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デジタル変⾰の新たな伴⾛者 ベトナムIT産業の底⼒デジタル変⾰の新たな伴⾛者 ベトナムIT産業の底⼒
Vol.11 FUJINET SYSTEMS JOINT STOCK COMPANY

「顧客が新たな顧客を呼ぶ」ベトナムIT企業FUJINET
業務ノウハウと責任感を武器に信頼獲得、「AIで日本企業を強く」

より上流の工程も
受注していく

——今後オフショア開発について、どのような業種に力を入れていくお考えでしょうか。

フォン:業種については公共系の大型案件の受注を見込んでおり、しっかり対応したいと考えています。

 通常当社を含むベトナムのオフショア開発会社は、詳細設計の工程から受注することがほとんどです。しかしこの案件ではお客様の側で、基本設計に関わる人員が足りていないということなので、より上流の基本設計から関わらせていただくことになっています。

 当社は10年以上、このお客様のシステムの保守・運用を手掛けており、業務ノウハウを身に付けてきました。今回の基本設計に、このノウハウを生かすことができます。

 約2年間のプロジェクトになる計画で、当社から基本設計に20人ほど、詳細設計以下の工程に60〜70人が参加する見込みです。

 日本では他の案件でも同様に、基本設計の人手不足が問題になりつつあります。当社が業務ノウハウを持っている分野であれば、基本設計にも商機があるのではないかと考えています。

グエン・ダン・フォン氏
FUJINET SYSTEMS JOINT STOCK COMPANY
CEO(最高経営責任者)
グエン・ダン・フォン

——技術分野については、どの領域に注力しますか。

フォン:AI(人工知能)のR&D(研究開発)組織を2017年に立ち上げ、研究に力を入れてきました。ベトナムトップ4の大学教授の方にお願いして技術顧問に就いてもらっており、毎年優秀な学生を紹介していただいて、採用しています。2022年からは、日本のAI関連の案件も受注しています。

 R&D組織のメンバーは今20人ほどで、少しずつ拡大しているところです。世界のAIトレンドに沿った中長期的な研究と、日本の案件での活用を見据えた実践的な対応の両方に取り組んでいます。プロジェクトを担当する技術者に、AIスキルを教育する役割も担っています。

——AIの中でも、特にこういった分野に強い、といったことはありますか。

フォン:画像・音声の分析や生成AIなどです。画像分析の適用例としては不妊治療があります。体外受精における受精卵の育成過程の画像をAIで分析し、受精卵のスコアを算出します。不妊治療の機器で世界的に高いシェアを持つ日本のメーカーがあり、当社はその機器が搭載するAIモデルの開発を手掛けています。

 生成AIについては、会議で議事録を自動作成するツールを開発しました。どの会社の誰がどんな発言をしたのかといったことや、全体の内容の整理・要約、複数言語の翻訳などが可能です。

 このツールを特に重宝するのが、日本企業とベトナムのオフショア委託先の会議だと思います。それぞれの発言を翻訳したうえで整理できますし、専門性の高い言葉を事前に設定することで認識の精度がさらに高まります。繰り返し使うことでも精度は上がっていきます。

 外部のオープンな生成AIを使うことも可能ですが、機密性の高い情報であればそういったツールで扱いたくないケースも多くあると思います。ですから、日本とベトナムのオフショアで利用したいという需要はあるのではないかと考えています。

——ほかにR&D組織で開発した技術などがあれば教えてください。

フォン:当社のお客様に「触覚センサー」という珍しいセンサーを開発している企業があります。スポーツシューズにこの触覚センサーを組み込み、スマートシューズとして提供されています。スマートシューズを履いて歩いたり走ったりすると、力がどこにどれだけ、どの方向に向けてかかっているかをセンサーが感知し、データを収集します。このデータを使って、例えばゴルフでハンデがシングルに達しているプレイヤーが何故優れたスコアを出せるのか、といったことを分析します。

 通常、歩いたり走ったりした際の圧力のデータを取得する場合、床にセンサーを埋め込みます。ただし、この方法は多額のコストがかかります。当社は、お客様が開発した触覚センサーが取得する大量のデータを解析するプログラムや、関連するソフトウエアの開発を担当しました。ただ開発を受託しただけではなく、データの扱いなど技術的なことについても助言させていただいたことで、お客様に高くご評価いただくことができました。

——このインタビューには、SUNBOW株式会社で経営コンサルタントをされている宮本知典様にも参加いただいています。FUJINETと共同で日本企業の案件を複数手掛けられたそうですが、FUJINETをどのように評価していますか。

宮本 知典氏
SUNBOW株式会社
代表取締役
宮本 知典

宮本:私は先ほどフォンさんがお話された医療機器メーカー様から経営コンサルティングをご依頼いただいており、システム構築に関してはFUJINET様と共同で取り組ませていただいています。

 FUJINET様に構築いただいた不妊治療の画像分析AIは現在、判定の精度が90%を超えています。この案件は、他の日本のITベンダーが作ったソフトの開発をFUJINET様に引き継いでいただいた形です。FUJINET様に関わっていただく前の判定の精度が70%程度でしたので、FUJINET様のAIの精度がいかに高いかお分かりいただけるかと思います。これから半年程度で90%台後半まで伸ばせる手応えも掴んでいます。AIの判定精度が高いだけではなく、解析のスピードも早く、当初のAIモデルの10分の1の時間で解析ができるようになりました。

 FUJINET様と最初にご一緒したのは6〜7年前で、前に勤めていた会社で手掛けた案件でした。建築業向けの複雑な計算を伴う省エネプログラムを作る必要があり、人づてにFUJINET様をご紹介いただきました。FUJINET様は日本の建築業に関する業務知識をお持ちでなかったので、「かなり苦労されるのでは」と心配していました。しかしFUJINET様は難なくプログラムを構築されたので、とても感心しました。

 それからいろいろな案件でこちらからFUJINET様にお声がけし、プロジェクトに加わっていただくようになりました。ある弁護士事務所様向けの案件や、先ほどの医療機器メーカー様の案件もこういった形です。

 ある日本企業様の案件でシステムの誤作動に悩んでいた際には、日本の大手IT企業が開発したプログラムのソースコードからFUJINET様がいち早くバグを見つけてくれたことがありました。不具合による、見えない経営コストを削減できたのです。FUJINET様の技術力の高さや仕事に対する姿勢の素晴らしさを改めて感じました。

様々な企業と付き合い、
堅実に成長したい

——今後注力する技術や、注目しているテクノロジーを教えてください。

フォン:AIやクラウドは既に多くの注目を集めていますが、オフショア開発においてはまだ活用が少ないと感じています。特に公共や金融などの分野でお客様の課題解決に役立つと思うので、もっと活用していきたいです。

 これからも技術研究と課題解決の両立を重視し、お客様の期待を超える提案力を身に付けたいと考えています。今朝も新入社員に、「日本のお客様からいただいたお金があなたたちの給料になることを意識してください」「日本にも中国にもITベンダーがある中で、何故ベトナムのFUJINETを選んでいただいているのか考えてください」と伝えました。

 私たちはお客様の信頼に感謝し、それに応える責任があると考えています。品質や納期を守ることに加え、お客様に満足していただくことが大切です。お客様に定期的なアンケートにお答えいただいており、顧客満足度を定量化して、推移を常にチェックしています。

 顧客満足度を高めるには、お客様に頼まれた通りに作る、正確に仕様書を書くというだけでなく、「こうしたらもっと良くなりませんか」とご提案する意識を持つ必要があります。お客様が期待する以上の成果を出さないと、満足してはいただけないということです。これは当社の新人社員だけでなく、中堅社員も皆意識していることです。

——最近、ベトナムIT企業と日本企業による資本提携などの動きが活発です。このような動きをどう評価していますか。

フォン:これまで25年事業を展開してきて、様々な日本のお客様にお付き合いいただき、勉強させていただけたことは当社の大きな財産になっています。

 当社の株式は、最も長年にわたりご支援をいただいているお取引先の内田洋行様に10%の持ち分をご提供しておりますが、今後これ以上は、他社様からの出資をお受けしないつもりでおります。その理由は経営の独立性を保つことで、しがらみなく様々な企業様とお付き合いしたいと考えているためです。

 最近はベトナムIT企業が特定日本企業の出資を受け、傘下に入るなどのケースが増えています。そうなってしまうと、親会社のライバルの企業からは受注がしにくくなってしまいます。

 私たちはそういった形ではなく、様々なお客様とのお付き合いを続けていきたいのです。勉強になりますし、楽しさもあります。誠実にご対応することで長期的な関係を築いていくこともできます。

 日本からの出資を受けたベトナムIT企業について、成長を急ぎ過ぎだと感じることもあります。成長を急いだ結果、人材の育成などが追い付かず、衰退していった同業者を多く見てきました。そのため当社は堅実、安定的に成長したいと考えておりまして、最大でも売り上げは前年比20%増以内にとどめたいと考えています。

 将来の発展へ向けた3本柱にとして、「日本向けオフショア」、「AIやクラウドなどの新技術」、「日本企業と共同でベトナムをはじめとしたアジア市場の開拓」を設定しています。オフショアや新技術開発で実績を積み、アジア市場におけるDX需要の増加に対応する実力を身に付け、十分な人材リソースを蓄えていきたいと思います。

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