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佐川急便の先進的ロジスティクス事例:館内物流

  • ■佐川急便の先進的ロジスティクスのプロジェクトチーム「GOAL」。このGOALが顧客企業の抱える個別の課題を解決するカスタマイズソリューションとして提供するソリューションの一例が、大規模複合施設における館内物流サービスだ。
  • ■施設内のモノの流れに加え、人や車、情報、さらにはエレベーターやトラックバースといった設備などを一元管理することで、周辺の交通渋滞の解消やセキュリティー向上などを実現する。
赤坂インターシティAIR

赤坂インターシティAIR

東京都港区赤坂一丁目に立地する、地下3階、地上38階建て、高さ205メートルの大規模複合ビル。敷地面積約1万6000平方メートル、延べ床面積約17万8000平方メートルで、16社のオフィス、16の店舗、52戸の住宅などが入居。2017年8月に竣工した。

2017年9月29日にグランドオープンした「赤坂インターシティAIR」。新日鉄興和不動産と佐川急便が、施設内の物流を一元管理する館内物流サービスを提供している。円滑な館内物流を、高いレベルのセキュリティーのもとに実現した。

 2017年9月にグランドオープンした「赤坂インターシティAIR」。新日鉄興和不動産が中心となり開発したこの大規模高層ビルは、地上38階建てで、延べ床面積は約18万平方メートル。東京メトロ銀座線・南北線の溜池山王駅に直結しており、16社がオフィスを構え、約1万人が勤務する。店舗や住宅、医療施設、コンファレンス施設なども入居する複合施設だ。

 このビルの館内物流を一元的に担っているのが、佐川急便である。

 館内物流の内容は、宅配便や路線便などの共同集配にとどまらない。

 オフィスや店舗に納品する車両の管理、ビル内の搬入動線の管理、出入りする人の入退館管理、貨物用エレベーターの運行調整など、人・モノ・車・情報・設備を一元的に管理することで、スムーズな搬入出を実現している。大規模ビルにもかかわらず待機車両による周辺道路の渋滞をほとんど発生させず、さらに高レベルのセキュリティーも確保している。

 ビル全体の管理を担う赤坂インターシティマネジメント株式会社のビル管理部に勤務する納章太氏は「竣工後、すぐにシステムの効果を実感しました。複数の物流事業者が施設内を出入りすることがないので、納品車両の混雑解消や各テナントへの安全で効率的な配送を実現できています。またスタッフが常駐しているため、イレギュラーな案件やトラブルへの対応が迅速になり、入居者や物流事業者、テナントにも好評です」と語る。

ビルの計画段階から構築に参画

青木 彌明(ひろあき)氏
佐川急便株式会社
営業開発部 営業開発課 課長
青木 彌明(ひろあき)氏

 佐川急便は、2013年に始まった同ビルの建設プロジェクトに計画段階から参画し、新日鉄興和不動産とともに5年がかりで効率的な館内物流システムを立案してきた。

 佐川急便営業開発部営業開発課の青木彌明課長は「当社は10年ほど前から都心の大規模ビルの館内物流ソリューションを多数提供しています。赤坂インターシティAIRのシステム構築にあたってはその経験を生かし、スムーズな館内物流を実現するため、いくつかの設計変更もお願いしました」と説明する。

 例えば、当初計画のトラックバース数は19だったが、そのままでは周辺道路の交通渋滞を引き起こすとみて、24バースに増設してもらった。とはいえ、地価の高い都心のビルで、理想通りの館内物流インフラを整えることは難しい。

 どのような工夫を施せばスムーズな館内物流が実現できるのか。青木課長率いるファシリティチームは知恵を絞った。

 ビルの規模から考えると、赤坂インターシティAIRには宅配便や食材卸、オフィス関連用品など100社以上に上る事業者が納品に訪れることが予想された。車両数は1日最大200台ほど。しかも多くは午前8~10時に集中する。

 海外便やオフィス用品通販を含む宅配事業者は10社ほどで、これらは共同集配によりほぼドライブスルーで回せる。問題は8割以上を占める、オフィスや店舗への直納事業者の車両だった。

 ビル周辺で渋滞を起こさないためには、バースにおける駐車時間を20分以内に抑える必要がある。このため入館手続きの迅速化とセキュリティーの確保を目的に、納品車両や納品担当者を事前登録制にした。制限時間を守らせるため、一定の時間を超えると駐車料金が発生する仕組みも導入した。

図:物流管理センター
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稼働後も改善を加える

 赤坂インターシティAIRでは、よりスムーズな館内物流を目指して、グランドオープン後も運営の改善と検討は続いている。

 現在、入館手続きは台帳に記入する方式だが、今後、ICカードを活用した、さらに迅速で安全性の高い入退館システムを導入する予定だ。また、使用頻度の高いコピー用紙などを物流センター内に保管し、そこからオフィスに配送することで、オフィス用品通販事業者の納入車両を削減することなども検討しているという。

 管理会社はもちろん、入居テナントや入居者、納品業者の利便性向上につながるソリューションの姿を求めて、青木課長たちの挑戦は続く。

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