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佐川急便の先進的ロジスティクス事例:国際一貫物流

  • ■顧客企業の抱える物流の課題を、先進的なロジスティクスで解決するために組織された、佐川急便の専門家集団「GOAL(GO Advanced Logistics)」。2014年に発足した、この組織が手掛ける物流ソリューションの一つが「スマート・インポート」だ。
  • ■海外の生産拠点から国内の納品先まで、オーダーメードの一貫物流システムを提供する。今回は、顧客企業と共にバリューチェーンの最適化を目指した「スマート・インポート」の先進事例を紹介する。
オンワード樫山

オンワード樫山

1927年創業。数多くのファッションブランドを展開する、日本を代表するアパレル企業。2007年の純粋持株会社体制移行に伴い、旧オンワード樫山はオンワードホールディングスに商号を変更し、アパレル事業部門を現オンワード樫山が継承した。2018年2月期の売上高は1394億円。

トラック輸送用ハンガーラックの導入に加え、遮熱シートを船用コンテナに施すなど、高い品質のまま製品を日本に届けるための工夫を随所にこらしている

 2019年3月、オンワード樫山はベトナムからのアパレル製品調達物流システムを一新した。対象はワンピースやスーツなど、主に百貨店で販売する婦人服。高めのプライスラインの商品群で、生産委託先から店頭までハンガーに掛けたまま配送するため、「ハンガーもの」と呼ばれる。

 ハンガーものはこれまで、10社ほどのベトナムの生産協力工場がそれぞれ物流事業者に委託して日本に輸出。物流センターで検品し、一部は検針もしたうえで店舗別に仕分け、全国の店舗に配送していた。

 新しいシステムでは、各協力工場が検針を行った製品をSG佐川ベトナムの保税倉庫に集約して検品を実施、日本の納入店舗別に仕分けたうえで、2018年新設した「オンワード習志野オペレーションセンター」へ船便で輸送し、同センターから各店舗に配送する。

 オンワード樫山SCM推進室SCM推進本部の山内孝二本部長は「海外工場から店舗までの国際一貫物流により輸送品質が向上し、納期も安定する。コスト削減効果も大きいはず」と期待する。

 新システム導入は、オンワード樫山が進めている物流改革の一環。物流現場の人手不足に対応して全国11カ所のセンターを4カ所に集約し、検品などの省人化のため全商品にICタグ(RFID)を添付するなどの改革を断行してきた。納入会社に任せることの多かった調達物流の見直しにも着手した。

物流作業の多くを海外移管

青木 康弘 氏
佐川急便株式会社
営業開発部 営業開発課 上席課長
青木 康弘

 この新システムの開発に深く関わったのが、佐川急便の先進的ロジスティクスプロジェクトチーム「GOAL」だ。顧客が抱える物流課題の解決を目指し、SGホールディングスグループ横断で組織した専門家集団である。そのGOALが海外調達の利便性向上を図るために提供しているソリューションは「スマート・インポート」と名付けられている。

 発足当時からGOALに所属し、オンワード樫山の新システム開発を担当した佐川急便営業開発部営業開発課の青木康弘上席課長は「佐川急便のトラックで運ぶ荷物の川上までさかのぼって、バリューチェーン全体でどのようなお手伝いができるかを考えました」と話す。

 青木課長らが、長年取引のあったオンワード樫山から国際調達物流に関する課題を聞いたのは2017年のことだった。国内で物流センターの賃料が上昇し、人手不足で人件費も高騰していた。「一気通貫の物流で品質や納期の改善も目指しました」とオンワード樫山の山内本部長は振り返る。こうした課題解決のために青木課長らが提案したのが今回の新システムというわけだ。

図:スマート・インポート
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ハンガー専用コンテナも開発

 拠点となるのは、現地法人SG佐川ベトナムがベトナム南部のニョンチャック工業団地で稼働させている物流センター。ここからトラックがオンワードの生産協力工場を巡り、ミルクラン(巡回集荷)で製品をハンガー集荷する。

 山内本部長率いるオンワード樫山のチームと佐川急便の青木課長は、センターでの作業を軽減して納期を短縮するため、生産協力工場に検針や品質検査の徹底を依頼して回った。「熱意をもって趣旨を説明すると、快く協力してくれました」(青木課長)。

 トラック輸送の品質維持のため、オンワード樫山では500基以上の専用ハンガーラックを導入し、センターにはICタグ読み取りシステムを4ライン設置して、検品も迅速化した。

 日本への船便に使用するコンテナも、新たに開発した。内部にハンガーを掛けるバーを設け、赤道付近を通過する際の温度上昇を緩和するため、内部に遮熱シートを張り巡らせた、ハンガー輸送専用のコンテナである。テスト輸送では、コンテナ輸送した1664着が床に1着も落ちなかったことを確認し、品質低下もなかったことから、本格導入に踏み切った。

 オンワード樫山の山内本部長は「現在、年間約数十万点のハンガーものをベトナムから輸入していますが、2019年度は約6割に新システムを適用する予定です。これは現在中国で生産しているニットなどの段ボール梱包の商品にも、既に適用しています。近い将来、ハンガーものの全てを新システムに切り替えると同時に、他の生産国にも波及させていくことが今後の目標です」と意気込む。

 佐川急便の青木課長も「SGホールディングスのグループ会社と協力しながら、お客様のご要望にお応えしていきたい」と決意を固めている。

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