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DX推進の基盤としてコンテンツを最大活用

変わる業界、共有基盤を刷新したKYB

KYBは総合油圧メーカーとしてグローバルにビジネスを展開し、自動車やバイク、建機、建設などにも製品を提供している。100年に1度の大変革期といわれる自動車関連でもあり、同社を取り巻くビジネス環境も大きく変化している。デジタル化が進む中、併せてセキュリティー強化も進めなければならない。こうした環境下、課題として浮上していたのがあらゆる業務に必ずある「コンテンツ」についてだ。長年オンプレミスのファイルサーバーで共有や管理をしてきたが、より進む業務連携やセキュリティー対策を考え、コンテンツクラウド「Box」への切り替えを決定。その狙いとBoxへの期待などを聞いた。

KYB株式会社

創業:1919年11月19日

資本金:276億4,760万円(2021年9月30日現在)

売上高:3,280億円(2020年度実績・連結)

https://www.kyb.co.jp/

コンテンツを分散させずに
「Box」で一元管理

小笠原 知之氏
KYB株式会社
経営企画本部 IT企画部 専任部長
小笠原 知之

 自動車やバイクなどに向けた緩衝器、産業用の油圧機器などを手掛けるKYBは総合油圧メーカーとしてグローバルなビジネスを展開している。オートモーティブ・コンポーネンツ事業が売り上げの半分強を占めるが、建機や建設を対象とする事業も成長している。

 数年前から、KYBではコミュニケーションおよびコンテンツ管理環境の見直しが大きなテーマになっていた。KYBの小笠原知之氏は次のように話す。

 「パンデミックの影響やビジネス環境の変化に対応するためにも、間接業務の効率化とコミュニケーション環境整備のための投資は優先的に実施しています。2020年8月にスタートしたBoxの導入プロジェクトもその一環です」

 KYBでは従来、オンプレミスのファイルサーバーを用いて情報を共有してきた。そのハードウエア更新のタイミングをきっかけに、グループを含めた全社のコンテンツ管理基盤となれるBoxへの移行が進められている。順次進めているファイルサーバーからBoxへのデータ移行は、今年度中には完了する見込みだ。

 遡って2019年秋、今後のコンテンツ管理の在り方を検討していた段階では、まず「オンプレミスかクラウドか」というテーマが俎上に載せられた。KYBの澤田楽氏はこう説明する。「社内ではMicrosoft 365への切り替えが検討されるなど、多くのアプリケーションでクラウドシフトが進行中です。このままでは近い将来、サービスごとにコンテンツが分散する状況が予想されました」

 では、業務に欠かせないコンテンツを一元管理する基盤として何がふさわしいか。容量の増加スピードは予測しがたく、オンプレミスでは心配だ。また、クラウドは高頻度で機能拡張されるが、オンプレミスにそうしたことは期待できない。「ビジネス要件の変化に追随するためには、クラウドが最適との結論に至りました」と澤田氏は振り返る。

実績や操作性、連携先クラウドの多さ、
セキュリティーなどの観点で選定

澤田 楽 氏
KYB株式会社
経営企画本部 IT企画部
澤田 楽

 同社はコンテンツ管理基盤としていくつかのクラウドサービスを比較検討した上で、Boxを選んだ。澤田氏はこう続ける。「Box選定のポイントはいくつかあります。まず、ファイルサーバーからのデータ移行の実績の豊富さとどのようなユーザーにも優しい操作性。また、情報ガバナンスの観点で、操作ログが7年間自動保存される点も重視しました。加えて、API連携させられるクラウドサービスが非常に多い点も高く評価しました」。KYBでは情報ガバナンスも重視しており、ファイルの更新履歴を無制限に保持できるオプション「Box Governance」も契約している。

 従来のファイルサーバーからBoxに切り替えることで、同社のセキュリティー対策も大幅に強化された。「以前、ファイルサーバーは基本的に社内の情報共有用で、取引先などの外部や一部のグループ企業とファイルを共有するときはメール添付、大容量のデータについてはDVDに焼いて送るといった方法でした。非効率であるとともに、セキュリティーリスクも懸念されました」と澤田氏は話す。

 近年、パスワード付きZIPファイルをメールで送り、解凍パスワードをメールで追送するファイル共有手法「PPAP」がマルウエアに対して脆弱であるとして、セキュリティー上の懸念が高まっている。「当社はセキュアな情報環境づくりにも注力しています。最近はPPAPのリスクへの注目が高まっており、脱PPAPの手段として、BoxのURLでファイル共有する手法への転換が急がれました」と小笠原氏は語る。脱PPAPは2〜3カ月の準備期間を経て、2021年10月に全社で完了したという。「Boxへの移行の途中段階でしたが、すべての社員にアカウントを展開。その上で、ファイル共有のルールを変えてBoxに一元化しました」(澤田氏)

コラボレーションを効率化するコンテンツ基盤例
コラボレーションを効率化するコンテンツ基盤例
非構造化データの活用基盤として全ファイルを集約、各種業務アプリとも連携
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コンテンツは極めて重要な企業資産
その管理と活用が競争力を左右する

 今、多くの産業分野でオープンイノベーションなど、業界外との連携強化の動きも進行中だ。KYBも例外ではない。「特に研究開発については、スタートアップをはじめ、これまでお付き合いのなかった企業と連携する機会が有機的に増えています。ビジネススピードも上がっており、初めての相手でもセキュアにスピーディーに情報共有できるBoxの機能は今後より重要になると感じています」と小笠原氏は話す。

 ファイルサーバーからBoxへの移行は9割方完了した段階だが、Boxは着実に業務に定着しているようだ。「ユーザーがBoxを使いこなせるか、当初は不安もありました。そこで、部門ごとに1人から数人程度、Boxの浸透をリードする社員を決めて、そのリーダー向け説明会を開きました。こうした施策を受けて、すでに多くの社員がBoxを使いこなしつつあります。ファイルサーバーからの移行データと同じくらいのデータ量を、ユーザーはすでにBoxにアップしています」(澤田氏)

 冒頭で小笠原氏が語ったように、Boxの大きな狙いの1つが間接業務の効率化である。同社が設定したBox導入効果の目標値は、生産性5%アップ。効果の測定は難しいが、小笠原氏は手応えを感じている。同時に、Boxの役割はさらに大きくなると考えてもいる。

 「よくいわれることですが、いまやメーカーも情報産業。コンテンツをセキュアに管理し、上手に活用する企業が優位に立つ時代です。ハードウエアなどのリソースとは異なり、コンテンツを失えば後で買い戻すことは困難。コンテンツは極めて重要な企業資産です」と小笠原氏は指摘する。

 ビジネス価値のさらなる向上を目指すKYBのBoxへの期待は大きい。

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