10月1日の消費税率の引き上げまで、2カ月を切った。今回特に注意が必要なのが軽減税率だ。飲食料品と新聞(週2回以上の定期購読)に軽減税率が適用される。これらを自社商品として扱う企業や大企業を中心に対応は進んでいるものの、それ以外の中堅・中小企業では未着手というところも少なくない。しかし、軽減税率対象費目を取り扱わない事業者を含め、すべての課税事業者が標準税率(10%)と軽減税率(8%)を区分して経理を行うため、事実上すべての企業が対応しなければならない。そこで、現状や制度変更と対応のポイント、利用可能な補助金などについて、中小企業基盤整備機構の前田和彦氏とミロク情報サービス(MJS)の中田千夏氏に聞いた。

いまだ進まぬ中堅・中小企業の消費税率の引き上げ対応

独立行政法人 中小企業基盤整備機構
経営支援部
消費税軽減税率対策費補助金統括室
担当課長(消費税軽減税率対策補助金)
前田 和彦

──10月1日に迫った消費税率の引き上げに対して中堅中小企業の認知や理解をどのように見ておられますか。

前田:軽減税率の認知度や準備状況について2018年11月に政府がとりまとめた調査結果では37%が準備を始めていましたが、52%が検討段階、11%が未定でした。この後首相による消費税率の引き上げ実施の発表などもあり、メディアの報道も増え認知度は高まっていると感じていますが、まだ準備は十分ではないと思います。

準備にもいろいろな段階があって、大きく分けると経営者が何をすべきかを把握するための棚卸、そして会計は多くの企業がシステムを活用しているので、システムベンダーから提案を受けシステムの改修等に取り組む段階です。そういう意味では、システムベンダーの方が実際の現場の状況を把握されているのではないでしょうか。

株式会社ミロク情報サービス
営業本部 営業推進部
製品企画グループ長
副部長
中田 千夏

中田:当社が今年1月から2月にかけて行ったオンラインアンケートで軽減税率への対応について聞いたところ、「進んでいる」という回答がわずか17%でした。残りは「進んでいない」が11%、「なにもしていない」が35%、「まだ検討段階」が28%で、実に7割以上が未着手か着手していても進んでいない状態でした。

調査から半年が過ぎましたが、今現在準備が加速している実感はありません。当社も軽減税率対策補助金やIT導入補助金の指定事業者になっていますが、現状はIT導入補助金の申請の方が圧倒的に多く、軽減税率対策補助金の申請についてはまだまだ少ない状況です。2018年から実施している消費税率の引き上げ対応のセミナーには、1年以上経った今でも多くのお客さまにご参加いただいています。前田さんがおっしゃるように情報収集は積極的に行っているものの、自社の取り組みをどう進めていけば良いか、悩んでおられる企業担当者が多いと感じています。

※ 「企業における消費税など税制改正に関する対応」についての実態調査アンケート(MJSとZDNet Japan)

税率の区分と区分記載請求書等保存方式の理解が進まず

──特にどのあたりの理解が進んでいないとお考えですか。

前田:ポイントは2つあります。まず、軽減税率の対象になるかならないかの区分の判断。そして、消費税を負担するのは消費者で、消費税を申告・納付するのは事業者です。その際の仕入税額控除に対して区分記載請求書等保存方式に対応する請求書の発行が必要です。そこの理解が進んでいないと感じています。

中田:確かに当社のお客さまにおいても、軽減税率の対象になるかならないかについて完全には把握できていないと感じています。

前田:経理業務のシステム化を義務付けているわけではないので、システムの対応が間に合わなければ昔ながらの帳簿をつけて対応すればいい。システムが対応していないからすぐに事業や税務申告ができなくなるということではありません。しかし、システムを活用して効率化を進めているところで手作業の帳簿に戻れるかというと難しい。そこで、対応を加速するための補助金を創設しています。経営者は、これらを見極めて正しい選択をしていただきたい。

ただ、システムを改修することと売り上げが直結しないので、経営者のジャッジが鈍い企業も少なくありません。我々が説明をしてもなかなか響かないという現状もあります。そこはぜひシステムベンダーからシステムを導入・改修する意味、意義、スケールメリット、効率化、今後の事業環境の変化などをご説明いただき、理解を促してほしいですね。

10月1日以降、取引ごとに税率を区分した記帳が必要となる。たとえば以下のようなケースでは税率が異なるため注意が必要だ。

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