

——このタイミングでメンテナンスハブを新設した理由は。
「2025年の崖」が話題になっているように、レガシーシステムの保守・運用人材の不足に悩む日本企業は多くあります。COBOLなどのプログラミング言語で作られた古い業務アプリケーションが多いため、維持するための人材を確保することが難しくなっています。そのためレガシーシステムの保守・運用サービスは、高い需要があると判断しました。
当社が企業から保守・運用を引き継ぐ際、業務の継承プロセスにかかる費用は頂きません。このため、スムーズに業務を引き継げると考えています。
需要の高まりという点で言うと、中国の地政学リスクも関係しています。これまで日本企業の多くは、レガシーシステムをはじめとした様々なシステムの保守・運用に中国のオフショアを活用してきました。
ところが最近の地政学リスクの高まりにより、新たな発注先を探す日本企業が増えています。そうした企業にも、当社のサービスはニーズがあると考えました。
——日本企業のレガシーシステムの保守・運用は高い品質が求められると思います。品質を高めるための工夫点を教えてください。
CMMI(Capability Maturity Model Integration)やITIL(Information Technology Infrastructure Library)などの業界標準に基づいて構築した、当社独自のオフショア開発モデル「4Sモデル」をプロジェクトに適用しています。これは保守・運用だけでなく、開発もターゲットにしたモデルです。
4SはSET UP(立ち上げ)、SCRATCH(スクラッチ)、STABILIZE(安定化)、SCALING(拡張化)の頭文字にちなんでいます。
SET UPは立ち上げの段階で、日本企業であれば日本の客先の拠点、つまりオンサイトで作業します。顧客のシステム運用の状況やビジネス上の課題などを分析し、必要な要件を固めます。
SCRATCHは決まった要件に基づき、オフショアチームが小規模な試行とテストを重ねます。
STABILIZEはシステムを安定稼働させるためのプロセスです。SCRATCHにおけるテストの結果から、システム実装に必要なリソースを確保するための計画を定めます。プロジェクトのメンバーに必要なスキルを身に付けさせ、緊急時にバックアップ環境にデータを移すための訓練などをします。これらの段階を経て、実装プロセスに入ります。
SCALINGは、システムを開発・運用していく中で生じた新しい要件や改善点への対応を指します。必要に応じてシステムのリソースを増やしたり、メンバーを追加したりします。
——競合他社と比べた場合のVTIの強みは。
まずコスト面です。日本のITベンダーはもちろん、中国のオフショア開発に比べても、当社は顧客の負担するコストを下げることができます。
保守と運用の両方を受注することで、それぞれを別の組織が担当する場合に比べて生産性も向上します。当社は保守と運用の両方を理解したメンバーが担当します。
システムのメンテナンスに特化して作業に当たることによって、作業時間の短縮も期待できます。我々には優れたノウハウの蓄積能力があると自負しています。経験を重ねることで、作業効率はより高まっていきます。品質改善のための継続的なツール開発、テスト工程に生成AI活用にも取り組んでいます。
新規採用にも力を入れていますし、社員のトレーニングやローテーションの仕組みを充実させ、オペレーションとサービスの品質を高める努力を常にしています。日本語能力の高い社員を採用していますし、社員への日本語教育にも力を入れていますので、日本語を話す能力にも自信を持っています。
——VTIはこれまでどのような業種の企業から受注していますか。
小売りと製造分野の企業が中心です。今後は金融、公共サービス、運輸などの企業からの受注も目指します。
得意な技術領域はWeb関連やモバイル、AI(人工知能)、クラウドコンピューティング、ローコードなどです。米サービスナウや米セールスフォースなどが提供するプラットフォームの保守・運用の経験も豊富です。
——具体的な事例を教えてください。
3つご紹介します。1つ目は採用人事サービスを展開している大手企業です。システムの開発と保守・運用を受注しました。保守・運用は20人が24時間365日体制でサービスを提供しています。
2つ目はコンピューター設備の管理会社です。この企業は中国にシステムの保守・運用を発注していましたが、その一部を当社に移管いただきました。移行費用は両社が共同で負担し、移行後に安定稼働に成功しました。現在は10人体制で対応しており、プロセス改善などに取り組んでいます。
3つ目は米アマゾン ウェブ サービス(AWS)のクラウドサービスを使った、ヘルプデスク業務です。24時間365日体制でヘルプデスクを実施しています。
——事業拡大の計画は。
メンテナンスハブによる保守・運用は、多くの需要が見込めるサービスだと考えています。新型コロナウイルスの流行以降、ベトナムからリモートでサービスを提供することを受け入れていただけるケースも増えています。
メンテナンスハブのメンバーは順次拡大していきます。2〜3年後に300〜500人、将来は1000人を目指します。
社員の採用や育成にも力を入れます。高い能力を持つIT技術者と日本語が得意な人材の両方を採用します。IT技術と日本語の両方に優れているのが理想ですが、そういった人材はなかなかいません。
ですので、どちらかができる人材を採用し、両方に強くなるよう育成します。「ブリッジSEだけでなく、開発者も日本語ができるほうが信頼できる」と考える日本企業は多いので、その要望にできる限り応えたいと思います。