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勤務データをリアルタイムに把握

定番土産から高級ギフトまで、お菓子という分野に特化し、16の子会社を持ち、増収増益を続ける東証一部上場企業である寿スピリッツは「褒める」というユニークな経営手法と徹底した理念の実践で業績を伸ばしている。そのグループ企業であり、洋菓子ブランドの「ルタオ」を展開するケイシイシイは、シフトが提供するSaaS型勤怠管理ソリューションの「勤給解決」を導入して、ペーパーレスでリアルタイムの勤怠管理を実現した。なぜ同社が勤給解決を導入し、どんな効果が出ているのか。ケイシイシイ 総務人事課の番場綾香氏と鎌田将裕氏に話を聞いた。

事業の拡大に伴い労務管理が課題に

番場 綾香 氏
株式会社ケイシイシイ
総務人事課
総務人事チーム リーダー
番場 綾香 氏

 ケイシイシイは1996年の設立以来、「喜びを創り、喜びを提供する」という理念の基、北海道土産として冷凍チーズケーキを製造して販売し、寿スピリッツグループの中核企業にまで成長した。

 同社のメインブランドである「小樽洋菓子舗ルタオ」は北海道の洋菓子のトップブランドとして知られ、2013年度に本州に初めて新ブランドの店舗展開をし、2018年にはさらに3つの新ブランドを立ち上げ、今年度も店舗数を増やしている。

 急成長を続ける同社には、店舗数の増加に伴う人員増加が特に大きな課題であった。管理体制が事業の急拡大に追いついていなかったのだ。「従業員の約半数の400名は店舗で販売に従事し、工場では約300名が製造に取り組んでいます。PCを持ち込めないワーキングスペースも多く、思うような労務管理ができていませんでした」とケイシイシイ 総務人事課 総務人事チーム リーダー 番場綾香氏は話す。

鎌田 将裕 氏
株式会社ケイシイシイ
総務人事課
総務人事チーム
鎌田 将裕 氏

 従業員をマネジメントする管理職にも課題があった。同チームの鎌田将裕氏は「従業員が毎年100名ずつ増えるなかで、管理職の意識レベルの向上が求められていました。とくに労務管理はルールも複雑で、現場でのマネジメントが徹底できないという危機感を持っていました」と語る。

 事業拠点が拡大するなど組織が大きくなる一方で、勤怠管理は相変わらず紙ベースで行われ、人事総務と勤怠担当者の負荷は増大していた。さらに、有給休暇の取得促進、時間外労働の徹底管理など働き方に関連した課題も山積していた。

 鎌田氏は「月に2回から3回のペースで現場から勤務データの書類を回収して集計していました。そのための現状把握が10日くらい遅れ、残業の上限が近づいている場合に注意を促したり、連続勤務が続いている場合に警告したりすることがリアルタイムにできていませんでした」と当時同社が抱えていた労務管理上のリスクを指摘する。

柔軟性の高さを評価して
「勤給解決」を導入

 労務管理上の課題解決に向けて同社では「紙をなくすこと」と「リアルタイムで管理できること」の2つをシステム導入の目標に掲げて、勤怠管理システムの導入の検討を開始した。2016年の春頃のことだ。このとき、有力候補の1つにあがったのが、シフトが提供する「勤給解決」だった。

 勤給解決は勤怠管理ソフトと独自開発の認証システム「カメレオンコード」をセットにしたSaaS(Software as a Service)で、富士通クラウド「FUJITSU Cloud Service for OSS」の上で稼働している。インターネット回線さえあればどこでも利用でき、初期投資も不要。「カメレオンコード」をかざすだけで瞬時に出退勤の打刻ができ、Webカメラでなりすましも防止。また、スマホや携帯電話からも勤務時間を打刻できる。

 「勤給解決は、すでにグループ企業2社に導入されていてイメージはわかっていましたが、改めて他の2社の勤怠管理ソリューションと比較検討して選定しました。決め手となったのは、独自の手当の仕組みをシステムに反映できることでした」と番場氏。

 例えば、お菓子をつくる過程においては特別手当が出る場合があるが、こうしたケイシイシイ独自の手当の処理も勤給解決なら自動化できる。「システムを何もないところからプログラミングして制作するのは面倒ですが、勤給解決であれば設定の変更などで柔軟に対応できます。これは大きなポイントでした」と番場氏は評価する。

 また、百貨店の催事イベントなどへの出店を担当し、社外で活動する営業スタッフがどこにいても携帯電話やパソコンで勤務時間を打刻できる点も大きなポイントだった。GPSで場所も登録されるので不正打刻を防ぐこともできる。番場氏は「不正行為をする気にさせないシステムであることは重要だと思います」と語る。

シフトの独自開発の認証システム「カメレオンコード」
シフトの独自開発の認証システム「カメレオンコード」
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「勤給解決」は、社外で活動する営業スタッフが携帯電話やスマホで勤務時間を打刻できる
「勤給解決」は、社外で活動する営業スタッフが携帯電話やスマホで勤務時間を打刻できる
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管理が楽になり
従業員の意識にも変化が

 従業員全員が対象となるシステムだけに、実際の導入は慎重に進められた。まず2017年1月から3カ月間、札幌と千歳の店舗と工場の3カ所でテスト導入し、目論見どおり使えることを確認し、そのうえで全社に一斉に導入されることになった。

 鎌田氏は「テスト導入で機能を確認しながら、2017年4月から仮稼働させて、1カ月かけて東京、千葉、札幌、小樽などで管理者や担当者向けに説明会を実施しました。本稼働させたのは2017年9月からです」と導入のプロセスを説明する。

 導入効果は期待どおりすぐに現れた。紙を介在させることなく、リアルタイムで勤務データを収集できるようになり、一人ひとりの残業時間が把握できて、上限を超えそうな場合には、自動で管理者にアラームが送られるようになった。人事総務の負荷は大幅に削減され、現場の管理職もクリックひとつで勤務状況が把握できる。

 しかし、メリットがあったのは管理側だけではない。従業員の働き方にも変化が現れた。「有給日数は人事総務が管理していて、従業員が知りたいときは問い合わせしなければなりませんでしたが、今では自分で確認できます。確認のハードルが下がることで、計画的に有給を取得しやすくなりました」と番場氏は変化を指摘する。

 残業時間についての意識も変わってきた。自分の勤務データを見るようになって、残業時間数が毎回わかり、イレギュラーなシフトなどにも疑問を持つようになった。「こうした意識付けがされることが働き方を改善する原動力になっていきます」と鎌田氏は働き方改革に対する意識の変化の重要性を強調する。

 今年同社は「リフレッシュ5(ファイブ)」というチャレンジテーマを掲げた。「年に一度は5連休をとることを目標にしました。意識の変化がベースにあって生まれてきたチャレンジです。これも大きな成果です」(鎌田氏)。

「勤給解決」のシステム画面
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「勤給解決」のシステム画面

今後の成果を
グループ企業にもアピール

新妻 宗人 氏
株式会社シフト
営業部
リーダー
新妻 宗人 氏

 「グループの経営信条の一つである“物心両面の豊かさを実現する”には、会社以外の時間も大切です。勤給解決の導入はその礎になるものです。今後は有給の時間単位での取得といった、より従業員に寄り添った施策を実行していきます」と番場氏は話す。

 同社は毎年従業員満足度調査を行っており、そこで様々な要望も上がってくる。連続休暇もその1つであり、時間単位での有給の取得も同様だ。柔軟に対応できるシステムがあるからこそ、そうした要望にも対応できる。

 また同社の取り組みはグループ企業への広がりも期待できる。それぞれ高い独立性を持って運営されているが、お互いの成果を共有し合うという社風はグループ全体に浸透している。グループ各社の担当者が定期的に情報を共有する場もある。

 「有給休暇の取得など、勤給解決を活用して成果が上がっていることは積極的にアピールしていきたいですね。それによってグループ全体に貢献できれば良いと考えています」と鎌田氏は語る。

 今後出番が増えそうな勤給解決だが、提供元のシフトでも対象領域の拡大に前向きに取り組んでいる。シフト 営業部 リーダー 新妻宗人氏は「労務管理だけでなく、勤怠に関連して派生する課題は、当社のソリューションだけでは解決できません。そこでWebAPIを作って公開することで、他社のシステムとの連携をとれるようにしています」と話す。

 シフトは富士通が運営する開発者コミュニティ「Fujitsu Tech Talk」の参加企業の一社であり、関連するソリューションを提供している企業も多く参加している。新妻氏は「現在、Fujitsu Tech Talkを通して知り合った企業と一緒に、勤給解決と工数管理を連携させるサービスを開発しています。これからも、より働き方改革に繋がるサービスを提供していきたいですね」と今後の展望を語る。

 開発者コミュニティ「Fujitsu Tech Talk」で生み出された新たな付加価値が備わった勤給解決が、ケイシイシイだけでなく、寿スピリッツグループ全体の成長に寄与することになるかもしれない。

企業紹介
ルタオ本店
  • 寿スピリッツグループ株式会社ケイシイシイ
  • 創業1996年4月
  • 本社住所北海道千歳市泉沢1007番地90
  • 資本金8000万円
  • 代表者代表取締役 河越誠剛
  • 事業内容菓子製造事業、卸売事業、小売事業(店舗及びカフェの運営)、通信販売事業
  • URLhttps://kcc-co.jp/
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