日経クロステック Special

クルマの未来を設計する Vol.2 量産車への採用が進むA2BとC2B 音や映像を伝えるハーネスを より軽量に、より低コストに

オーディオケーブルコストを
1/75、重量を1/60に

A2Bはオーディオ信号の伝送用に開発された。

オーディオ信号を低コストかつ軽量な非シールド・ツイストペア(UTP)ケーブルで伝送できるのが特長だ。スピーカーやマイクなどを一筆書きで結び、ノード間は最長15m、系全体では最長40mの伝送が可能である。

「従来のカーオーディオに加えて、音声認識エージェント、車室内の静穏性を保つアクティブ・ノイズキャンセラー、前方座席と後部座席との会話を円滑にするインカー・コミュニケーションシステムなど、音にまつわる機能が搭載されるにつれて、数多くのマイクとスピーカーを効率的に結ぶ手段が必要になっています。A2Bは、従来のアナログ・オーディオケーブルに比べ、単位長さあたりのコストで最大1/75、重量で最大1/60もの削減が可能です」と、宮下氏は説明する。

A2Bは、機能的には基板内IC間のデジタルオーディオ信号のシリアル伝送で使用されるI2S(Inter-IC Sound)バスを基板間、ECU間通信に拡張することで、複雑なプロトコルスタックを必要としない。これにより、マスターから全スレーブノードへの伝送を50μs(固定)と、低遅延かつ確定的な遅延に抑えることを実現しており、ノイズキャンセル処理などの遅延がクリティカルになるアプリケーションで適用しやすい。

その他、次世代の製品シリーズでは、UTPケーブル一本でマスターノードからスレーブに対して最大50Wの電力を供給できるのも特長だ。さらに、オーディオ信号帯域とは別に、マスターとスレーブ間でI2CバスやGPIOに相当する信号をやり取りできるデータスロットが準備されているため、スレーブノードのセンサーの制御まで含めた接続を可能とする。

A2Bを実現する製品としては、マスター/スレーブノード用コントローラ「AD2428W」、スレーブノード用コントローラ「AD2427W」および「AD2426W」などがアナログ・デバイセズから提供されている。

図1.

図1. 車室内のスピーカーやマイクを軽量かつ低コストな非シールド・ツイストペアケーブルで一筆書きで結ぶ、アナログ・デバイセズの「A2B」(右)

フルHD映像を安価で軽量な
UTPケーブルで伝送

一方のC2Bは、カメラが出力するビデオ信号の伝送用に開発された。

A2Bと同じく、低コストかつ軽量な非シールド・ツイストペア(UTP)ケーブルを使って、1080p30(フルHD)または720p60(HD)の映像信号を伝送できるのが特長である。

「リアビューやサラウンドビューモニター、ドライバー・モニタリングシステム、ドライブレコーダーなど、カメラを使った装備が増えるにつれて、カメラの映像信号の伝送が新たな課題として浮上してきました。しかもセンターディスプレイなどの大型化を背景に、画質が劣って見えてしまう従来のコンポジット(SD)映像ではなく、HDまたはフルHDでの表示が求められています」と宮下氏は指摘する。

フルHD映像を伝送する方法としては一般にLVDS(低電圧差動信号)が知られているが、コストの高いシールド付きケーブルが必要になるほか、信号のデジタル化によって信号帯域が数GHzにまで上がるため、他の系に対するノイズ対策を追加しなければならない。一方のC2Bは、映像信号をアナログで伝送するため信号の伝送周波数帯が低く、かつ放射ノイズレベルがデジタル伝送と比較して小さい。実際に国際無線障害特別委員会が策定する自動車向けEMI規格のCISPR 25 Class 5を十分にクリアする。

部品や組み付けコスト面でもC2Bのほうが有利だ。ハーネスを含めたシステムコストで試算すると、LVDSは従来のコンポジット(SD)に比べておよそ倍のコストがかかるのに対し、C2Bはおよそ半分のコストで収まる。従来のコンポジット(SD)とほぼ同コストである。「軽くて細いUTPケーブルが据え置きで使えるので、ハーネスの軽量化に寄与し、高画素にも関わらず配策も容易です」と宮下氏は訴求する。

C2Bのソリューションとしては、C2Bトランスミッタ「ADV7992」と「ADV7993」、C2Bレシーバ「ADV7382」と「ADV7383」が提供されている。

図2.

図2. 軽量・低コストな非シールドケーブルでフルHD映像を伝送できるC2B(右)と、シールド付きケーブルを必要とするLVDS(左)との比較

軽自動車を含む複数の
国産車への採用が進む

宮下氏は次のように展望する。「アナログ・デバイセズは半導体サプライヤーですが、自動車のアーキテクチャを革新するシステムソリューションを提供したいと考えてきました。ハーネスの軽量化と低コスト化を実現するA2BとC2Bはまさにそうしたテクノロジーであり、クルマの価値向上に役立てていただければ幸いです」。

A2BとC2Bは、北米、欧州、中国でそれぞれ採用が進んでおり、国内においても量産車への搭載が決まっている。音と映像を活用した新たな価値創造が始まっている。

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