未来の自律動作型システムへ、安全機能を拡充

車載と産業機器の中枢へ
Armが投入する新たな3種のプロセッサ

高性能と機能安全を
兼ね備えた3種のIP

 これまでにもArmは、車載向けに高度な判断・制御処理に向けたCPUの「Arm Cortex-A76AE」と、センサフュージョンにおけるハブなどへの応用を想定したCPU「Arm Cortex-A65AE」を提供してきた。そして今回、車載だけでなく産業機器もターゲットに含めた3種の新たなIP、「Arm Cortex-A78AE」「Arm Mali-G78AE」「Arm Mali-C71AE」を投入した。いずれもターゲット・アプリケーションでの利用シーンに適した性能を備え、機能安全の標準規格である自動車向けの「ISO 26262」と産業機器などに向けた「IEC 61508」をサポートしている。

Arm Cortex-A78AE

 Arm Cortex-A78AEは、2020年5月に発表されたスマートフォンなどの応用を想定した最新CPU「Arm Cortex-A78」をベースに、ISO 26262 ASIL-B/DとIEC 61508 SIL2/3に対応した高度な機能安全を追加したIPである。従来製品であるArm Cortex-A76AEに比べて約30%性能が向上している。さらに、このIPには、車載や産業機器における多様な利用シーンに対応すべく、安全性技術Split Lock機能に新たにHybridモードを搭載した。

 Arm Cortex-A78AEには4つのCPUコアが搭載されている。インフォテインメントなどの処理で求められる安全レベルであるASIL-BやSIL 2ならば、すべてのコアを独立動作させてフル活用する「Split(独立)モード」で動かすことによって、高性能での処理が可能になる。一方、「走る」「曲がる」「止まる」といったクルマの基本機能に関わる部分などASIL-DやSIL3に準拠した特に高い安全性が求められる処理では、2つのコアを冗長動作させる「Lock(冗長)モード」で動かす構成を取り、同じ処理内容を実行して両者の動作を照合することで安全性を確認しながら処理できる。これによって、片方が故障した場合の故障検知が可能だ。

 ここまでは、前世代IPでも可能だった。Arm Cortex-A78AEに新たに搭載されたHybridモードでは、コアをSplitモードで動作させながら、コアを統合する共有クラスタロジック「DSU-AE」を常にLockモードで動作させる。従来のSplitモードでは、コア部分の自己診断時に共有クラスタロジックを停止もしくは同時に自己診断を行う必要があり、CPUクラスタの性能が低下する問題があった。Hybridモードならば、特定のコアだけを独立させて自己診断を行うことが可能で、その結果CPUクラスタ内のリソースの利用率が高まり、さらなる高性能が実現する。

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Arm Cortex-A78AEのSplit Lock機能に新たに搭載したHybridモード

これまでのSplitモードでは、コアの自己診断の際にコアと共有クラスタロジックのリソースを費やし、その分性能を損ねていた。Arm Cortex-A78AEに新たに搭載したHybridモードでは、コアを統合する共有クラスタロジックであるDSU-AEを常にLockモードで動作させることで、機能安全を確保しながら、コアのリソースの有効活用を可能にしている。

Arm Mali-G78AE

 Arm Mali-G78AEは、Arm初の車載や産業機器向けGPUであり、ASIL-BとSIL2に準拠している。独立した最大4つのパーティションに区切って利用できることで、高度な機能安全を実現する。

 例えば、メディアプレイヤー、地図上での経路探索、クラスタでの表示、ドライバーの状態のモニタリングの各処理を独立実行できる。このため、一部の処理に不具合が発生しても、他の処理に悪影響が波及しない。さらに仮想化を利用したパーティショニングを同時に利用することも可能だ。

Arm Mali-C71AE

 Arm Mali-C71AEは、ASIL-BおよびSIL2準拠の機能安全に対応した、最大4台のリアルタイムカメラ、または最大16台のバッファ付きカメラから得た画像を処理可能なISPである。CPUやGPUで画像データの内容を判断しやすくするための前処理を行う。1.2Gピクセル/秒のスループットを実現。さらに超高輝度幅(Ultra-wide dynamic range)にも対応し、暗いトンネルの中から明るい外に出た際のような明るさの急激な変化にも追随可能だ。

自律動作型システムの
エコシステムを拡充

 Armは、車載や産業機器に向けた自律動作型システムにおける2030年の半導体関連ビジネスの規模は80億米ドルに達すると予測している。ただし、スマートフォンなどに比べて、産業機器の応用分野は多種多様である。応用を拡大し、利用事例を増やしていくためには、自律動作型システムのソフトウェア・エコシステムの拡充が欠かせない。

 そこでArmでは、インフラストラクチャ・エッジでのAI推進を目指す「Project Cassini」などのイニシアチブを通じ、新しいテクノロジーのメリットをフルに引き出せるソフトウェアの開発を進めてきた。さらに、複数のオープンソース・コミュニティやベンダーとの連携を深め、定評あるクラウドネイティブ・エコシステムのイノベーションを採用しながら、自律動作型システムで求められる機能のサポートに向けて取り組んでいる。

 近い将来、農機や建機など多くのモビリティが自律動作型システムへと進化していくことだろう。また、街のいたるところで人間と共存し、生活や仕事を支援する自律動作型のロボットを見かけることもあるだろう。今回投入された新たな3種のプロセッサIPは、こうした未来を支えるArmアーキテクチャの新たな可能性を切り拓く役割を担うに違いない。

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