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マイクロソフトとIBMが協業を強化

新しい働き方の広がりを追い風に、日本企業のクラウドシフトが急速に進んでいる。その中で注目されているのが、マイクロソフトとIBMの協業強化だ。基幹系システムやIoTシステムのプラットフォームとしてMicrosoft Azureを推進するマイクロソフトと、マルチクラウドやエコシステムを推進するIBMとの間でWin-Winの関係が構築されている。両社のキーパーソンに現状と今後の展開について話を聞いた。

急速に進展しつつあるクラウド領域での協業

――パートナーとしてお互いにどのような関係にあるのでしょうか。最近のトピックスも含めて教えてください。

寺澤 真紀 氏
日本アイ・ビー・エム株式会社
グローバル・ビジネス・サービス事業本部
ハイブリッド・クラウド・サービス事業
パートナー
寺澤 真紀 氏

寺澤ハイブリッドクラウド戦略と併せてパートナーとエコシステムをつくろうという取り組みの中で非常に注力しているのがマイクロソフトとの協業です。マイクロソフトとは30年以上にわたるパートナーですが、今年になって協業のスピードが加速し、マイクロソフトと一緒にビジネスを推進するという文化が急速に広がっています。

 CEO同士のミーティングが定期的に行われており、業種ごとの知見を持ったメンバーによる戦略的なアライアンスチームが誕生。Microsoft Azureの高度な知見を蓄積するCoE(Center of Excellence)チームやデリバリーチームも拡大しています。人材育成にも注力しており、Microsoft Azureの資格取得は増える一方です。

佐藤 久 氏
日本マイクロソフト株式会社
パートナー事業本部
パートナー技術統括本部
業務執行役員
佐藤 久 氏

佐藤いつでもどこでもコンピューターが利用できる環境が求められる中で、当社が目指しているのは世界で最もオープンなパブリッククラウドベンダーになることです。

 今のMicrosoft Azureは単なるパブリッククラウドではありません。いつでもどこでも場所もデバイスも選ばずに使える、クラウドとIoTにつながるエッジコンピューティング環境を提供しています。そのMicrosoft Azureの上に開発レイヤーがあり、Microsoft 365のようなSaaSレイヤーがあり、さらにインダストリーレイヤーを想定しています。

 この場所を選ばないコンピューティング環境にはオンプレミスも含まれます。オンプレミスのシステムを手がけ、クラウドも一緒にできて、インダストリーのシナリオも豊富に持っているIBMは当社にとって良きパートナーです。

――具体的にどのような形で協業しているのでしょうか。

佐藤今、当社が求めているパートナーとの関係は「Resale(再販売)」ではなく、「Co-Sell(共同販売)」です。当社のテクノロジーは部品であり、パートナーの商材と一緒にお客様に提供していきます。

 当社がIBMに製品やサービスといったコンポーネントを提供し、IBMはそれを活用してお客様ごとのインダストリーソリューションを提供してお客様のDX(デジタル変革)を支援します。IBMはこのようなCo-Sellができるパートナーです。

寺澤進化のスピードが速く、使い勝手がいいMicrosoft Azureそのものも素晴らしいですが、当社にとって大きな魅力はマイクロソフトが世界最大のエコシステムを持っていることです。Microsoft Azureを通して世界のパートナーとつながることにより、様々な展開が考えられます。

グローバル事例をはじめ、幅広い分野で協業実績が増加

――これまでにどのような協業の実績があるのでしょうか。

寺澤たくさんの協業事例があります。Windows ServerのMicrosoft Azureへの大規模移行(Lift)、移行したサーバー上で稼働するアプリケーションのモダナイゼーション(Shift)、Red Hat OpenShiftやKubernetesを活用したクラウドネイティブなアプリケーションの構築、単なる移行ではなく業務改革を伴うSAP on Azureなどがホットな領域です。

 そのほかにもDynamics 365による業務効率化やAI(人工知能)を活用したデータ分析、IoTによるスマートファクトリー、セキュリティー・コンプライアンスへの対応など様々な領域で協業に取り組んでいます。

佐藤お互いがグローバル企業ということもあり、世界規模で一緒に取り組んでいるプロジェクトが多いのも特徴的です。複数年に及ぶマルチカントリーのプロジェクトが増えています。クラウドへのシフトが進むほどグローバル対応というケースが多くなっています。グローバルを一つのアーキテクチャーで見ることができるのが魅力ではないでしょうか。

――日本企業の課題はどんなところにあると思いますか。

佐藤クラウドの活用は一般的になってきましたが、活用の成熟度は明確に三極化しています。第一のグループはクラウドのメリットを理解してクラウドネイティブで経営のスピードアップを図っています。

 第二のグループは、クラウド移行だけ終わっていて、モダナイゼーションができていない企業です。Liftで終わっていて、Shiftはまだという状況ですね。そして第三のグループがクラウドを活用できていないオンプレミスのユーザーです。

 第二のグループは、クラウド活用が目的になっていて場所の議論で終わっていることが大きな問題です。場所ではなく、クラウドを活用して本来成し遂げるべきことを明確にしないと大きなメリットは得られません。この状況を打破するためにもIBMと一緒にクラウドビジョン実現のための方法論をお客様に届けていきたいですね。

寺澤お客様はクラウドを使うと決めても、特定のクラウドに1本化することに迷うケースもあります。Red Hat OpenShiftであれば、オンプレミスでもマルチクラウドでもポータビリティーは確保されます。そういうところをもっと伝えていくべきですね。

2社のタッグならではのベストプラクティスを届けたい

――今後はどのような方向性で協業を強化していくのでしょうか。

佐藤IBMと一緒にエンドユーザーにいろいろな施策を提供していきたいですね。現在、当社ではクラウド活用の成熟度に応じた3つのグループごとにディスカウントやファンド、教育プログラムなどの支援策を用意しています。ユーザー自身がカテゴリーで選ぶことができます。

「IBMと一緒にクラウドビジョン実現のための方法論をお客様に届けていきたいですね」
「IBMと一緒にクラウドビジョン実現のための方法論をお客様に届けていきたいですね」

寺澤特にクラウドネイティブ領域に注力し、お客様に提案していきたいですね。マイクロソフトもIBMもクラウドベンダーですが、同時に、両社とも自社クラウドだけにこだわらないハイブリッド・マルチクラウド戦略を打ち出しており、様々なオファリングを準備しています。マイクロソフトの支援施策やリファレンスアーキテクチャーも活用しながら、ダイナミックな展開をしていきます。

佐藤IBMにはグローバルデリバリーセンターがあり、人材を効果的に活用できるのが強みです。それがグローバルパートナーの特徴でもあります。リソースのニーズの波を平準化して、常にお客様にベストプラクティスを提供できます。

 クラウドプロジェクトは一品一様のソリューションでは間に合わないケースが多いので、テンプレート化してスピーディーに展開していくことが求められます。それがクラウドビジネスの面白さでもあります。そのあたりをIBMと一緒にドライブをかけていきたいですね。

「両社のタッグでしか実現できない価値を提供し、お客様を支援します」
「両社のタッグでしか実現できない価値を提供し、お客様を支援します」

――日本のユーザーにメッセージをお願いします。

寺澤皆さんが思っている以上にマイクロソフトとの協業は強化されています。現在、IBMには3万人以上のマイクロソフト認定技術者がいますが、そういったグローバルな人的リソースを活用しながら日本IBMのアーキテクトがお客様を支援します。今後、両社のタッグでしか実現できない価値を提供していきますので楽しみにしていてください。

佐藤戦略的な合意が成立し、IBMとの協業レベルは一段上がりました。私たちも動きやすくなりましたし、IBM内のマイクロソフト人材も増えています。次のステップはターゲットとなるお客様に向けたCo-Sellの強化です。お互いに動き出したら速いですから、これからの展開にご期待ください。

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