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自動化が進まないビジネス現場「働き方改革」を実現するには/「人」を中心とした働き方で日本企業は成長する 経済産業省 経済産業政策局 産業人材政策室 室長 能村幸輝氏×ServiceNow Japan 社長 村瀬将思氏

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AI(人工知能)や機械学習などの進化とともに、「テクノロジーに仕事を奪われる時代がくる」との懸念が広がっている。だが、企業の競争力の源泉となるのはあくまでも“人”であり、テクノロジーを活かしてその力を最大化することが、今後の重要テーマとなるはずだ。経済産業省経済産業政策局産業人材政策室の能村幸輝室長と、「人の働き方を変える」クラウドソリューションを提供するServiceNow Japanの村瀬将思社長が、“人”を中心とするこれからのビジネスのあり方について語り合った。

他の先進国・地域に比べて
日本の業務の自動化は遅れている

村瀬 氏
瀬将思
1993年TKC入社、2000年iGATE Global Solutions Limited入社、09年日本HPにHPSW、PS事業本部本部長として入社。12年itSMF Japan理事に就任。14年日本HPのHPSW事業統括執行役員に就任。16年1月より現職。

村瀬社長(以下、村瀬):今日は能村さんと、色々とお話しできることを楽しみにしておりました。

能村室長(以下、能村):こちらこそ、よろしくお願いします。

村瀬:まずは、私たちの会社の紹介からさせてください。ServiceNowは「人々の働き方を変える」ことを目的として、業界最先端のテクノロジーを採り入れたクラウドベースの業務プラットフォームを提供する会社です。

 当社は世界12ヵ国・地域を調査対象として、「業務プロセスの自動化に関する意識調査」を行いました。調査対象は欧米やアジアの先進国・地域ですが、その結果を見ると日本の働き方のデジタル変革はまだまだ遅れている。「過去3年間で自社の業務に自動化が導入された」との回答は、12ヵ国・地域平均で57%だったのに対し、日本はわずか42%です。調査対象国・地域の中で最も低い割合でした。さらに、「社員はデジタルスキルを持っていますか?」との問いに対しては、「持っていない」が平均6%だったのに対し、日本は20%と自動化へのスキルも不足していることがわかりました。

 一方で、自動化がもたらす恩恵について尋ねたところ、「仕事への満足度が高まる」とか「創造的な、新しい業務を任されるようになる」「生産性が向上する」といった認識について、他の調査対象国・地域と日本に大きな違いはありませんでした。

 自動化すれば同じ作業を何度もやらなくてもよくなるので、「ストレスが減る」といった認識についても、ほぼ同じです。つまり、日本企業も業務の自動化によってもたらされる恩恵については理解しているけれど、現状はそこまで進んでいない、業務の自動化を進めるためのスキルも足りないと感じているわけです。

能村 氏
村幸輝
2001年に経済産業省に入省。テレワーク、兼業・副業、フリーランスなど「多様な働き方」の環境整備、リカレント教育・AI人材育成などを担当。

能村:これは非常に興味深い調査結果ですね。われわれが感じていた印象と同じです。

 いま、日本企業に求められているのは、「手作業から脱却する」ための意識改革ではないでしょうか。デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展とともに仕事の質は大きく変わっているのに、日本人は手作業に執着している部分があります。その大部分はルーティンワークだと思いますが、ルーティンの棚卸をしながら一つ一つ変えていくことに取り組むべきなのに、実際にはそうはなっていません。

 経済産業省は2018年9月に発表した「DXレポート」で、日本企業のDXへの対応を遅らせているのは、複雑化・ブラックボックス化した既存システム(レガシーシステム)であると警鐘を鳴らしていますが、システムだけでなく、働き方に対する固定概念、言い換えれば“意識のレガシー”のようなものも、変化を妨げる要因となっているように感じます。

村瀬:日本企業はよくも悪くも現場主義で、ボトムアップのカイゼンによる成功体験を積み重ねているので、どうしても手作業にこだわってしまうのかもしれませんね。

能村:その通りです。このままでは今後、自動化を推し進めている企業と、そうでない企業との二極化が進んで、差がどんどん開いていくのではないでしょうか。