事業を支える「生命線」をOracle Database@Azureへ 薬の研究開発・製造関連システムをわずか2カ月弱でクラウド移行したアステラス製薬

ータセンターやハードの運用コストを抑えるため
クラウドへの移行を決定

于氏が「Oracle Database@Azure」を選んだ最大の理由。それは、アステラス製薬がミッションクリティカルなデータベース基盤としてオンプレミスで10年以上利用してきたOracle Exadata(以下、Exadata)を、クラウドでも利用できる点にあった。

アステラス製薬が利用するシステムの中でも、とくに重要なのが40以上に及ぶ研究開発および製造関連のシステムだ。

「研究開発関連のシステムでは、薬の成分を特定する化合物番号や化合物の構造、過去の研究テーマなどの膨大なデータベースを利用しています。製造部門では、品質管理、試験管理など、様々なシステムがデータを基に稼働しています。これらのシステム群は、国内外で1000人以上の社員が利用しており、非常にミッションクリティカルな性質を持っています」(于氏)

膨大かつ重要なデータを管理・運用するため、アステラス製薬はそのデータベース基盤としてExadataを採用していた。10年以上にわたり安定稼働しており、大量のデータを安定処理できる高速パフォーマンスや、多数のデータベースを1台で統合できることによる運用管理コストの低減、業務の継続を担保する高い可用性、事業の成長に応じて柔軟にスケールアップできる拡張性など、多くのメリットを備えていたからだ。

ただしオンプレミスで運用していたため、データセンターの維持やハードウェアの保守に掛かる運用コストが高止まりしているのが難点であった。

「5年ごとにハードウェアの更新をしなければならず、その都度、大きな費用が掛かることが悩みの種でした。そこで、次の更新時期に当たる2027年までにクラウドに移行させることを決定し、2024年4月にプロジェクトを始動させました」と于氏は経緯を説明する。

データベースの運用管理を担当する于氏だが、クラウドへの移行プロジェクトに携わるのは初めての経験である。

そこで于氏は、移行を進めるに当たっての課題や、スムーズな移行方法を探るため、オラクルに協力を仰ぐことにした。

償の移行支援サービスで
「これならやれそうだ」と確信を得る

于氏の相談を受けて、オラクルが提供したのは「Oracle Cloud Lift Services(OCLS)」という無償の移行計画支援サービスである。

オンプレミスにおけるデータベースの構成や運用状況、利用状況といった現状を把握し、どうすればOCIへの円滑な移行が実現できるのかを支援する無償サービスだ。

「2カ月ほどかけて、現状のアセスメントから、想定される課題を洗い出し、それをどう解決しながら進めれば円滑な移行が実現するのかなど、具体的な道筋や課題をクリアに示してもらえました。『これならやれそうだ』と確信できたので、大きな自信につながりました」と于氏は明かす。

初めてクラウド移行に携わる于氏にとって、OCLSは心理的な負担を減らす効果もあったようだ。

当初は2027年を目標に、余裕を持って2年ほどで移行を完了させる予定だった。ところが、OCLS の支援サービス終了直後に、移行期間を大幅に前倒しせざるを得ない状況が発生した。

「会社全体のシステムとデータベースをクラウドに全面移行する方針が決まり、それと足並みをそろえることになったのです。ゴールは1年以上も前倒しとなり、2025年3月までに移行を完了せざるを得ない状況となりました」(于氏)

そんな状況のころ、2024年10月に「Oracle Database@Azure」の日本リージョンでのサービス提供開始が発表された。最終的に于氏は、移行先としてOCIではなく「Oracle Database@Azure」を選定した。

「完了時期が1年以上前倒しされても、『Oracle Database@Azure』上の『Oracle Exadata Database Service』なら、オンプレミスで運用していたExadataを、ほぼ全面的に移行できるため、十分に間に合うと判断しました。しかも、他のクラウドサービスにデータベース基盤を移行させるのと比べ、技術的なハードルが低く、圧倒的に短い期間で移行を完了させることができます」と于氏は説明する。

加えて、アステラス製薬はクラウド化の一環として全社のアプリケーションサーバをAzureに移行する取り組みを進めていた。そのため、「Oracle Database@Azure」で同じAzure上にExadataがあれば、ネットワーク遅延リスクが大幅に低減できると考えたのだ。

ずか2カ月弱で移行が完了
生成AIの活用なども模索

こうして、「Oracle Database@Azure」への移行作業は2024年12月にスタート。それからわずか2カ月弱で移行作業は完了した。諸々の調整を経て、オンプレミスから「Oracle Database@Azure」への全面移行を実施したのは2025年2月。前倒しされたゴール設定を1カ月近く早めることができた。

これほどスピーディに移行作業が完了したのは、Oracle Databaseに精通しているパートナー企業が作業を請け負ったことも大きかった。具体的には、40以上ものデータベースそれぞれの特性に合わせて、Data Guardによるレプリケーション、バックアップ&リストア、PDBのコールド・クローンやリフレッシュ可能クローンなど、様々な移行方法が実施されたという。

「『Oracle Database@Azure』は、日本では2024年10月にリリースされたばかりなので、移行作業の経験が豊富なパートナー企業はそれほど多くありません。その点、この会社は先行してリリースされた米国で経験を積んでいるので、安心して任せることができました」と于氏は振り返る。

また、オラクルが「OCLS」で評価した移行上の課題などのデータを提供したことも、短期間での作業完了につながったようだ。

移行作業においては、于氏自身もかなり奮闘した。

「オンプレミスから『Oracle Database@Azure』への切り替え作業を行う際、一時的にシステムが利用できなくなるダウンタイムが生じます。そのスケジュール調整のため、米国、アジア、欧州と、時差がある世界中のユーザーたちと打ち合わせをするのが大変でしたね。お互い、体の負担にならないように時間帯を調整しながらオンライン会議で打ち合わせを実施しました」(于氏)

製薬工場のシステムなどは、あらかじめ決まっている生産計画を止めないようにダウンタイムを設定しなければならない。「40以上ものシステムがあるので、それぞれを利用する部門ごとの状況に合わせてスケジュール調整を行うのが大変でした。おかげで移行作業の経験を蓄えられたのは、とてもありがたい機会だったと思います」と于氏は語る。

于氏は、オンプレミスから「Oracle Database@Azure」への移行によって、これまで以上にExadataの性能や可用性が高まることを期待している。運用コストについても、従来比で今後5年間で30%のTCO(総所有コスト)削減効果を見込んでいるという。

「まだ移行して間もないですが、ユーザーからはとくにクレームなどは届いていません。不満なく、今まで通りに使えていることが何よりの成果だと思います。今後は、ExadataがAzure上で運用できるメリットを生かし、膨大なデータを使った生成AIの活用など、新しい使い道もいろいろ模索していきたい」と、于氏は抱負を語った。

「Oracle Database@Azure」の構成図
アステラス製薬が研究開発および製造関連システムのデータベース基盤(Exadata)の移行先として選定した「Oracle Database@Azure」の構成図。バックアップは、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)の東京リージョンに保管される構成となっている。