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モダナイゼーションはDXの「前提条件」
Q.モダナイゼーションの定義を改めてお聞かせください。
桔梗原 モダナイゼーションとは、システムやアプリケーションを最新の技術で更新することです。ただ単に新しくするだけではなく、現行システムの構造を根本から見直し、これまで蓄積してきた情報資産を統合して自在に活用できる形に変えることがポイントになります。似た言葉に「マイグレーション」がありますが、こちらは現行システムの構造は変えず、利用環境の変化に合わせてデータや仕組みを移すイメージです。
モダナイゼーションが必要な理由は、大きく3つあります。第一に、老朽化したシステムは運用・保守コストが膨らみやすいこと。第二に、古い技術を保守できる人材が減ってきていること。第三に、現状ではセキュリティ面で脆弱性を抱えやすいことです。ただ私は、リスク回避だけでモダナイゼーションを語るものではないと思っています。モダナイゼーションは目的ではなく、その先のDXにつなげるための「前提条件」としてとらえるべき存在です。


Q.中小企業におけるモダナイゼーションの状況を教えてください。
桔梗原 モダナイゼーションは、大企業も中小企業も企業規模に関係なく必要な取り組みです。実はレガシーシステム(古い技術を使って作られたシステム)の残存割合だけを見ると、大企業の方が多いと言われています。大企業は歴史が長く、大規模で複雑な基幹システムを使っています。変えるとなるとコストも時間も莫大になるため、なかなか動けないのです。
問題はDXの取り組み状況です。中小企業はチャンスがあるのに手を付け切れていない状態が目立ちます。経済産業省所管の独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)の調査レポート『DX動向2025』によると、全社的にDXに取り組んでいる割合が、従業員1001人以上で57.7%に対し、101~300人は26.7%、100人以下は15.2%でした。DXが進んでいないということは当然、前提となるモダナイゼーションもまだこれからと言えるでしょう。
中小企業における成功事例でいうと、メディアにも取り上げられていますが、福島県喜多方市の精密機械部品メーカー、マツモトプレシジョンの取り組みが象徴的です。社長がDXの重要性を強く意識し、2021年に「企業価値を高め、社員の給与を毎年上げ続ける」と宣言して、モダナイゼーションとDXに踏み切りました。それまで基幹システムはあっても、部門ごとに分断され、現場では表計算ソフトと手書き台帳が混在し、製品別の原価や利益がつかめない運用をしていました。そこで同社はシステムの刷新により各部門のデータ収集作業時間を大幅に削減しつつ、顧客との売価交渉の裏付けとなる理論値を出せるようにしたのです。営業利益率が改善し、社員の給与も上がりました。
Q.モダナイゼーションを先延ばしにすると、どんなリスクがありますか?
桔梗原 一番大きいのはDX推進の停滞です。加えて、取引の消滅リスク、サプライチェーンを狙うサイバー攻撃の踏み台化、さらに若手の人材離れまで起こり得ます。リスクは減らず、複合的な負債として積み上がってしまうかもしれません。こうした結果、経営面で大きな損害を被る可能性があります。これが現実です。
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