日経クロステック Special

イノベーション創出には異業種の知の融合が必須 理想的な共創の場で開発が加速

イノベーション創出には異業種の知の融合が必須 理想的な共創の場で開発が加速

異業種のエンジニアが集うべき
より効果的な共創に向けた場とは

──三井化学は、セイコーエプソンのR&D用インクジェット装置を導入して、製造業の生産技術を革新する新材料の開発に取り組んでいるとのことですが、どのような協力関係の下で開発を進めているのでしょうか。

善光 セイコーエプソンの「インクジェット イノベーションラボ富士見(以下、富士見ラボ)」をフル活用して、その場で共創することで開発を行っています。

 私たちだけでは、インクジェット装置のような特殊な機械をいきなり手足のようには操作できません。装置をよく知り、操作し慣れたプロがいる富士見ラボでは、装置の使いこなしでつまずいても、すぐに対処してもらえます。また利用実績のない新材料に合ったプロセス条件を見つけ出すためには、長い時間を費やして条件出しをする必要があります。近くにコーチがいる富士見ラボならば、こうした材料とプロセスの擦り合わせを円滑かつ効率よく行うことができます。

内田 富士見ラボを有効活用いただきありがとうございます。インクジェット技術は、多様な技術の集合体です。新たな媒体に吐出実績のないインクで印刷しようとしても、1回の試作で成功することは稀です。きれいに印刷するためには、適切な吐出条件を見つける必要があります。富士見ラボには、インクジェット技術の特性を深く理解し、様々な材料を使って印刷した実績を持つエンジニアを配備しており、パートナーの皆様と議論しながら適切なアドバイスができるように心がけています。

R&D用インクジェット装置での印刷の様子と特殊インクを重ね塗りして出力した結果

善光 私自身も富士見ラボを見学させていただきましたが、インクジェット装置による印刷だけでなく、前工程や後工程も一貫して行い、その場で検査までできる設備が整っていることに感心しました。

 新しい材料をインクとして試して上手く印刷できなかった場合、様々な原因が思い当たります。インク材料そのものに原因がある可能性もありますが、吐出制御の条件や印刷対象の表面状態が合わなかったという場合もあります。印刷前後の処理や評価も含めた一連の工程をすべて1カ所で行えることで、迅速な原因の特定が可能になり、対応策もすぐに試せます。開発期間の短縮に大きな効果が期待できます。

内田 三井化学のような材料メーカーの方々との共創を通じて、新たな技術ニーズの発見など、私たちにとっても得ることが多くあります。

 私たちにとって、印刷媒体や吐出するインクの材料は、与えられた前提条件であって、自在に特性を操れる対象ではありません。三井化学に、「すぐに乾いてしまい印刷結果が良くないので、インクとしての性能は落とさずに、もう少しゆっくり乾くようにはなりませんか」と聞くと、次には望んでいた材料を持ってきてくれるといったこともあります。材料とプロセス、両方の技術を最適化することで、これまで実現できなかったような困難な生産技術が実用化する可能性が高まります。インクジェット技術の潜在能力を引き出すために欠かせない材料の技術を持つ企業と共創できることを、心強く感じています。

善光 それはお互い様で、プロセス技術の観点からの困りごとや新たなニーズを聞いたことで、実際に開発に取り組んでいるテーマもあります。生み育てた新市場で、共に世界を席巻できるようなビジネスを展開できればと期待しています。

インクジェット技術の応用開拓に向けて
ワンストップで実験・評価

インクジェット技術の応用開拓に向けてワンストップで実験・評価① インクジェット技術の応用開拓に向けてワンストップで実験・評価②

 セイコーエプソンの富士見ラボは、長野県諏訪郡富士見町にある富士見事業所敷地内に設置され、2019年10月から本格稼働を開始した。

 富士見ラボは、電子部品の工場と同等である清浄度クラス1000のクリーンルームを備えており、OLED(有機EL)ディスプレイやタッチセンサー、太陽電池など、電子デバイスの試作が可能。さらに、富士見ラボ内部はイエロールーム仕様にしており、紫外線によって硬化するUV硬化樹脂や性能変化しやすい材料なども扱うことができる。

 そして、新たなインクジェット・プロセスを開発するために必要な多様な試作ができる装置を一式備えている。蒸着機やグローブボックス、スピンコーター、ドラフト、基材の前処理のための大気圧プラズマ装置、インクジェット描画装置、真空乾燥機、インクジェット吐出評価機、レーザー顕微鏡、触針式の段差計など、単に多様な印刷を試すだけでなく、印刷後の評価も含めてワンストップで実施できる。

 パートナー企業やエンドユーザーは、これらの充実した設備を活用して、様々な用途に向けたインクジェット技術の開発と評価を、セイコーエプソンが保有する技術や経験豊富なエンジニアの知見を活用しながら行うことができる。R&D用インクジェット装置で各種条件を出した後は、ヘッドを並べたり、ステージを大きくしたり、生産用の量産機への展開を比較的短期間で実現することも可能だ。

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