企業変革の羅針盤 デジタル変革のエキスパート達
ZVC JAPAN株式会社
代表取締役会長 兼 社長
下垣 典弘

進化するZoom
セキュリティーと機能の双方を強化し
社会を支えるインフラを目指す

新しいワークスタイルで広がる
Zoomの活用領域

大和田 コロナ禍の収束後、オフィスへの回帰現象が見られます。必要に応じてテレワークと出社を組み合わせるハイブリッドワークという新しいワークスタイルも定着していますが、現状をどう捉えていますか。

下垣氏 出社する人が増えているのは確かですが、会社で仕事をするのが当たり前だったコロナ禍以前の状態に戻ったのではなく、出社という行動に新たな意味が生じたと考えるべきではないでしょうか。利便性の高いコミュニケーションツールが広く普及してからは、いつどこにいてもスムーズに仕事ができるようになりましたが、実際に人と顔を合わせることには、信頼関係を深めたりする上で大きなメリットがあります。ここ1年ほどは、あえて対面コミュニケーションを深めるために出社する人が増えているように感じます。

大和田 Zoomの使われ方にも変化が見られますか。

下垣氏 当社の「Zoom Meetings」は、リモートワーク時にミーティングを行うための手段として普及しました。もちろんハイブリッドワークが定着してからも多くの方にそのためのツールとしてお使いいただいています。一方で、例えば教員不足のために実施できない授業がある地方の学校に、都市部の学校で行っている授業を配信したり、役場の支所に本庁職員と対話できるオンライン窓口を開設して、住民がわざわざ本庁に足を運ばずに済むようにしたりするなど、その活用の仕方はビデオ会議ツールの枠を超えて大きく多様化しつつあります。

ISMAPの認証取得
によって
今後公共サービスでの
さらなる利用拡大へ

株式会社YEデジタル 代表取締役社長 玉井 裕治氏
大和田 利用シーンが拡大し、公的なサービスでも使われるとなると、情報セキュリティーの確保が気になるところです。安全面ではどのような対策を講じていますか。

下垣氏 プライバシーとセキュリティーを守ることは、私たちにとって最優先事項で、Zoom Meetingsはこれまで400以上のセキュリティー機能を追加してきました。通信にTLS暗号化を使用し、ミーティング、ウェビナーやメッセージの中身には高度な暗号化(AES256-GCM)が標準で適用され、必要に応じて無償ユーザーであってもミーティングにエンド・ツー・エンドの暗号化を適用可能です。他社にはあまりない機能としてはミーティングの画面や音声に透かしを入れることができるため、情報漏洩対策にもつながります。それらの機能に加え、アメリカのホワイトハウスやダボス会議などで採用されている実績からも、セキュリティーの堅牢さを物語っています。

大和田 昨年末には、ISMAP(Information system Security Management and Assessment Program:政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)の登録も完了されました。

下垣氏 ISMAPは、日本の政府機関によるクラウドサービス調達のセキュリティー水準を保証するプログラムで、情報セキュリティー対策およびマネジメントコントロールの実施状況の監査を受け、Zoom MeetingsをはじめとするZoomの主力製品が2023年12月に登録が完了しました。官公庁や地方自治体などがZoomのサービスを安心して使えるようになり、既にISMAP対応版の利用を開始した中央官庁もあります。

大和田 Zoomのサービスはこれから公的機関や社会にどう広がっていくのでしょうか。

下垣氏 既にZoomを全庁規模で導入して、全職員に有償ライセンスを付与している地方自治体もあります。職員がいつでも会議を主催できるため、テレワークはもちろん、職員研修やオンラインイベント、外部関係者とのミーティングなどにも活用が広がり、業務効率化、コミュニケーション活性化など様々な効果を生み出しています。また、先ほど教育機関や役場の支所でのZoom Meetingsの活用事例を紹介しましたが、中央官庁でも利用されるようになることで行政全体での活用が加速し、国民・地方自治体・中央官庁を一気通貫で結ぶコミュニケーションツールとなることに期待しています。

大和田 行政サービスを利用する側と提供する側、双方の利便性の向上を目指しているということでしょうか。

下垣氏 その通りです。Zoomはその使いやすさが最大の特徴の1つです。ビジネスパーソンだけでなく、IT利用に必ずしも長けていない「市民」との顧客接点で活用することで、その特徴が生きていきます。Zoomの様々な機能を活用して、自治体の窓口に設置したモニターで耳の不自由な方と職員がリモート手話通訳や自動字幕でコミュニケーションを取る、日本語に習熟していない外国人住民の方と職員が自動翻訳機能を使ってやり取りするといったことが円滑にできれば、ダイバーシティへの対応もしやすくなります。

大和田 医療や災害対策など、緊急性が高い用途への応用も考えられますか。

下垣氏 オフィスの会議室向けのビデオ会議システム「Zoom Rooms」を利用して地域の複数の救急病院が連携し、救急患者への対応を迅速に話し合うといった試みがなされており、こうした活用は今後さらに広がっていくはずです。また、自宅にいながらZoom Meetingsで診察を受けるオンライン診療は既に実現していますが、これに加えて、例えば地方都市の病院から遠隔地の医師にデジタル紹介状を送り、その病院にはない診療科の診療をオンラインで受けられるようにすることなども検討されています。災害対策では、迅速な情報共有を行うためにZoomのサービスを利用されている自治体がいくつかありますが、ISMAPの認証を受けたことでその注目度もいっそう増しています。

大和田 情報セキュリティー水準の確保は、オンラインの企業向けコミュニケーションプラットフォームには欠かせない要件ですね。

下垣氏 セキュリティーの要求レベルが高い金融機関で、プライベートバンクサービスを受けるお客様とのオンラインコミュニケーションなどに利用されるケースが増えつつあるのは、まさにその表れだと思います。

AIを搭載した
コラボレーションプラットフォームで
個人の生産性と
チームワークを向上

大和田 ビデオ会議以外のサービス拡充についてお聞かせください。

下垣氏 クラウド電話サービスやビジネスチャットなど、多種多様なシーンに対応するコミュニケーション手段を用意しています。特にユーザー数の伸長が著しいサービスの1つが2021年に日本にて提供を開始したクラウド電話「Zoom Phone」です。PBXを設置しなくても通話環境を構築できる、会社の番号宛てにかかってきた電話をどこにいても受けられるようになる、といった多くのメリットがあります。ウイスパリング機能を使えば、職員の通話内容を上長がモニタリングして、電話の相手には聞こえないように助言を与えるといったことも可能です。

大和田 そうした様々な機能の連携はどうなっていますか。

下垣氏 人と人をつなぐコラボレーションツールを包括的に提供し、複数のサービスをシームレスに利用できるようにするのが私たちの使命です。社内の誰かに連絡したいとき、その人がZoom Meetingsで会議中なら電話をかけずに「Zoom Team Chat」でメッセージを送れたりするのは、プラットフォームが共通だからこそです。一方、会議中の人にあえてZoom Phoneで電話をかければ緊急の要件だと察知して応答してもらえるというように、より円滑なコミュニケーションを実践していだけます。そうした様々な機能のオールインワンのAIを搭載したコラボレーションプラットフォームが「Zoom Workplace」です(図)。 大和田 どんな特徴があるのでしょうか。

下垣氏 Zoom Workplaceは既存のコミュニケーション機能を大幅にアップデートすると同時に、各機能の連携強化を図っています。最大の特徴は、AI駆動型のオープンなコラボレーションプラットフォームである点です。AIアシスタントの「Zoom AI Companion」が、Zoom全体で複数のソースから情報を収集・統合・共有。メールやチャットのメッセージの下書き、ミーティングやチャットの要約、ホワイトボードを介して同僚とのブレインストーミングなどを効率化でき、個人の生産性のみならずチームワークを高めることにもつながります。

「Zoomする」の範囲をさらに広げて
将来的には社会インフラに

大和田 コミュニケーションの在り方は、これからどのような方向に向かっていきますか。

下垣氏 私たちは「Delivering happiness(すべての人に幸せを届ける)」という理念を掲げており、創業者 兼CEOであるエリック・ユアンは、「2035年までに相手の飲んでいるコーヒーの香りが伝わり、ハグできるようなコミュニケーション体験をオンラインで実現させる」という夢を描いています。ありがたいことにZoom Meetingsは、ビデオ会議ツールとして広く普及し、多くの人が「Zoomする」と表現するようになりました。

 今後はクラウド電話、チャット、イベント配信など、コミュニケーションにかかわるあらゆる行為が「Zoomする」と呼ばれるようになることを目指しています。できるだけ多くの方に、既に使っていただいているビデオ会議以外のツールについても、ぜひ一度試してみていただきたいです。
人と人をシームレスに結ぶのが
私たちの使命です
株式会社YEデジタル 代表取締役社長 玉井 裕治氏
 近い将来、テレコミュニケーションを取るお互いの言語が同時に自動翻訳されてスムーズな意思疎通をしたり、ご高齢の方がワンクリックで介護士を呼び出して直ちに会話をしたりといったことが、当たり前のように行われるようになるでしょう。また、普段のビジネスや生活シーンにおける人のつながりを支援するだけではなく、公的機関にも利活用されることで、Zoomのサービスが災害発生時の情報伝達などに役立つ社会インフラとして機能するようになることも望んでいます。