


第4世代 AMD EPYC プロセッサーを見る上で、どこに着目すべきなのだろうか。これについて「それぞれに独自の特長があり、適用領域も異なっています」と語るのは、AMDの中村 正澄氏だ。
「まずBergamoは、従来に比べてコア数を倍増している一方で、消費電力を増やしていない点が最大の注目ポイントです。これによってコア数あたりの設置スペースを削減できると共に、エネルギー効率を高めることが可能になります」(中村氏)
このような特長は、データセンターにおける設置面積の削減、環境負荷の低減に大きな効果をもたらす。またプロセッサー/ソケットライセンスのソフトウエアを使用している場合には、ライセンス料を削減できるというメリットもあるという。最近では経済環境の見通しが不透明になる中、データセンターのTCOを抑制するため、シングルCPUでより多くのコア数をサポートするシステムを求める企業が増えているが、Bergamoはこのようなニーズに対応する上で重要な役割を果たすことになるだろう。
その一方でGenoa-Xは、L3キャッシュの増大によって、テクニカルコンピューティングを高速化できる点が大きなポイントだ。
「正式名称に『3D V-Cache搭載』とあるように、これはAMDの第1世代V-Cache搭載製品であるMilan-Xの後継に位置づけられます。その最大の特長は、CPU内部のキャッシュメモリを『平面』ではなく『立体』で実装している点にあり、キャッシュを立体的に積み上げていくことで大容量キャッシュを実現しています。L3キャッシュが大容量化されれば、CPUチップ上でより多くのデータを扱えるようになり、大容量データを扱うアプリケーションのメモリアクセスを抑制することで、大幅な高速化が可能です。アプリケーションによっては、従来であればスーパーコンピュータが必要だった領域も、Genoa-X搭載サーバーでカバーできる可能性があります」と中村氏は説明する。

スーパーマイクロ自身も、既にBergamo/Genoa-Xに対応した製品を発表している。
同社は1993年に創業し、米国シリコンバレーを拠点に、PCサーバーやマザーボードなどを提供するハードウエアメーカー。AMD EPYCをサポートするサーバー製品群も以前から提供しており、そのラインアップも幅広い。その最大の特長は、独自の「モジュラー型」アーキテクチャを採用している点。具体的には、使用環境や用途、アプリケーションなどに合わせて各種モジュールを組み合わせ、無駄なく最高性能を引き出せるシステムを提供しているわけだ。
それではBergamo/Genoa-Xによって、同社のサーバー製品はどのような進化を遂げているのか。その1つとして岩佐氏が挙げるのが、1Uシングルプロセッサーサーバー「Supermicro CloudDC AS-1015CS-TNR」。これは柔軟な構成が可能なI/Oとストレージを備えた、省スペースかつ経済的なサーバーであり、Bergamo搭載でエネルギー効率を大幅に向上させている」と語るのは、スーパーマイクロの岩佐 英敏氏だ。

「1コアあたりの消費電力は、AMD EPYCの第3世代である64コアMilanが4.375ワットだったのに対し、128コアBergamoは2.8ワットであり、これだけで64%のエネルギーを節約できます。もちろん同一性能でのラックスペースは半分になり、プロセッサーライセンスのソフトウエア料金も半減します。エネルギー効率、スペース効率、コストパフォーマンスを高めたいユーザーに、大きなメリットをもたらすはずです」(岩佐氏)
一方、Genoa-X搭載による進化の例としては、「Supermicro DP Hyper AS-2025HS-TNR」を挙げる。これはデュアルソケットを装備した2Uサーバーであり、優れたIOPSと柔軟なネットワーク構成を実現、最大8つのPCIe拡張スロットを利用でき、GPUも搭載できるなど拡張性も高い。これまでにAMD EPYC搭載サーバーとして、数々のワールドレコードを叩き出してきた製品としても注目すべき存在だ。
「これも64コアMilanとの比較になりますが、Genoa-Xを搭載したものはコア数/L3キャッシュともに1.5倍となり、これによってパフォーマンスが大幅に向上しています。このメリットは、流体解析や有限要素法解析、半導体や電子機器の自動設計といったテクニカルアプリケーションで、大きな威力を発揮するはずです」(岩佐氏)
なおここで挙げた製品は、それぞれBergamoのみ、Genoa-Xのみに対応しているわけではない。Supermicro CloudDCにGenoa-Xを搭載する、Supermicro DP HyperにBergamoを搭載する、といった構成も可能となっている。さらに、スーパーマイクロが提供するBergamo/Genoa-X対応のサーバー製品は、ほかにも数多くラインアップされている。その代表的なものを示したのが図3だ。

GPUを最大10枚搭載できる4Uサーバーや、極めて高い拡張性を備えた8Uサーバー、I/Oの柔軟性が高いマルチノードサーバーなど、様々なフォームファクターが存在していることが分かる。しかもモジュラーアーキテクチャを採用しているため、各モデルの構成を必要に応じて柔軟に決められることも、注目すべき特長だといえるだろう。
「お勧めしたいのは、用途に応じてサーバー製品を選択するとともに、そこに搭載するプロセッサーも最適なものを選択することです」と岩佐氏。これが可能になったことも、新しい第4世代 AMD EPYCの大きなメリットなのだという。
「既に述べたように、コアを高密度実装したい、エネルギー効率を最大化したい、コストを最適化したいという目的には、Bergamoが適しています。仮想化された環境で汎用的なITサーバーを動かしたい、ラックスペースを増やさずにVDIのパフォーマンスを高めたい、といった用途に向いているといえます。これに対してGenoa-Xは、大容量のL3キャッシュによって、より大きなデータ処理を高速化できます。先程はテクニカルアプリケーションで威力を発揮すると述べましたが、データベースの高速化にも適しているといえるでしょう」(岩佐氏)
今後はどの企業システムもハイブリッドクラウド化していくと見込まれる。その中で、クラウドサービス事業者のデータセンターの効率化や、オンプレミスのデータセンターがどのような役割を担うべきなのか、これまで以上に真剣に考えられるようになるはずだ。今後はこのような選択肢のもと、データセンターやオンプレミスサーバーのあるべき姿を、より戦略的に検討する時代が来たといえそうだ。