新型コロナウイルス感染症の拡大により、会社に通勤して同僚や取引先と顔を合わせて仕事をするという働き方が難しくなった。その半面、リモートワークや在宅勤務による、新しい働き方は定着したが、この1年でDXが素晴らしく進んだわけではない。小手先のリモートワークのツールを導入したり、電子承認のツールを入れたりという話が多く、飛躍的に生産性が向上したという話は少ない。つまり特定の部署、目の前のデジタル化にとどまっているケースが多いということだ。
なぜそこに落ち込んでいってしまうのか。ServiceNow Japanの高橋卓也氏は、次のように語る。
「業務の担当者が、自身で扱える情報の中で効率化を考えると、その範囲は限られてきます。これは、所属する組織内での検討に閉じてしまうことが原因だと考えられます」
自分の裁量の範疇を超える情報に触れることは、権限がないためできない。そうすると、どうしても目の前のデータについてだけどうにかしようということになる。それでは結局サイロ化が進んでしまい、その間を横断するデジタル化は難しくなってしまう。このサイロ化された状態を解消するためには、組織内で共有可能なデータと、それらのデータを横断的に利用することができるプラットフォームが必要となる。
この統一されたデータの一つとして一般的に利用されているのがCMDB(構成管理データベース)である。本来であればCMDBを使えば企業全体に関連する情報を連携・活用することができる。
しかし、前述の通り、多くの組織ではサイロ化が進んでおり本来CMDBに取り込まれるべきデータが部門の中で閉じてしまっていて、結果として各部門単位のCMDBとなっている状況にある。これでは企業全体を見渡せるデータのプラットフォームとしては活用できない。
さらに、CMDBの話になると、それ自体を作ることが目的になっているケースをよく耳にすると高橋氏は指摘する。
「CMDB構築に際してよく聞く課題は、CMDBに完璧なもの、つまり100%のデータが入っていることを目指しているケースが見られます。しかし、ITが縦割り組織の中でバラバラに管理されている状況もあり、部門間をまたいだデータの収集には非常に苦労してしまう。そのため、次第にデータを収集することが目的化してしまい、そのデータを『何に活用するのか』という点が置き去りにされてしまっているケースがあります。結果的に、いつまで経ってもデータの更新を続けているだけで利用されず、完成しないCMDBと揶揄されてしまいます」(高橋氏)
作ることが目的化してしまい、データがまとまらずに頓挫したり、データの中身が実態に合わなくなったデータベースは結局放置され、いずれ破棄されてしまう。そのため、CMDBと聞くと「既に持っているけど、役に立っていない」という印象を持っている企業が多いというのだ。
これらのCMDBに対する課題を一度に解決する方法はあるのか? また、企業にとって本当に使えるデータベースは、どうやって構築し、どのような効果をもたらすのだろうか? 次のページから詳しく見ていこう。