日経クロステック Special

ANA・KDDI・オラクルの若きリーダーたちの挑戦 社会課題解決のカギを握るDX・イノベーション推進

DXやイノベーション推進のためには何が必要なのか? ANA、KDDI、日本オラクルの各社で、自社の新規事業開発や顧客のDX推進の支援活動に取り組む3人の若きリーダーたちに、日本オラクル デジタル・トランスフォーメーション推進室(以下、DX推進室)でオープンイノベーションの“橋渡し役”として活躍する鬼澤美穂ブランドマネージャーが聞いた。

サブスクリプション型航空券などで
「関係人口」の増加に貢献する

鬼澤 私は日本オラクルのDX推進室で、様々な課題を抱える企業や民間団体と、課題解決のためのアイデアやテクノロジーを持つ企業とをマッチングさせる役割を担っています。その活動を通じて、「DXやイノベーションを推進するためには何が必要なのか?」を常に問い続けていますが、東京大学の森川博之教授が提唱する「事業領域の再定義」は、その一つの答えではないかと思います。

 最初にANAホールディングスのデジタル・デザイン・ラボという部署で新規事業開発に取り組んでおられる野島祐樹さんにお話を伺いますが、野島さんが今挑戦していることも、まさに「事業領域の再定義」ですね。

野島 氏
ANAホールディングス株式会社
デジタル・デザイン・ラボ
次世代ツーリズム推進ディレクター
野島祐樹

野島 はい。デジタル・デザイン・ラボでは、宇宙開発やドローンなど、従来の航空事業の枠を超えた新規事業を開発しています。私が取り組んでいるのは「関係人口の創出」と「次世代ツーリズムの創造」です。

鬼澤 「関係人口」とは、どのような概念でしょうか。

野島 その土地に根付く「定住人口」でも、観光で訪れる「交流人口」でもなく、往来を重ねながら、地域やそこに住む人々と多様に関わる人々のことです。具体的には、新型コロナウイルス感染症の拡大後に増えた多拠点生活者や、ワーケーションを実践する人々、都会に住みながら地域支援活動を実践する人々などを想定しています。

 なぜ、「関係人口」に着目したのかと言えば、地域における人口の減少と高齢化、東京への一極集中によって、航空事業の支えとなる人口流動が減少しているからです。利用客が減れば、エアラインの本業としては、減便・小型化せざるを得なくなるので、ますます人の移動が減るという悪循環が生まれます。つまり、私たち航空会社自身も悪循環を促してしまう可能性があるわけです。

鬼澤 氏
日本オラクル株式会社
テクノロジー事業戦略統括
戦略ビジネス本部
デジタル・トランスフォーメーション推進室
ブランドマネージャー
鬼澤美穂

 そこで、「関係人口」の増加を促すため、宿泊施設とセットにしたサブスクリプション型(月額制)航空券サービスの提供、シェアリングエコノミーとの協業による移動・滞在コストの低減、社会問題の解決を通じて自身の成長や人とのつながりが体験できる新しい団体旅行の企画など、様々な実証実験を行っています。

鬼澤 「関係人口」の拡大は、地方が抱える社会課題の解決を促すという点でも、大変意義のあるものですね。

 同じように、既存の事業の枠を超えて社会課題解決に取り組んでいる企業は数多くあります。次にKDDIの事例について聞いてみましょう。

関係人口創出にコミットするANAの新規事業モデル(イメージ)

関係人口創出にコミットするANAの新規事業モデル
野島氏は、「関係人口の創出にコミットする」というANAの新規事業モデルを発案。シェアリングエコノミーとの協業、新たな旅の企画などの実証実験を行っている