「Oracle Database@Azure」とは、具体的にどのようなサービスなのか?
「ひと言で言えば、OCIで稼働するOracle DatabaseサービスをAzureのリージョン(データセンター)内で提供するサービスです。両者が一体化することで、アプリケーションとデータベース間の低遅延な接続や、一体運用による運用負荷の大幅な軽減が期待できます」と説明するのは、日本オラクル クラウド事業統括 データベース・ソリューション部 クラウド・エンジニアの宮本拓弥氏である。

2023年9月にサービスを開始した「Oracle Database@Azure」は、現在、世界13リージョンで提供。日本では2024年10月からAzureの東日本リージョンで提供しており、今後、西日本リージョンでも提供する予定だという(2025年3月時点)。
「Oracle Database@Azure」では、OCIのデータベースサービスのうち、「ExaDB-D」(Exadata Database Service on Dedicated Infrastructure)と、「ADB」(Autonomous Database)の2つが利用できる。前者は、インフラからOSの一部までをオラクル側が管理するAutomated、後者はデータベースの一部までをオラクル側が管理し、ユーザーは最小限のデータベース管理のみに専念できるFull-Managedのサービスだ。
「『ExaDB-D』は、高性能、高可用性、高拡張性を備えたクラウド型データベースで、基幹系をはじめとするミッションクリティカルなシステムのデータ基盤として圧倒的な実績を誇ります。CPUリソースが柔軟に増減可能で、Real Application ClustersやPartitioningをはじめとした、すべてのOracle Databaseオプション機能が使えること。インフラ管理が一切不要で、ユーザーはデータベース運用に集中できることなどが大きなメリットです」(宮本氏)
また、「ADB」は、AI・機械学習を利用した完全自動運用のマネージドデータサービスであり、ユーザーはチューニングをはじめとする大部分のデータベース運用からも解放される。「スケール調整は1CPU単位と非常に柔軟であり、課金も1秒間単位なのでコストの最適化が実現します。あらゆるワークロードやデータタイプに1つのデータベースで対応できる完全なマルチモデルであることも『ADB』の大きな特徴です」と宮本氏は説明する。
ミッションクリティカルなシステムをオンプレミスからクラウドに移行するモダナイゼーションは、日本のエンタープライズでも徐々に進んでいるが、データベースをいかにクラウドに乗せるかという点に課題を感じている企業は多い。高性能、高可用性、高拡張性を備えた「ExaDB-D」と「ADB」が利用できる「Oracle Database@Azure」は、その1つの答えとなりそうだ。
既に海外では、「Oracle Database@Azure」を活用した大規模なデータ処理の事例がいくつも報告されている。「米国のニューヨーク都市圏交通公社(MTA)は、交通管理システムの基盤として『Oracle Database@Azure』を利用し、1日に約1300万件の通行料徴収取引を処理しています。OCIのデータベースとAzureのアプリケーションが一体化し、膨大なデータを低遅延でやり取りできる環境が整ったからです」と宮本氏は語る。
では、「Oracle Database@Azure」なら、データベースとアプリケーション間のデータのやり取りが、どれほど低遅延で実現するのか? 実際に検証したのが、OCIの導入や活用を支援している日立製作所である。
同社は、「Oracle Database@Azure」が東日本リージョンで提供開始された直後の2024年12月から、導入を検討するユーザー企業のためにパフォーマンスや使い勝手に関する検証を行ってきた。
「『Oracle Database@Azure』は、OCIとAzureという2つのクラウドサービスを組み合わせたマルチクラウドの一種ですが、マルチクラウド構成を採用するに当たっては、性能、可用性、運用、コストの4項目を十分に検証する必要があります。『Oracle Database@Azure』の検証では、高い処理性能や可用性が求められるミッションクリティカルな基幹システムを想定して、4項目の検証を行いました」
と語るのは、日立製作所 マネージド&プラットフォームサービス事業部 ハイブリッドクラウドサービス本部 データベースサービス部の片山仁史氏である。

性能検証の一つとして行ったのが、遅延に影響するネットワーク性能の検証である。
オラクルとマイクロソフトは、「Oracle Database@Azure」をリリースする以前から、両社のクラウドを最適に融合させるマルチクラウドサービスを提供してきた。その第1弾が、2020年にリリースした「Oracle Interconnect for Azure」だ。これは、OCIとAzureを閉域網でつなぐもので、Azureのリージョン内にOCIのインフラを置く「Oracle Database@Azure」と比べるとサーバー間に物理的な距離がある。
日立製作所はネットワーク性能の検証に当たって、「Oracle Interconnect for Azure」と「Oracle Database@Azure」、さらにOCI内部のデータベースとアプケーション間の通信におけるネットワークレイテンシ(遅延時間)を比較した。
片山氏は、検証の結果について「同じ条件におけるデータのやり取りで『Oracle Interconnect for Azure』のレイテンシを“1”とした場合に比較して、『Oracle Database@Azure』で“およそ4分の1”になることが分かりました。かなりの低遅延を実現できていると思います」と評価する。
この他、性能検証の一環として、オンライン処理のスループットや、バッチ処理のネットワーク通信時間などを比較したが、いずれも「Oracle Database@Azure」が高いパフォーマンスを発揮したという。
日立製作所は、以上のような検証を基に、ユーザー企業が基幹システムを効率よくマルチクラウドに移行できるようにするための知見を蓄えている。片山氏は、「今後も様々な検証を行い、お客様のクラウド移行が確実で効率的なものになるよう貢献したい」と抱負を語った。
前述の日立製作所による検証によって、「Oracle Database@Azure」は低遅延でデータをやり取りできることが分かった。では、基幹システムをクラウドへ移行するに当たり、この低遅延性はどのようなメリットをもたらすのだろうか。
「複数のクラウドを併用するマルチクラウドの場合、その壁はより一層高くなります。計測のための環境構築が非常に大掛かりとなり、システムを実装するのと大差ない膨大な手間とコストが掛かるからです。その点、あらかじめ低遅延であることが検証済みの『Oracle Database@Azure』に魅力を感じるユーザーは多いのではないでしょうか」
と語るのは、データマネジメントやデータ基盤構築のコンサルティングを行い、『日経コンピュータ』『日経クロステック』などで数多くの記事を執筆しているD.Force代表の川上明久氏である。

OCIとAzureが一体化した「Oracle Database@Azure」は、1つのコンソールでOCI側、Azure側の監視や操作を一元管理できるのも大きなメリットだ。日本オラクル 事業戦略統括 事業開発本部 本部長の佐藤裕之氏は、「課金やサポートが統一されているのも、ユーザーにとって使いやすい点ではないかと思います。当社とマイクロソフトのマルチクラウドにおける協業は既に6年になりますが、この間のサービスの融合と進化によって、サービスとしての使い勝手も格段に向上しています」と語る。
日本マイクロソフト カスタマーサクセス事業本部 データ&クラウドAIアーキテクト統括本部 業務執行役員 統括本部長の大本修嗣氏は、「今、最も熱いテクノロジーは生成AIですが、それがうまく活用できるかどうかはデータ次第。AzureとOCIが一体化した『Oracle Database@Azure』は、生成AIの活用に最も適したマルチクラウドの一つだと自負しています。モダナイゼーションやデータ活用のための基盤として、ぜひご検討いただきたいですね」と語った。

