車載向けパワーマネージメント・ソリューションで多くの実績を持つアナログ・デバイセズは、最大100Wの電力供給が可能なUSB PDに対応した昇降圧DC/DCコンバータ「LT8253/LT8253A」を開発した。高い電力変換効率や優れたEMC性能などが特長だ。USB PDと、USB PDに対応したUSB Type-Cコネクタの応用拡大に向けて、一部のサプライヤーで先行評価が始まっている。 (本文中の内容、肩書は2021年8月時点のものです)

アナログ・デバイセズ株式会社
オートモーティブ ソリューション アンド テクノロジー
シニアフィールドアプリケーション エンジニア
齋藤 一敬氏
パソコンやスマートフォンで採用が広がるUSB Type-Cコネクタを、クルマのインパネやセンター・コンソールに装備しようという動きが始まっている。
USB 3.xを介した音楽の再生やスマートフォン・アプリとの連携といった目的に加え、搭乗者が持つスマートフォン、タブレット、ノートパソコンなどのデジタル機器に、「USB PD(Power Delivery)」規格に則って、最大100Wの給電を行うのが狙いだ。
「USB Type-Cコネクタを使った車載向けUSB PDの検討がサプライヤーのお客様を中心に始まっている状況です。2023年には市販車に搭載されるのではないかと見ています」とアナログ・デバイセズの齋藤一敬氏は説明する。
USB PDは、スマートフォンやタブレットなどのデジタル機器の充電時間を短縮する目的で策定された。5Vで給電する従来のUSBでは電力が限られていたが、USB PDでは電圧を最高20Vにまで高めて最大100W(20V/5A)もの供給を実現している。
USB PDに対応した給電デバイスと受電デバイスを接続すると、給電側のパワールール(供給できる電力)と受電側のパワールール(必要とする電力)に従ってネゴシエーションが行われ、供給電圧と供給電力が決定される。
USB PDを構成するには、ネゴシエーションなどを行うPDコントローラと、PDコントローラの指示に従って電圧を設定し電力を供給するDC/DCコンバータが必要になる。

図1 約80mm四方にLT8253とPDコントローラを2セット搭載した60W出力のデュアルUSB PD評価ボード。