日経クロステック Special

危機はイノベーションの母。今こそ取り組むべきことは何か。 IT部門が旗振り役として進めるデジタル起点の企業変革

「顧客と直接対面しないコミュニケーション」がニューノーマルとなる中、多くの企業はCX(Customer Experience:顧客体験)を高めるための新たなアプローチを模索している。大切なのは、CXだけではなく、サービスを支えるEX(Employee Experience:従業員体験)も同時に高めることだが、その取り組みはさほど難しくはない。既に“必要な道具”はそろっているからだ。

従業員体験が足りないと
顧客体験は高まらない

 CX(顧客体験)とEX(従業員体験)は、密接にかかわり合っている――。現場感覚の鋭い経営者であればあるほど、この事実を痛いほど感じていることだろう。

 従業員が非効率で無駄の多い作業に手を取られれば、その分、顧客に提供するサービスの質は下がり、満足度が低下する。業務効率化は、単にコストを下げるだけでなく、より良質なサービスを提供して、顧客をつなぎ止めるために欠かせない取り組みだと言える。

 ところが、新型コロナウイルスの感染拡大によって「顧客と直接対面しないコミュニケーション」がニューノーマルとなった結果、多くの企業は、これまでいかにEXの向上を後回しにしてきたのか、ということを実感せざるを得なくなったようだ。

原 氏
ServiceNow Japan合同会社
執行役員
ソリューションコンサルティング事業
統括本部長
原 智宏
1997年慶應義塾大学商学部卒。日本ヒューレット・パッカード(現Hewlett Packard Enterprise)入社。2010年日本オラクル入社。エンタープライズ・アーキテクトとしてお客様のデジタル変革を支援。同社執行役員を経て20年3月 ServiceNow Japan入社。

 「例えば小売においては、ステイホームの定着とともに、対面販売からオンライン販売へと販売チャネルのシフトが進んでいます」

 そう語るのは、エンタープライズをはじめとする企業向けにクラウド型のデジタルプラットフォームやSaaSなどを提供するServiceNow Japanの原智宏執行役員である。

 「顧客とのコミュニケーションの“入り口”が変わっても、受けた注文に合わせて在庫状況を調べ、納期を確認し、配送を手配するといったプロセスが『手作業』のままであれば、注文の増加によって従業員に大きな負荷がかかってしまいます。場合によっては、顧客が商品を手にするまでにかなりの時間を要することもあるようです。結果的に従業員と顧客、それぞれの満足が下がってしまう状況に陥ってしまうのです」

 また、緊急事態宣言の発令によって、従業員が在宅勤務を余儀なくされた今年4月から5月にかけて、コンタクトセンターやカスタマーサービスのスタッフが大幅に減り、顧客からの問い合わせに対応し切れなくなる企業が続出したことは記憶に新しい。

 「今後、事態が収束しても従業員の安全を最優先し、『感染リスクを抑える』ことが従業員体験向上の要件の一つであり続けることは間違いないでしょう。例え出社しなくても、顧客からの問い合わせには、迅速かつ適切に対応できる体制を整える必要があります」と原氏は語る。

 この点においてもCXとEXは表裏一体であり、同時に変革を進めていかなければならないものだということが分かる。言い換えれば、CXとEXの変革を同時に推し進める取り組みこそが、企業の競争力を格段に高めるのである。

 では、CXとEXの同時変革を成功に導くためには、どのような点に留意すればいいのだろうか。次ページから最新のデジタルテクノロジーによって顧客と従業員のエクスペリエンス(体験)を同時に高める方法を具体的に紹介していこう。