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桔梗原富夫が聞く、「空間情報」活用の未来

Googleマップなどの地図情報が無料または安価に利用できるようになった今、空間情報は普通の業務アプリケーションでも広く使われるようになった。 空間情報をIoTやAIなどの最新テクノロジーで強化する取り組みも進んでいる。 このような状況に、日立ソリューションズはどのような解を提示するのか——。 同社の空間情報におけるエバンジェリスト 賀川義昭氏に、日経BP 総合研究所 フェローの桔梗原富夫が話を聞く。

スマホやIoTデバイスの普及で
空間情報の対象が拡大した

——日立ソリューションズは、かなり早い時期から空間情報ビジネスに取り組まれておられました。

賀川氏 当社は地理情報システム(GIS)の出始めのころから取り組んでおりますので、もう30年近くになります。

 当時のGISは最先端のシステムでした。しかし今では、誰もがスマホでデジタル地図を簡単に見られるようになっています。そこで当社は、位置情報とそれに関連づけられた情報からなる空間情報のデータ活用にも事業領域を広げています。

賀川 義昭 氏
日立ソリューションズ
ビジネスコラボレーション本部
空間情報ソリューション開発部
主任技師
賀川 義昭

2001年、日立ソリューションズ入社。2013年まで衛星画像を応用したソリューション開発に従事する。2013年から空間情報を活用した新規ソリューション企画・開発に従事し、現在は建設業界向けのソリューションに注力。屋内位置把握ソリューション、スマートフォン活用3D計測ソリューションの開発に携わる。専門領域は、画像処理技術・3次元データ処理技術・衛星測位技術・屋内位置測位技術。

——空間情報のデータ活用の重要性が高まっている背景には、どのようなことがあるのでしょうか。

賀川氏 30年前のGISは、地図上にある“動かないもの”、つまり建物や電線・ガス管などの設備を管理することがおもな役割でした。

 しかし今では、スマホやIoTデバイスなどの“動くもの”が位置情報をリアルタイムに発信していますし、スマホやIoTデバイスに搭載されたセンサーからは位置情報以外のデータも取得できます。

 その結果、空間情報で取り扱う対象が“動かない設備”から“動く人・もの”にも広がり、位置以外の情報も空間の属性として扱えるようになってきました。

桔梗原 富夫
日経BP 総合研究所
フェロー
桔梗原 富夫

——そういった新しい空間情報を使うと、どのようなことが可能になるのですか。

賀川氏 例えば、小売店の出店場所を決めるために昔からよく使われている商圏分析は、より細かな情報に基づいてリサーチが行えるようになります。

 以前は市区町村レベルの人口や年収が判断の基準でしたが、現在では人の動きを加味できるようになりました。出店候補地の周りの人通りを曜日ごとに調べたり、競合店への人の流れを分析したりといったことができるのです。

空間情報のビッグデータ解析では
プライバシーへの配慮が必要

——空間情報のデータ活用を高度化するうえで、そのほかのさまざまな最新テクノロジーも役に立ちそうです。例えば、空間情報をAIで分析するというのはどうでしょうか。

賀川氏 空間情報のAI分析については、当社も研究を進めています。位置情報になんらかの属性を付加して分析にかける必要があるということが分かり、商品化に向けて、実証実験を加速しているところです。

——スマホやIoTデバイスによって大量のデータを収集できるようになった今、それをビッグデータとして解析する使い方も注目されています。

賀川氏 スマホなどから収集した位置情報をビッグデータとして扱う際は、個人のプライバシーに十分に配慮する必要があります。

 経済産業省が提唱している「Society 5.0」でも、人とモノの位置情報を活用することが想定されていますが、位置情報を集めて、勝手に使ってよいのかということについては議論の余地があるでしょう。

 もちろん、技術的には、高速なサーバーがあれば情報を匿名化することは十分に可能だと思います。

——GISとの関係が深い通信環境については、5Gにも期待が持てます。

賀川氏 空間情報のソリューションではスマホで撮影した動画をクラウドに送って処理させることがしばしばあります。

 現在は4G回線で送っているのですが、5G回線が使えれば転送時間を大幅に短縮できるものと見込んでいます。

今もっとも力を入れているのは
建設・土木向けのソリューション

——テクノロジーの進歩や社会情勢の変化につれて、空間情報ソリューションのトレンドも変わってくるのではないかと思われます。日立ソリューションズが今注目されているのは、どのような空間情報ソリューションですか。

賀川氏 今われわれが力を入れているのは、建設や土木などのインフラ系に向けた空間情報ソリューションです。

 2016年から国土交通省が進めている「i-Construction」(アイ・コンストラクション)では、ICTを活用することによって、建設業の生産性を2025年までに20%高めようとしています。

 この領域に、約30年にわたって空間情報に取り組んできた、当社ならではの経験と知見が貢献できると考えています。

——最近のソリューションでは、どのようなものがありますか。

賀川氏 「GeoMation スマートフォン活用3D計測ソリューション」を今年度から提供しています。これは、今まで土工事の現場では専用の測量器で計測していた盛土の体積をスマートフォンで動画を撮ることで3次元モデルを生成し、スマートフォン上で体積計測が可能となるソリューションです。また、これは土工事への利用だけでなく、土砂災害への活用も可能です。 2018年7月の豪雨の際は、東広島市で起きた大規模土砂崩れの土砂量の計測作業に試用されました。 このソリューションを使うと、ポールを立てて測量する従来のやり方に比べて作業量は1/8で済んだという効果が確認されました。

——建設・土木以外の分野ではどうですか。

賀川氏 電力・通信の点検業務を効率化していただくためのソリューションとして、「GeoMation 点検業務支援システム」を開発しました。

 自動車の屋根にMMS(移動式高精度3D計測システム)という装置を載せて、対象地域を走行させると、電柱の位置、電線の高さ、変圧器の場所などを自動的に計測できるという仕組みです。

3D空間情報によって開かれる未来
PoCにも十分な投資が求められる

——デジタル地図を扱うGISから始まった空間情報という考え方は、社会インフラのデジタル化や効率化にも大きな役割を果たすようになりました。賀川さんは、空間情報の今後をどのように展望されていますか。

賀川氏 当社が力を入れている建設・土木系や社会インフラの領域で、3Dの空間情報を取り扱うことがますます増えることでしょう。

 2Dの地図では正確な位置管理ができませんが、MMSやLiDAR(レーザー測距計)を使えば、現実世界の正確な位置情報をリアルタイムに取得できます。

 その結果、さまざまなアプリケーションで、2Dの空間情報ではできなかったことが可能になることでしょう。要素技術についても、ここ何年かで大きな転換があるのではないかと予測しています。

 日本は労働力不足という大きな課題を抱えています。当社は、ITでその課題解決に貢献できると確信しています。

——そうした半歩先の未来に向けて、企業はどのような準備をすればよいのでしょうか。

賀川氏 ぜひ、PoC(概念実証)には十分な投資をしていただきたいと思います。

 中途半端なPoCでは、中途半端な結果しか得られません。当社はお客様との協創を大事にしています。私たちもこれまでの経験、ノウハウを駆使し、全力で取り組んでいきますので、お互いチャレンジャーとして一緒に新たな価値を創っていきたいと思います。

——賀川さんとの対話を通じて、空間情報がさまざまな領域の多様な用途に適用できるようになっているということを、あらためて認識しました。

 今、多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んでいますが、そういった取り組みにおいて、空間情報はあまり意識されていないのではないでしょうか。

 デジタルの力で新しいサービスを生み出そうというときに、空間情報という要素を加味すると、アイデアに広がりが生まれるはず。そういった挑戦によって、非常に面白いことが始まるのではないかという予感がします。

 日立ソリューションズは、日本市場でGISが立ち上がり始めたときから空間情報に取り組んでおられる先達です。これからも、空間情報のリーディング企業として、市場を引っ張っていかれることを期待しております。

空間情報の活用についてより詳しい情報はこちらから

日立ソリューションズ

https://www.hitachi-solutions.co.jp/
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