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IT環境の変化に挑むIBMのビジネス変革

IBMがパートナー戦略を大きく転換しようとしている。キーワードは「パートナー・ファースト」だ。「テクノロジー」と「ビジネス変革」という2つの軸を中心に顧客に価値を提供するにあたり、IBMが要素技術に近いハードウェアとソフトウェアを提供し、パートナーがそれぞれの強みを生かしてエンドユーザーに向き合うというビジネスモデルも拡大していく。2021年12月2日にオンラインで開催された「IBMビジネスパートナー・エグゼクティブ フォーラム2021」には、競合関係にあったCTCやNEC、NTTデータも協業パートナーとして登壇するなど、これまでとの違いが打ち出された。

山積する課題を解決するハイブリッドクラウド

 2021年12月2日にオンライン開催された「IBMビジネスパートナー・エグゼクティブ フォーラム2021」で注目されたのは、IBMのパートナー戦略の大きな転換だ。「パートナー・ファースト」をキーワードとしたビジネスモデルを打ち出した。

 その背景にあるのは、急激な市場の変化とデジタル・トランスフォーメーション(DX)の加速だ。企業を取り巻く環境が大きく変化する中で、「DXの加速」「最適な技術の採用」「スピーディーかつフレキシブルな対応」へのニーズが高まる一方で、企業は多くの課題に直面している。

 同フォーラムの冒頭でスピーチした日本IBM 常務執行役員の朝海孝氏は「システムがサイロ化している一方で、インフラが多様化し複雑化しています。データは散在し、AI(人工知能)もまだ部分的に利用されているだけです。サイバー攻撃は、本来は利益を生み出すデータをネガティブなものにしています。これらの課題をすべて同時に解決するデジタル変革が求められているのです」と語る。

日本アイ・ビーエム株式会社<br>テクノロジー事業本部 副本部長兼<br>パートナー・アライアンス事業本部長<br>常務執行役員<br><span class="name">朝海孝氏</span>
日本アイ・ビーエム株式会社
テクノロジー事業本部 副本部長兼
パートナー・アライアンス事業本部長
常務執行役員
朝海孝氏

 このデジタル変革に向けたIBMの対応として大きく4つのことが挙げられた。マルチプラットフォームのシステムをAIで運用すること、データをあたかも1カ所で管理しているように見せること、AIをビジネスプロセス全体に適用すること、そしてIT環境全体を内外の脅威から守る万全なセキュリティーを確立することだ。

 それを実現するためにIBMが提唱しているのが「ハイブリッドクラウド」だ。Red HatのOpenShiftを共通のプラットフォームとしてオープン化を推進し、インフラ非依存の「Write once, run anywhere(一度プログラムを書けば、どこでも実行できる)」を実現する。「そのためにIBM Cloudだけでなく、他社のクラウドとの連携も強化していきます」と朝海氏は語る。

社外のソリューションに“秘伝のタレ”を提供

 社会全体のデジタル変革を支援するためにIBM自身の変革も進められてきた。グローバル・テクノロジー・サービス(GTS)のうち、マネージド・インフラストラクチャー・サービス部門を分社化して「Kyndryl(キンドリル)」を設立。同社は最大のビジネスパートナーとして位置付けられる。グローバル・ビジネス・サービス(GBS)は「IBMコンサルティング」と改名し、パートナーとの協業で企業のビジネス変革に注力する。

 また、ソフトウェア部門は「IBMソフトウェア」となり、RedHatのハイブリッドクラウド・プラットフォーム上で、オープンでハイブリッドなマルチクラウドの自動化、最適化を強化する。そしてハードウェア製品とクラウド製品、およびそれらのサポートサービスを「IBMインフラストラクチャー」として統合し、多様なワークロードへの最適化に対応する。

 こうした変革のすべてがパートナーとの協業のための次の一手として位置付けられる。朝海氏は「パートナーとの協業をこれまでにないレベルで推進していく」と決意を語る。IBMは“秘伝のタレ”として、要素技術に近いハードウェア、ソフトウェア、サービスを提供し、パートナーが自社のソリューションの中に取り入れてユーザーに提供していく形をとる。

 今後は「パートナー・ファーストによるビジネス推進型」へと変わっていくために強化されるのが、パートナーに対する支援体制だ。市場進出を支援するマーケティング・プログラムや共創の場が提供され、協業を加速するための相互出向プログラムや技術支援の強化が行われる。今回のフォーラムでは「社会のためにパートナー様とともに」というメッセージのもとで変革が確実に進んでいることを示す4つのパートナー事例が発表された。

お互いの強みを生かしてユーザーの利用価値向上を

 最初に登壇したのは、2021年11月に日本IBMとのクラウド分野における戦略的なパートナーシップの拡大を発表した伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)のITサービス事業グループ常務執行役員の原口栄治氏だ。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社<br>常務執行役員<br>ITサービス事業グループ<br><span class="name">原口栄治氏</span>
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
常務執行役員
ITサービス事業グループ
原口栄治氏

 「DX、Cloud、5Gの頭文字をとったDC5の1つであるクラウドの領域では、ハイブリッドクラウドの高度化に必要な4つのレイヤーに応じたサービスを用意し、全体をオープンハイブリッドクラウドを実現するサービスであるOneCUVICとして提供しています」(原口氏)。

 さらに原口氏は、OneCUVICとIBMのサービスやソフトウェアを組み合わせて提供することを、料理とワインを組み合わせる“マリアージュ”にたとえ、「両者が補完し合うことでより一層の価値を生み出せます」と話し、インフラ、コンテナプラットフォーム、インテグレーション&マネージドにおけるマリアージュ例を紹介した。

 続いてIBM Powerを核とした事業を展開するイグアスのソリューション事業部事業部長 上級執行役員の伊藤瑞穂氏が登壇。「IBM Powerのアプリケーション領域は広がり、IBM Power Systems Virtual Serverの登場でクラウド化ができるようになり、既存のアプリケーションのモダナイゼーションへの関心が高まっています」と語る。

株式会社イグアス<br>ソリューション事業部 事業部長<br>上級執行役員<br><span class="name">伊藤瑞穂氏</span>
株式会社イグアス
ソリューション事業部 事業部長
上級執行役員
伊藤瑞穂氏

 この流れを受けて同社が開始したのが「イグアス総合クラウドサービス」である。「クラウド化をすべて任せたい」というユーザーの声に対応し、クラウド構築支援からアプリケーション提供、運用・保守サービスまでIBM Power Systems Virtual Serverのすべてをサポートするものだ。「日本語対応で月額課金ができ、開発用、災害対策用での利用が増えています。また マルチクラウド環境でのインフラ運用・監視の要望も増えており、仮想テープやAIOpsソリューション群もサービスメニューに追加しています」と伊藤氏。今後は基幹アプリケーションでもクラウド化が加速するという。

共同検証の成果から新たなサービスを創出

 3番目に登壇したのは、AI製品事業で日本IBM OpenScaleを活用したAIの公平性品質の検証を紹介したNTTデータの技術開発本部 主任の市原大暉氏だ。AIの活用領域の広がりとともに、AI固有の課題も指摘される。それを解消するためには、信頼できるAIのための品質管理が必要になる。

株式会社エヌ・ティ・ティ・データ<br>技術開発本部 主任<br><span class="name">市原大暉氏</span>
株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
技術開発本部 主任
市原大暉氏

 「特に難しいのは公平性の品質です。倫理的観点を含むために定量化が難しく実用には課題が残ります」と市原氏。そこで融資審査を想定した仮想システムをIBMクラウド上に構築し、性別や年齢などによって融資金額に差が生じていないかを検証した。

 市原氏は「IBMの技術支援を受けて検証した結果、公平性品質の定量化と継続的な監視を少ない手間で実現できることがわかりました」と話す。今後はプロジェクト特性に応じた公平性品質の目標の設定、お客様との合意プロセスの整備などを進め、より安心して利用できるAIの実現を目指すという。

 最後にNEC(日本電気)のネットワークサポートサービス本部 シニアマネージャの宇佐美健司氏が登壇。ナレッジの活用による運用高度化事例、さらに障害予兆でのIBM Cloud Pak for Watson AIOpsの今後の活用について紹介した。

日本電気株式会社<br>ネットワークサポートサービス本部<br>シニアマネージャ<br><span class="name">宇佐美健司氏</span>
日本電気株式会社
ネットワークサポートサービス本部
シニアマネージャ
宇佐美健司氏

 宇佐美氏は「インフラの運用の中でも固定コストが発生しやすい監視運用と障害復旧にフォーカスした課題解決に取り組みました」と話す。具体的には、障害監視に障害予兆の可視化も組み込み、障害対応では高度ナレッジを活用したフロント完結を目指した。

 その結果、障害予兆については障害種別を絞ることで事前検知率を6割以上に高めることが可能で、高度ナレッジの活用では蓄積してきたデータを機械学習でラベル付けすることで復旧手順を表示する時間を大幅に短縮できた。

 「高度ナレッジを活用した復旧手順の検索は、IBM Japan Excellence Award 2019をいただきました。今後も共同検証を続けていきます」と宇佐美氏は語った。

 パートナー4社による講演後に再登壇した日本IBMの朝海氏は、「IBMはパートナー・ファーストを旗印にパートナーの皆さまと社会に貢献していきます。新しいIBMをよろしくお願い申し上げます」と話し、IBMビジネスパートナー・エグゼクティブ フォーラム2021は閉会した。

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