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CTCと日本IBM、パートナーシップ拡大

2021年11月、伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)と日本IBMがクラウドサービスの領域で戦略的なパートナーシップを拡大すると発表した。パブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせて運用するハイブリッドクラウドサービスにおけるサービスラインアップの拡充や事業拡大を目的とするものだ。両社の戦略と今後展開されるサービスについて解説しよう。

CTC「OneCUVIC」として
ソリューションを統合

 今回の戦略的パートナーシップ拡大の背景には、両社のクラウド分野の新たな戦略が策定され、その戦略と双方の思惑が合致して明確なWin-Winの構図が描けるようになったことが挙げられる。これにより、より強固なパートナーシップに基づいた新たな価値の提供が期待される。

 日本を代表するシステムインテグレーターであるCTCは、これまでもオープンなハイブリッドクラウドサービスを提供してきたが、2021年春からは様々なレイヤーのクラウドサービスを統合し、「OneCUVIC(ワン・キュービック)」というブランド名称で展開している。

 OneCUVICは4つのレイヤーで構成される。拡張性を持った柔軟な基盤サービスでクラウドネイティブなアプリケーションを支える「インフラ」、オープンなKubernetesをベースとした「アプリケーション開発・実行基盤」、AI(人工知能)を活用してIT基盤全体を最適化し一貫性のある運用管理を実現する「統合マネージドサービス」、そして企業の業務プロセスから生まれたログを収集・分析して価値創造につなげる「DX・ビジネス変革」である。

 具体的なソリューションとしては、インフラ層では複数のパブリッククラウドサービスを提供するとともに、自社のデータセンターを活用してITインフラをクラウドで提供するホステッド・プライベートクラウド・サービス「CUVICシリーズ」を提供している。

 さらにその上のアプリケーション開発・実行基盤のレイヤーではOpenShift活用支援サービス「C-Native」を提供し、統合マネージドサービスのレイヤーではCTCのセキュリティオペレーションセンター(CTC-SOC)から提供するマネージドセキュリティサービス(CTC-MSS)やインシデントハンドリングサービスなどのセキュリティサービスと、マルチクラウドのシステム運用であるマルチクラウドマネージドサービスを組み合わせて提供。上流のDX・ビジネス変革のレイヤーでは、企業内の業務プロセスを可視化し改善できるプロセスマイニングのクラウドサービスである「Celonis」を提供している。

 これらのソリューションがOneCUVICの名称のもとで統合され、高度なオープン・ハイブリッドクラウド環境が実現されることになる。先行きの見えない変化の速いビジネス環境で顧客企業の変革を支えるものとして期待されている。

パートナー・ファーストへ
かじを切った日本IBM

 一方の日本IBMでも大きな方針変更が行われた。IBMのソリューションですべてをカバーする「IBM営業一括総合窓口型」からパートナーの製品・サービスとともにIBMのテクノロジーを提供していく「パートナー・ファースト・モデル」へというビジネスモデルの大きな転換である。

 その背景にあるのは、顧客企業のIT環境の複雑さとデジタル・トランスフォーメーション(DX)への要求の高まりだ。オンプレミスにクラウドが加わることでITインフラは多様化し、その上でシステムはサイロ化され、IT環境はますます複雑になっている。しかし、AIの活用やあらゆるものがネットにつながるIoTの導入、業務プロセスの自動化、セキュリティー対策など待ったなしの課題が山積している。

 こうした幅広いニーズを1社でカバーするのは難しい。IBMのソリューションだけではなく、パートナーとの共創による課題解決が求められる。日本IBMが「パートナー・ファースト・モデル」へとかじを切ることになった背景にはそうした理由がある。

 それに向けてIBM自身の変革も進められてきた。最も大きな変革は売り上げ約2兆円のマネージド・インフラストラクチャー・サービス部門の分社化だ。新会社「Kyndryl(キンドリル)」はIBMの連結対象から外れ、中立的な立場からオンプレミスやデータセンターなどインフラの運用サービスに特化する。

 IBMはイノベーションへの投資に注力し、より広くコンサルティングやテクノロジーを提供する形へとシフトする。グローバル・ビジネス・サービス(GBS)は「IBMコンサルティング」と改名し、パートナーとの協業で企業のビジネス変革の支援に注力する。また、ソフトウェア部門は「IBMソフトウェア」となり、Red Hatを活用したハイブリッドクラウド・プラットフォーム上で、オープンでハイブリッドなマルチクラウドの自動化、最適化を強化していく。

 このIBMの事業全体は大きく4つのレイヤーに分けてとらえることができる。多様なワークロードへの最適化に対応する「インフラ」、インフラに依存しないオープンでハイブリッドな環境を実現する「オープンプラットフォーム」、あらゆる環境での自動化と最適化を可能にする「ソフトウェア」、DXへの取り組みを支援する「コンサルティング」である。

 IBMとしてはこの4つのレイヤーを明確にすることで、パートナー企業との協業を進めやすくなる。それぞれのレイヤーでパートナーシップを進めることにより、パートナーの製品やサービスを通してIBMのコンサルティングやテクノロジーを提供できることになるからだ。

4つの分野に注力し、
相互補完関係を強化

 IBMが打ち出した4つのレイヤーは、CTCのOneCUVICの4つのレイヤーに対応している。インフラのレイヤーは当然だが、その上のハイブリッドクラウド・プラットフォーム、ハイブリッドクラウド・ソフトウェア、さらにはDXとビジネス変革のレイヤーも1対1で対応している。

 レイヤーが明確になったことで相互補完関係もわかりやすくなり、より協業が進めやすくなる。例えば、鍵となるハイブリッドクラウド・プラットフォームのレイヤーでは、IBMがKubernetes基盤をベースとしたRed Hat OpenShiftを提供し、CTCのOpenShift活用支援サービス「C-Native」とともにユーザー企業に提供されるようになる。

 今後はこうした協業の取り組みが4つの分野で展開されるという。基盤としての多様性、柔軟性を向上させ、ハードウェアの性能要件を高めていく「ITインフラ利用型サービス」、アプリケーションのコンテナ化を進め、実行基盤を実装する「アプリケーションのモダナイズ化を支える基盤サービス」、各種パブリッククラウドを提供し、ワンストップでの運用を拡充する「マルチクラウド・インテグレーションおよびマネージドサービス」、そしてセキュリティーなどサービスへの脅威を防ぐ「マルチクラウド環境におけるマネージド・セキュリティサービス」の4分野である。

 これらの4分野の協業により、日本企業の情報システム部門に適したホステッド・プライベート・クラウドを提供し、パブリッククラウドのインテグレーションやマネージドサービスに強みを持つCTCのソリューションを通してIBMの先進のテクノロジーが活用しやすくなる。

 同時に、IBMのテクノロジーを取り込むことでCTCのソリューションもより高度化され、強化されていく。複雑化しているIT環境、そしてDXによるビジネス変革を迫られる日本企業にとって、この両社の戦略的パートナーシップの拡大は心強いニュースだろう。今後どのような取り組みが展開されるのかが楽しみである。

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