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コロナ禍の電力問題を解決するDCの方向性

Covid-19(コロナ禍)によるニューノーマル(新常態)へのシフトは、データセンター(DC)の需要増加をもたらした。一方で、需要の高まりはDCの効率化や電力消費量削減を求める。さらに末端(エッジ)近くに配置するエッジDCの重要性も高まっている。日本データセンター協会(JDCC)では、xTECH EXPO 2021で Live配信されたセッションで、DC事業者の目指すべき方向性を解説した。

ニューノーマル時代のDCビジネス

 ニューノーマル時代を迎え、データセンター(DC)はどのようなビジネスの方向性があるのか。セッションのオープニングトークに登場したJDCC 副理事長兼運営委員長の江崎 浩氏は、「ニューノーマル時代のグローバルDCは、脱炭素、価値創造の側面のDX(デジタル改革)、組織強靭化、無駄削減の側面のDXの4つを同時に実現する必要があると考えています。私はこれを“新しい三方良し”と呼んでおり、すべてを解決しなければならないと考えています」と問題を提起した。

 江崎氏はこれに続けて、「DCの機能としては、DX・イノベーション、産業効率化、省エネ・節電、BCP(事業継続計画)の実現があります。DC事業やインフラが1粒で4度美味しいビジネスになるだけでなく、DXにより高い利益率を提供できるようにしていきたいと思います」とDCビジネスの方向性を示した。

ニューノーマル時代に向けたデータセンタービジネスの方向性
ニューノーマル時代に向けたデータセンタービジネスの方向性

伸びるDC市場に見えてきた課題

 続けて基調講演には、IDC JAPANの伊藤未明氏が登場。まず国内DC市場の動向について、IDCの伊藤氏は「2021年にまとめた最新調査では、コロナ危機の影響はDC市場に対してはほとんどなかったことが分かりました。国内市場は、大きな成長を続けるクラウド系DCと、横ばいの非クラウド系という二極化が進んでいる。非クラウド系の従来型サービスの顧客である一般エンタープライズでは、クラウドとオンプレミスをつなぐハイブリッドITの需要が確実に拡大しています」と説明した。

 このような中で、国内ではDCサービスを提供する事業者だけでなく、不動産業者が巨額を投じてDCを開発する状況が顕著になっている。また、5000平米以上、電力密度が6kVA以上のハイパースケールDCが成長の中心になる。こうした建設ラッシュでは、電力供給をどう確保するかが最大の問題となっている。

 「クラウドとオンプレミスを組み合わせて使うハイブリッドITでは、オンプレミスの接続性が重要になります。しかし、地方の企業がクラウドの東京リージョン、大阪リージョンのアクセスポイントに閉域接続すると通信コストがかさむという問題があります。そこで地方にクラウドの出先のような地域のエッジDCを設け、クラウドへの閉域接続を容易にします。エッジDCの重要度は増してくるのです」と伊藤氏は分析する。

増加し続ける電力消費への対応

 グローバルDC市場の動向としてアップタイムインスティテュートのBizo氏(Research Director of Uptime Institute Intelligence team Mr. Daniel Bizo)は「DCのキャパシティは急速に増大している一方で、設備不足の状況が悪化し人材不足も生じています」と見る。設備不足への技術の貢献は「効率性の向上は停滞していて、既存DCの大規模なアップグレードや、新しいDCでの冷却技術の大きな変革がないと改善されません」と状況を分析する。この課題に対する1つの解として、「エッジ」の考え方がある。Bizo氏は、「エッジコンピューティングがようやく実現し、最適化されたデジタルサービスを提供するための小規模な拠点が徐々に増加しています」とトレンドを見る。また、高齢化が進む人材に対しては、「女性スタッフの活用がまだ少なく、女性登用にはまだ改善の余地があります」(Bizo氏)。

 企(くわだて)代表取締役のクロサカタツヤ氏は、「DCは社会の礎であり、生活とも仕事とも切っても切れません。コロナ禍による巣ごもり需要で動画利用が急増し、通信トラフィックが増えると同時にDC需要も高まりました」とコロナ禍と電力問題の関係を指摘する。「トラフィックの増加やAIカメラの活用、自動運転の実現では、DC集約からエッジへのシフトが求められています。社会動態としては、今後見込まれる認知症患者の増加に対して、生活空間の安全維持にAIやセンサー等の活用が進み、大量の計算機資源が必要です。高齢化は大都市の問題と直結しており、エッジを含めたDCの立地に関してもコミュニティの問題解決の視点が不可欠です」と指摘した。

 JDCC理事長の田中氏は、「このまま技術進歩がなければ、2050年には現在のおおよそ1000倍の電力をDCが消費する試算があります。デジタルへの依存度は今後さらに高まり、DCが適切に供給されないと経済発展が阻害されてしまうと懸念されます。そこで、効率的にDCを作り、クラウドテクノロジーを活用して消費電力を削減する必要があります」と危機感を募らせる。そして「グローバルでもCO2排出ゼロを目指すことが不可逆な動きになっています。少し料金が上がってもクリーンな電力によるDCの稼働を求める需要も出てきています。日本では北海道や九州を中心に自然エネルギーが余っています。地域分散の視点も含めて、自然エネルギー活用を応援していくことはDC業界のあり方だろうと思います」と解説した。

 最後に田中氏は「CO2削減やサステナブルなDC立地としての日本のポジションは極めて高くなっています。DC関係の多くのステークホルダーの利害調整や、コミュニティ同士の連携にJDCCの存在感を示していきたいと考えています」と説明し、セッションをまとめた。

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