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医師が推奨するオンライン診療サービスとは

日本人の死因の半数以上を占めると言われている生活習慣病。食事、運動、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣がその発症や進行に関与する病気のことで、発症すると糖尿病、脳卒中、心筋梗塞などの深刻な事態に陥る可能性が高まる。戦略的に実践する「健康経営」の意識が高まるなか、企業は生活習慣病に対してどのような対策を講じるべきだろうか。循環器内科および総合内科の専門医として生活習慣病の指導でも豊富な経験を持つ自治医科大学の梅本富士氏に話を聞いた。

生活習慣病対策に効く専門家との情報共有

梅本富士 氏
自治医科大学 講師
総合医学I・循環器内科・総合内科専門医 医学博士
梅本富士

 「疾病の発症は、その人の体質や環境要因、そして生活習慣が複合的に影響し合って起こります」と梅本氏は発症のメカニズムから解き明かす。例えば、血圧の高い人が運動もせずに塩分をたくさん摂れば脳卒中で倒れることもある。逆に適度に運動をして塩分を控えた食事をしていれば発症しないかもしれない。

 がんも同じだ。刺激性の高いものを好んで食べれば食道がんになりやすく、肉ばかりを食べていれば、腸内の環境が変わり腸の細胞のがん化リスクを上げる。食事内容を含めた適正な生活習慣を維持することが、病気の発症や予防に関係していることは明らかとなっている。

 しかし、問題は生活習慣が悪いからといって肥満や高血圧の人がただちに重篤な病気に陥るわけではないことだ。余命宣告とは異なり、いつまでにどうなるということではないため、真剣に取り組もうとしないケースが多くみられる。

 梅本氏は、適正な生活習慣を維持するためのポイントを2つ挙げる。「1つは自身の努力、やはり努力しないと人間は変わりません。常にアンテナを張って健康に関する情報を入手し、自分なりに噛み砕いて、自身にとって有益なものを取捨選択する癖をつける必要があります」(梅本氏)

 もう1つは、医師や看護師、薬剤師といった専門家と情報を共有し、適切なアドバイスを受けること。専門家と接触する機会を意識して増やすことだ。その基本となる機会が「健康診断」である。

梅本富士 氏
「対応方法が体質や深刻度などによって異なるため、テーラーメイドの診療が求められます。そのため、医療の専門家とコンタクトすることが大事です」

 しかし、健康診断の結果で「再検査」の指示を受けているにもかかわらず、5人に1人がスルーしているというアンケート調査データもある。その原因はいくつか考えられる。健康に対する意識の低さ、自分で治せるという思い込み、同じような内容を指摘されることへの慣れなどだ。

 「厄介なのは、生活習慣病には『痛い』『つらい』『苦しい』といった症状がないことです。ただ、本人は大丈夫と思っていても身体には負担がかかっています。ここに大きな意識の乖離があります。しかも、生活習慣への対応方法が体質や深刻度などによって異なるため、テーラーメイドの診療が求められます。そのため、医療の専門家とコンタクトすることが大事です」と梅本氏は語る。

個々に対応することで行動変容を促していく

 しかし、医療の専門家とのコンタクトを促す前に改善しなければならない問題がある。 それは、再検査の指示さえもスルーしてしまう人たちのモチベーションをどのようにして高めるかだ。梅本氏は「これまでの医療は病気の発見と治療に重きを置いたものであり、患者さんの健康につながる行動変容を促すという面での取り組みは遅れていました」と現状を指摘しつつ、その改善につながる新たな動きを紹介する。

 その1つが世界保健機関(WHO)の「ウェルビーイング」という考え方だ。「ヒトの健康度を病気かそうでないか、でみるのではなく、患者さんが身体的、精神的、社会的にハッピーかどうかという評価の新しい切り口を提唱したもので、健康問題の切実さによって対応を分けていきます。例えば、40代半ば以上の方なら血圧が高ければ、身近に迫った健康問題を諭していけば本人の意識改善や治療の継続にもつながりやすいでしょう。しかし20代の方ならたとえ健診で血圧が高くなりそうな生活習慣が指摘されても、血圧の合併症から説くのでは実感が湧かず有益ではありませんが、レジャーやスポーツなど本人が楽しめることで汗をかくことを勧めれば、それが高血圧対策にもなるというものです」と梅本氏。健診のデータで指摘された健康問題を、本人の立場で取り組みやすい形で改善策を提供する、このようなアプローチの仕方は、今後の広がりが期待されているという。

 もう1つはオンライン診療サービスの広がりだ。ICTの活用で、医療機関に出向かずに診察が受けられれば、生活習慣病予防のための医療の専門家との情報共有を手軽に実現することができる。

 オンライン診療サービスのメリットについて梅本氏は「医療の専門家にコンタクトするハードルを下げて行動変容を促すことにつながる」という。「これまでは本人が意識して医療機関に足を運ばなければなりませんでした。しかし、大病院での診療などでは、3時間待って診療は3分などと揶揄(やゆ)されるケースもありました。オンライン診療ならばそのハードルが下がります」と梅本氏は話す。

 オンライン診療サービスの普及で特に恩恵を受けるのは、働き盛りで時間がとれないビジネスパーソンだろう。梅本氏も「30代、40代の社会の中核として働いている人でも、すでに病気を患っていたり、発症する可能性が高い人もいます。多忙のため病院に行く時間がとりにくいこうした人たちの光明となるのがオンライン診療です。うまく活用されれば社会全体にとって大きくプラスになると思います」と評価する。

 しかも、オンライン診療ならば生活習慣病予防に欠かせないきめ細かなテーラーメイドの診療もできる。「血圧や体重、食事量、運動量といったデータを患者さんからダイレクトに受け取ることができます。さらにテレビ電話の表情やしぐさ、話し方、顔色などで診療上の様々な情報を得ることができます」と梅本氏はメリットを挙げる。

スマホを使って対面指導のように指導を受けることができる
MEDICALLYイメージスクリーンショット
オンライン診療ならば生活習慣病予防に欠かせないきめ細かなテーラーメイドの診療が可能になる

オンライン診療サービスの導入で健康経営を推進

MEDICALLY(メディカリー)
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メドケアの
健康経営推進サービス「MEDICALLY(メディカリー)」
https://www.medically.com/

 梅本氏が自信を持ってオンライン診療サービスのメリットについて語れるのは、梅本氏自身がオンライン診療サービスを提供するメドケアの顧問としてオンライン診療に携わってきたからだ。同社の代表者も現役の医師であり、経営する医療法人と連携しながら、健康維持、セルフケア、保健指導、医療などの各ステージに対応した予防、治療サービスを一貫して提供している。

 メドケアの健康経営推進サービス「MEDICALLY(メディカリー)」について梅本氏は、「患者さんからは『待ち時間がない』『スマホで手軽にできる』と喜ばれており、非常に効果があると実感しています」とオンライン診療のメリットを評価。同社のサービスはすでに70以上の健康保険組合や地方自治体で利用されており、特定保健指導の完了率は98.6%(※)、禁煙外来の禁煙達成率も89.0%(※)と驚異的な成果を上げている。

 「高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣に関連する診断は、オンライン診療でも通常の医療機関に比べレベルが下がらないよう工夫をしています。検査キットを送付することにより、血糖、脂質値、尿酸値、肝機能といった血液データを入手することもできます。年に一度程度の間隔で病院に行っていただき、放射線画像や心電図や超音波などを記録してきてもらうこと、健診や人間ドックの結果なども織り交ぜながら診察しますと、通常の診療はもちろん、合併症の診断も可能です」(梅本氏)

 ただし、あらゆる病気がオンライン診療に向いているわけではない。呼吸器系や消化器系のように、聴診器を胸にあてたり、触診しなければならない病気の診察は今のところ難しい。「オンライン診療を万能のツールと思わずに、使い分けることが大事」と梅本氏は指摘する。使い分けを考えることで、健康に対する意識が高まるという副次的な効果も見込めそうだ。

 こうしたオンライン診療サービスを活用している企業は、健康経営に対する意欲も高いと考えられる。梅本氏も、経済産業省が推進する「健康経営優良法人」や「ホワイト500」などが健康経営への関心を高めたことは認めつつも、「認定されることが目的になってしまうことを心配しています。本当に大事なのは、従業員を健康にするために健康診断をしてデータを得たあと、そのデータを有効活用する次のアプローチ、ステップをどうするかということです」と話す。オンライン診療サービスの活用は、次のステップの具体策の1つといえるだろう。

※ メドケアの調べによる(2019年7月1日時点で各プログラム終了者のみ集計)

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