サブスクの本質を知ることが
ビジネス成功への第一歩

IT機器や計測機器のレンタル事業と、IT機器に特化したシステム事業を展開する横河レンタ・リース。同社は、シェアリングエコノミー市場の拡大など「所有から利用する時代へ」のシフトを、追い風ではなく危機と捉えている。ハードウエアのコモディティ化が進み、性能が横並びになりつつある中、モノを中心とする従来型ビジネスモデルでは厳しい価格競争を戦うことになり、さらなる成長が難しくなるからだ。同社は、お客様の課題を解決する新たな価値を生み出すサービスを創造することで収益拡大を目指す戦略転換を図っている。

同社では、製品やサービスを継続的に利用することで収益を上げるサブスクリプション型ビジネスを重点テーマに掲げている。その一環として力を注いでいるのが、PCなどのデバイスをサービスとして提供する DaaS ( Device as a Service )である。

横河レンタ・リース株式会社
事業統括本部
ソフトウェア&サービス事業部長 松尾 太輔 氏

IT人材不足への対応、働き方改革推進など経営課題を解決する手段として、さまざまな形態のDaaSが続々とリリースされている。「月額にしただけ、ソリューションをまとめただけ、サポートサービスが含まれているだけといった、従来型デバイスビジネスの枠を超えないDaaSでは意味がありません。それでは、今の課題に対応しきれないと思います。」と横河レンタ・リース 事業統括本部 ソフトウエア&サービス事業部長 松尾太輔氏は指摘し説明する。

「レンタルは、モノを効率的に利用するための優れた手段です。期間内に、月額で利用するだけであればレンタルが最適です。一方、サブスクリプション型DaaSの真価は、“ as a Service (サービス化)”にあります。購入直後から価値が減少するモノに対し、サブスクリプションは顧客に新たな体験を提供することで、価値の向上を図っていきます。別の見方をすれば、継続的に新しい価値が提供されるからこそ、継続的に月額で料金を支払うのです。サブスクリプションの本質を知ることが、サブスクビジネス成功への第一歩となります」

クラウドによりソフトウエアの機能を利用する SaaS ( Software as a Service )を例に、DaaSのあるべき姿について松尾氏は話す。「従来のソフトウエアは、管理者がメンテナンスを行い、ライフサイクルの管理を行っていました。 SaaS は、アップデートなどソフトウエアのライフサイクル管理がクラウド側で実施されます。管理作業負荷の最小化とユーザーエクスペリエンス(体験)の継続的向上という SaaS の目指すゴールは、 DaaS も同様です」

ソフトウェアを対象とするSaaSに比べ、デバイスというハードウェアを扱う DaaS でいかに“ as a Service ”を実現していくか。新しいビジネスモデルの創造は既成概念への挑戦となった。

PCライフサイクルを管理者中心から
利用者中心に変える

ユーザーが継続して新たな体験を得るためには、「運用された状態のデバイスをサービスとして提供する」ことが求められる。従来、モノとしてPCを選定して、セットアップし、利用者たる従業員に配り、定期的に更新(リプレース)するいわゆるライフサイクルの運用を管理者は行っていた。このライフサイクルの運用は、管理者にとって大きな負担であり、そのため日本のPCの利用期間は、欧米やアジア諸国と比較しても長い平均5.4年にもなる。(日本マイクロソフトの調査より)これでは継続的な新しい体験の提供は、覚束無い。そこで同社では、ユーザーに直接、価値を届けるという”as a Service”の原点に立ち返り、DaaSを定義した。DaaSの提供事業者(サービサー)たる同社が直接、ユーザーに様々なサービスを提供する。これが、真のDaaSであるというわけだ。

「管理者の負担を考えれば、なるべくPCを長く使ってほしいというのは当たり前です。しかし、PCは長く使っても一つも良いことはありません。故障が多くなればダウンタイムが長くなり、ユーザーの生産性を落とすことになります。競合他社がより生産性の高いデバイスで業務を大幅に向上させれば、相対的に自社の競争力を損ねることにもなります。そこでサービサーたる我々が直接、ユーザーにサービスを提供し、リプレースなどの管理者負担をなくせば、継続的な価値の向上が図れると考えました」(松尾氏)

“デバイスのお守り”という面倒な作業から管理者を解放するためには、PCのライフサイクルを管理者中心から利用者中心に変えることが必要だ。「そのためのプラットフォームを開発中です。モノをコト化するということで『Cotoka』と呼んでいます。これにより我々がユーザーに直接、サービスを提供することを可能にします。ユーザーに直接サービスを提供することで、例えばデバイスをわざわざ企業内で1,2種類に絞る必要もありません。ユーザーが好きな、業務に最適なデバイスを選ぶことができます。サポートやリプレースのやり取りも直接行われ、管理者の手を煩わすことはありません。そして必要なソフトウエア含めて、デバイスをサブスクリプションとして提供します。これにより今まで必要なモノを余っていたら使い回し、不足すれば買い足すという資産管理の必要もなくなります。管理者を完全にPCのライフサイクル管理から解放します」(松尾氏)

管理負荷を軽減し、ユーザーにダイレクトかつ継続的に体験を届ける

Cotokaプラットフォームの利用により機種選定も管理者ではなくユーザーになる。ユーザーはポータル画面でPCを選択した上で、設定された予算内でオプションを追加しパーソナライズも行える。働き方、働く環境、働く人の多様化が進む中、管理者がユーザーのニーズに応えるデバイスを提供するのは難しくなっていると松尾氏は話す。

ポータル画面でユーザーが選択したPCは、時期や地域にもよるが、最短で翌日にはユーザーの手元に届くという。セットアップは Windows Autopilot により自動的に行われるため、ユーザーの作業負荷も軽減される。また利用者中心の運用によりPCを長期間にわたり使用するのではなく、適切なタイミングで容易にリプレースできる。

デバイス運用管理では、働き方改革に伴うモバイルワークによるサポート範囲の拡大も課題となっている。 Cotoka プラットフォームでは、いつでもどこでもオンラインサポートによりユーザーは安心して利用できる。また、重大なトラブルはポータル画面から管理者に報告することも可能だ。

従来サービスと比較した同社DaaSにおけるポイント

レンタル事業とシステム事業を
ベースにDaaSの仕組みを構築

利用者中心のPCライフサイクルは、これまで築き上げたレンタル基盤上に DaaS の仕組みを構築したことに加え、システム事業で培った技術力があったからこそ実現できた。同社は、DaaSで提供するPCに独自開発した専用アプリケーションをインストールすることで、PC運用管理の課題解決を図っている。

PCにデータを保存しない Flex Work Place Passage は、データレスPC環境の提供によりセキュリティと利便性の両方を実現する。ローカルHDDを不可視化・書き込み禁止にし、ファイルサーバー上のファイルを自分のデスクトップ上にあるかのように使うことができる点が特徴だ。ユーザーはシーンに合わせてマルチデバイスを利用できる上、ファイル共有による社内外とのコラボレーションも容易となる。またログオフや電源OFFによって消去されるPCのRAMディスク(メモリ)を使ってオフラインでの利用と安全確保を可能にしている。

データレスPCは、パソコンの紛失・故障における情報漏えいやデータ消失の防止はもとより、DaaS運用の重要な要素になるという。「PCで障害が発生した際、ユーザーにまず初期化をお願いし、それでも改善しない場合にはPCを交換します。PC内にデータが存在しないことで、初期化も交換も簡単にできます。またリプレース時も、ユーザーはデータ移行する必要がなく、ログインしなおすだけで新しいPCをすぐに利用できます。体験を向上する速度を上げるためにも重要なことです」(松尾氏)

ユーザーに新たな体験をダイレクトに届ける上で課題となるのは、アップデートが自動化されていないアプリケーションがまだ多いということだ。ユーザーに管理者権限を与えることで運用管理の負荷は軽減されるが、セキュリティリスクが発生する。ユーザーに管理者権限を与えず、アプリケーションのインストールを委ねる Flex Work Place AppSelf は、管理者が許可したアプリケーションのみを、ユーザー自身の操作でインストールすることで管理負荷の軽減とアプリケーションの統制を実現できる。

利用者中心のPCライフサイクルは
SMBのPC利用環境を劇的に変える

これまでにないビジネスモデルといえる同社のDaaSは、2019年12月にプレビューというかたちでスタートし完成度を高めていく予定だ。当初は、SMB(Small and Medium Business、中小企業・中堅企業)を中心に事業を展開していくという。その理由について松尾氏は話す。「SMBのお客様は、社内に情報システム担当者が一人だったり、あるいは一人もいなかったりするケースもあります。当社のDaaSをご利用いただくことで人手をかけることなく、PC環境の統制と標準化を実現し、セキュリティやコンプライアンスの強化が図れます。また常に最新のPC環境を利用できることで従業員の満足度向上が図れる点は、雇用維持の観点でも重要です」

DaaSによる利用者中心のPCライフサイクルはSMBに大きなメリットをもたらす

企業におけるPC運用では管理に手間がかかるにも関わらず、いまだに購入比率が90%にも及ぶという。「SMBのお客様でDaaSの成功体験を積み重ねることにより、大企業のお客様にもDaaSに対する理解と共感が広がっていくと考えています。例えば大企業では、グループ各社を独自に統制するという観点からプライベートDaaSなんて考え方も出てくるかもしれません」(松尾氏)

Cotokaプラットフォームを使ってPCだけでなく、POSレジや監視カメラなどのDaaS事業を展開していきたいと松尾氏は将来の抱負を述べる。「サブスクリプションはサービスに価値を付加して月額定額制にすることが肝となります。提供できる価値を突き詰めていく中でパートナー様との共創も行っていきたいと思っています」

お問い合わせ

横河レンタ・リース
https://www.yrl.com/

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