日経ビジネス電子版Special

自動化が進まないビジネス現場「働き方改革」を実現するには/「人」を中心とした働き方で日本企業は成長する 経済産業省 経済産業政策局 産業人材政策室 室長 能村幸輝氏×ServiceNow Japan 社長 村瀬将思氏

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“人”にフォーカスして
「新しい仕事のやり方」を実現する

村瀬:手作業から脱却するために必要なのは、デジタル変革で“人”を中心とした新しい働き方を実現することだと思います。

能村:多くの企業では、すでに自動化のためのテクノロジーはかなり整備されてきていますね。

村瀬:われわれもそのお手伝いをさせていただいていますが、本来、人が行うべき役割を中心に、デジタルテクノロジーを仕事にどう生かすかという、“人”にフォーカスした変革が求められていると感じます。

 日本の1人当たり名目GDP(国内総生産)は1990年の9位から2018年には26位まで落ちています(出典:IMF)。たたでさえ労働力人口は減少の一途をたどっていますから、このままでは日本の経済力はどんどん縮小してしまいます。1人当たり名目GDPを再び高めるためにも、日本は業務の自動化にフォーカスしていかなければなりません。

 ServiceNowは、「新しい仕事のやり方」を作りたいと考えています。当社は、クラウドのテクノロジーを使って人々の働き方を変えることを目指して2004年に米国で創業しました。ボタンを押せば、クラウドのプラットフォーム上で仕組みが出来上がって、すぐにサービスが立ち上がる。「Service Nowだ!」ということで、この社名になったのです。

能村:社名と提供するソリューションが一致しているわけですね。

村瀬:まさにそうなんです。2017年4月には、コンシューマーの世界におけるデジタル変革を10年間引っ張ってきたジョン・ドナホーが当社のCEOに就任しました。彼は、「これからは、働くための仕組みや働き方にも、コンシューマーの世界で起きたデジタル変革が必要だ(コンシューマライゼーション)」ということで、会社の目的を「We make the world of work, work better for people.」というものに再定義しました。「人々にとってよりよい仕事の世界を創ることが、われわれの使命だ」という意味です。

 この考え方のもと、当社はAI(人工知能)や機械学習といったテクノロジーが人を不幸にするのではなく、人がやらなくてもいい仕事はこれらのテクノロジーにやらせ、人は人にしかできない仕事をするという世界を目指しています。

仕事のやり方を変えるには
IT部門の意識改革も必要

能村:問題は「どうやって変えていくのか」ということもあると思います。各企業の業態や規模、置かれている事業環境によって違ってきますが、それぞれの状況に応じて、事業戦略、人材戦略、それを支えるシステムなどを全体的に見直していく必要があります。

 また、そうした取り組みは従業員や外部労働市場、資本市場に対する説明責任を伴うので、経営トップのイニシアチブが非常に重要になってくると思います。

 現場の「働き方」への意識を変えていくためには、トップダウンとボトムアップの両面で取り組んでいくことも大切です。

村瀬:働き方に対する意識変革を社会全体に広げるには、さらに横の連携を図っていくことも重要でしょうね。

 私たちは「仲間づくり」が非常に大事だと思っていて、国内外のお客さまやパートナー企業をつなぐ取り組みも行っています。企業同士が互いにコラボレーションしながら何かを成し遂げていくとなると、なおさら汎用的なプラットフォームが求められるわけです。

能村:経産省でも「Connected Industries」という考え方を提唱しています。「Society 5.0」などを実現していくためにも、産業間や企業間のつながりが重要であると考えており、それをどうつないでいくのかということが、これからの日本が国際競争を勝ち抜いていくための鍵を握るのではないかと思います。

村瀬:なるほど。経産省でもつながりを重要としていただけているなら心強いです。

 また、企業のCIO(最高情報責任者)とDXの話をさせていただくのですが、最後に話が落ち着くのは、やはり“人”ということです。世の中のデジタルテクノロジーは進化し、揃ってきましたが、それを使いこなせるスキルセットを持った人がいない。

能村:仕事のやり方を変えていくためには、IT部門の意識改革も求められますよね。

村瀬:おっしゃる通りです。これまでのIT部門は、事業部門から言われたものを作るのが仕事でしたが、これからは各部門に「テクノロジーを使って、やり方をこう変えましょう」というリーダーシップを発揮しないといけません。IT部門が旗振り役となり、デジタルを使って会社を変えていかなければいけない時代になっています。

労働力人口の推移
日本の労働力人口は減り続けている。経済成長を持続するためには、1人当たりGDPをいかに高めて、人口減少を補うかが大きな課題だ。