「IoT SIMだけでなく、そこからのデータを受け取って処理するクラウドシステムの構築もソラコムに頼みたいという企業の声に応えて」(玉川氏)、「SORACOM Harvest」(データ蓄積)と「SORACOM Lagoon」(データ可視化)の2つのサービスも提供中。自社の産業機械などに接続されている制御用PCにソラコムのIoT SIMを装着するだけで、IoTシステムのための全機能を含んだソリューションができあがるようになった。

 このほか、クラウドと閉域網経由で接続するためのサービスも充実している。例えば、「SORACOM Canal」(プライベート接続)を使えばAmazon Web Services(AWS)の仮想プライベートクラウド(VPC)との閉域網接続が可能。その他のクラウドについても、「SORACOM Door」(VPN接続)や「SORACOM Direct」(専用線接続)を利用すればデータをセキュアに転送できる。

 ソラコムが目指す「誰もがIoTの技術を活用できるようにする」=「IoTテクノロジーの民主化」への取り組みは、SORACOMプラットフォームが提供する開発者向けのサービスにとどまらない。2019年2月には少ない初期費用と月額でIoT活用を始められるマーケットプレイス「IoT SELECTION connected with SORACOM」をリース会社の東京センチュリーらと提供開始した。

 このWebサイトでは、工場、介護、農業、観光、遠隔カメラなど利用実績のあるIoTソリューションが、デバイス、通信、アプリケーションまでパッケージ化されており、ユーザーはインターネット上の契約のみで必要なIoTソリューションを、必要な台数、必要な期間注文することができる。「IoTはテクノロジーの総合格闘技。例えばネットワークカメラを導入したいと考えても、必要な機材の種類や購入方法、さらには設置、接続方法など導入までの過程で活用を断念するようなケースもありました。『IoT SELECTION』は、まだIoT活用が行き届いていない業界、分野のユーザーにも気軽にIoTを導入していただくための取り組みです」と玉川氏は説明する。

IoT SELECTION connected with SORACOM
事例ベースのソリューションが、サブスクリプションモデルで即利用可能
IoT SELECTION connected with SORACOM
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ソラコムのIoTサービスと製品群は
様々な業種の最前線で活躍している

 このような特長を持つソラコムのIoT SIMは、すでに多くの企業で業務のデジタル化に貢献している。

 例えば、石油販売業の丸三商事は、一般家庭の屋外にある灯油タンク(ホームタンク)に取り付けた容量センサーと「SORACOM LTE-M Button」(IoT発注ボタン)をつなぐソリューションを採用。残量が半分以下になった家庭を優先して回る運用方法を取ることによって、配送効率の向上と灯油切れ防止を両立させることに成功した。

伊佐 政隆 氏
株式会社ソラコム
ビジネスプロダクトマネージャー
伊佐 政隆

 また、IT関連製品を企画・開発・販売するソースネクストは、AI通訳機「ポケトーク」の内部にソラコムのチップ型IoT SIMを実装した状態で販売している。ソラコムの伊佐政隆氏は「ポケトーク内部で翻訳処理をするのではなく、ユーザーの音声データをクラウド側で分析・翻訳することによって、74言語間の双方向翻訳を低価格で実現しています」と紹介する。このSIMはグローバル対応版なので、世界128カ国で使用可能だ。

 このほか、設備工事業の名光機器は客先に設置した冷凍・冷蔵・空調装置をリモートからモニタリングするための仕組みとしてソラコムの製品とソリューションを活用している。具体的には、対象の装置にIoT SIMを取り付けて、そこから送られてくるセンサーデータをSORACOM Harvestでソラコムのクラウドに蓄積。SORACOM Lagoonのダッシュボード機能を使って、装置の状況をグラフなどで顧客にも分かりやすく表示する。

 最先端のIoTテクノロジーを使って、今まで不可能だったことを可能にする。ソラコムは、そうした「挑戦者」を“つなぐ力”で支援している。

※数字は2019年10月時点のもの

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