

——どんな取り組みでしょうか。
トゥン会長:リッケイアカデミーと名付けているのですが、日本語はできるけれどもITについては専門外のベトナム人をITのプロフェッショナルに育てる「専門学校」を設けています。教える対象者は、Rikkeisoftの社員ではなく、社外の人です。日本語が得意な人にITを教えて、語学と技術力を兼ね備えた人材に育てて、その人たちを雇い入れます。
——技術者に日本語を教える取り組みはよくありますが、その反対の取り組みは珍しいですね。「秘策」とも呼べそうですが、どのようなきっかけで始めたのでしょうか。
トゥン会長:ある日本の友人とハノイのレストランで食事をした際に、ベトナム人のウエイターが流暢な日本語で話しかけてくれたことがきっかけでした。話を聞くと、彼は技能実習生として日本に住んだことがあり、日本に戻りたいけれども就労のビザが取れない、ということでした。単に日本語ができるというだけでは、ベトナム人が日本で働くのは難しいという現実があります。
その際に、このウエイターのような人達にITを教えて、ITのプロフェッショナルに育て上げれば、日本に戻って働けるはずだと思い付きました。
技能実習生以外にも、日本語学校や専門学校に通うために日本に留学するベトナム人は多くいます。日本は留学先として大変人気があるのです。ベトナムに多くいる、日本語ができる人材にITを教えれば、本人のためになるだけでなく、人材不足に悩む日本、経済発展を望むベトナムの両国にメリットがあります。
——外国人技能実習制度は日本でも多くの問題が指摘されています。その問題を解決する手段になり得るという点でも、とても意義のある取り組みだと思います。リッケイアカデミーは福岡にも拠点があるそうですね。
トゥン会長:ベトナムに帰国した人だけでなく、日本で勤務中の技能実習生からも需要があると考え、福岡に拠点を作りました。技能実習生としての仕事と並行して勉強ができるよう、福岡では平日の夜に授業をしています。土日は勉強したことを実践する場として、Rikkeisoftの福岡オフィスを提供しています。現在、福岡には70人の生徒がいます。
——リッケイアカデミーには現在どれくらいの生徒が通っているのでしょうか。
トゥン会長:800人です。これまで200人が卒業し、そのうち50人が当社に入社しました。実は、卒業生にはRikkeisoftへの就職を義務付けていません。別のIT企業で活躍してもらっても構わないと思っていますし、実際にそのような人材も多数います。
リッケイアカデミーのコースは半年で、日本の「ITパスポート」に相当するベトナムの資格を取得できます。JavaやWeb開発、モバイルアプリ開発なども学べます。卒業生のほとんどがIT系の企業に就職しています。
日本への留学経験がない、高校を卒業したばかりの18歳向けに4年半のコースも始めました。最初の2年間は日本語を勉強し、残りの2年半で提携している郵政通信技術大学(PTIT)でITを学びます。こちらのコースも人気があります。
今後は生徒数を1000人以上に伸ばす目標です。PTIT以外にも提携する大学を増やす計画です。自ら大学を作ることも視野に入れています。
——起業のきっかけを教えてください。
トゥン会長:ビジネスとしてITを選んだのは、チャンスがあると思ったためです。大学を卒業した2011年から1年ほど、ベトナムの大手企業に勤めていました。その時期は、日本企業がベトナムに視察に訪れてIT人材を盛んに探していました。
当時、ベトナムITの最大手企業は日本向け事業で2000人規模の人材を抱えていました。でも2番手のIT企業には150人ほどしかいませんでした。そのため、日本向けのITビジネスであれば成長できると考えたのです。
日本に留学してから、起業への思いは一段と強まりました。日本のクラスメイトは皆、ベトナムのことといえばベトナム戦争しか知りませんでした。自動車もないと思われていたくらいです。起業して会社を成長させることでベトナムの発展に貢献し、母国の存在感を高めたいと考えるようになりました。
——日本向けのビジネスの状況はいかかですか。
フイ社長:以前は日本のシステム開発大手の下請けとして仕事がメインでした。ここ3年ほどで日本のユーザー企業からの直接受注が増加し、割合が逆転しました。
——直接受注が拡大した理由と、それが成功した理由は何でしょうか。
フイ社長:これまでは日本のお客様に対して高いコストメリットを提供してきました。しかしコストメリットだけでは成長が止まってしまいますので、今後は付加価値の向上が欠かせないと考えています。近年は、上流工程を担当できる日本人SEや日本語を話せるベトナム人SEが増えてきたため、従来のお仕事(システム開発の下請け)以外にも、一般の事業主(ユーザー企業)からのご依頼に応えられるようになりました。その結果、そうしたお客様からご評価いただき、徐々に取引規模も拡大して、直接受注の比率が増えています。
直接受注ができるようになったのは、過去10年間の実績が大きいですね。スモールスタートで小さく始めて、信頼を得て、少しずつ拡大していき、その結果として、直接ご依頼いただけるようになった案件が多いです。現在は200人体制で対応している大規模な案件もあります。
最近は「1000人動員してもらえるなら発注したい」と言ってもらえるケースも出てきています。中国向けに発注している日本企業が、事業継続のリスクから、切り替えを検討するような場合です。
——営業はどのようにしているのですか。
トゥン会長:口コミで紹介していただく案件が多いですね。
山口顧問:私は元々日本のIT企業に勤めていて、Rikkeisoftに仕事を発注する立場でした。誠実で勤勉な社風と共に、高い技術力を備えていたので、とても良い関係を築くことができました。その後、物流システムを手掛けるベンチャー企業であるファーストオーダー社に転職し、「もっと多くの日本企業にRikkeisoftを知ってもらいたい」と考え、縁もあって顧問の仕事を引き受けました。今は、様々なご縁で繋がりがある企業から、システム開発時の継続的な人材不足解消や、DX実現のため高度なシステム開発技術の課題解決の相談を受けた際などに、Rikkeisoftを紹介させて頂いています。
——今後の事業の計画について教えてください。
トゥン会長:現在、海外拠点を増やしているところです。2023年1月に米国、5月にタイに拠点を設けました。2024年はシンガポールと韓国に拠点を新設します。
今後は新たな拠点を生かしてグローバル展開し、2022年度に35億円だった売上高を2027年に250億円まで拡大することを目指しています。日本向けは現在の約6倍に当たる130億〜150億円、アメリカで80億〜100億円を想定し、残りをベトナムとタイ、シンガポール、韓国などで売り上げる考えです。
日本については、従業員数を2025年末までに現在の4倍に当たる1000人規模に増やす計画です。ベトナム人だけでなく、日本人のSEも積極的に採用します。これまで以上に日本の文化、日本のやり方を浸透させ、SI企業様や事業会社のお客様のさまざまなニーズに応えるためです。上流工程を担当できる人材を増強する目的で、日本のコンサルティング会社への投資も考えています。
フイ社長:2023年5月に作ったタイ法人は、日本法人の子会社です。これは主なビジネスとして、タイに進出している日本企業のサポートが目的です。実際に、ある日系物流企業における倉庫の自動化支援サービスを提供しています。
日本のある大手流通グループからは、日本の拠点で使うシステムの開発受託と共に、ベトナムのショッピングモールのDX(デジタルトランスフォーメーション)に関わるシステム開発も受注しています。こうした案件のように、日本企業がASEAN(東南アジア諸国連合)各国に進出する際のご支援に注力していきたいと考えています。ASEAN市場に本社を構える当社と組むことは日本企業にとって大きなメリットがあるはずです。
私は日本で人生の半分を過ごしており、第二の母国だと感じています。そんな第二の母国の発展に、DX支援を通じて貢献したいと思っています。
