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2025年の崖は「人」のチカラで乗り越えられる

働き方改革の焦点が時短やテレワークから、第2フェーズの生産性向上へと移行しつつある。労働力人口が減少し高齢化が加速する日本において、一人一人の生産性向上は不可欠だ。個人の創造性の高い働き方が付加価値を生み、企業の持続的な成長につながる未来を実現する上で、デジタルの役割は大きい。「企業や人のイノベーション」を支援する日本マイクロソフトの手島主税氏と、「人の働き方を変える」クラウドソリューションを提供するServiceNow Japanの村瀬将思氏が今後の目指す方向性を語り合った。

「想定外は起きない」時代の終焉
戦略実行のスピードが問われる

手島 氏
日本マイクロソフト
執行役員 常務
クラウド&ソリューション事業本部長
兼 働き方改革推進担当役員
手島主税
2017年12月、日本マイクロソフト株式会社に入社。最新クラウドテクノロジーを活用して、法人企業のビジネス変革を支援するクラウドソリューション事業を統括。また、同社の働き方改革推進担当役員として、自社実践プロジェクトや、顧客企業の働き方改革を支援する取り組みをリードしている。

村瀬 2018年9月に発表された経済産業省の「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」が話題になっています。日本のデジタル化の遅れに危機感を示した上で、対策を打たなければ「経済損失は、2025 年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)にのぼる可能性がある」と指摘しています。日本企業のDXの現状について、手島さんはどのようにお考えですか?

手島 日本の産業をどのように成長させるのか。そのためにはDXが欠かせませんが、同時に、企業のカルチャー変革をもとに成長戦略の方式やマインドセットを見直す必要があるように思います。これまで、日本企業は「想定外は起きない」という前提で、計画を戦略とし、PDCAを軸に計画を確実に実行する傾向が強かったのではないでしょうか。大量に物を製造する、消耗戦の時代には、それでよかったのでしょうが、そういう時代は過ぎ去ろうとしています。製品のライフサイクルは短期化し、想定していないことが次々に起きる中で、どのように次の一手を打つか。計画からビジョン思考型にすることでスピード感を大きく変えていく必要があります。その際、デジタルの原動力、役割は非常に大きいと思います。

村瀬 氏
ServiceNow Japan
代表執行役社長
村瀬将思
1993年TKC入社、2000年iGATE Global Solutions Limited入社、09年日本HPにHPSW、PS事業本部本部長として入社。12年itSMF Japan理事に就任。14年日本HPのHPSW事業統括執行役員に就任。16年1月より現職。

村瀬 IT分野でいえば、これまではウォーターフォール型で計画通りに物事を進めるプロジェクトが主流でしたが、近年は試行錯誤を許容するアジャイル型の開発が増えています。あるお客様のCIOは「IT部門のベストプラクティスを事業部門に展開していく」と話していました。IT部門が「事業部門から言われたことをやる」という姿勢では、これからの時代に対応できません。環境変化が激しい中で成長を続けるためには、テクノロジーや方法論の変化を自ら体験してきたIT部門が、リーダーシップを発揮しなければならない場面が増えるように思います。

手島 DXを実現するためには、IT部門の位置付けも変わる必要がありますね。

村瀬 その通りです。パワーアップしたIT部門が事業部門、さらには日本企業の変革をリードする。そんな将来を実現するために、CIOの責任は重いと思います。一方、日本経済に目を向けると、数十年にわたってGDPがほぼ横ばいの状態が続いています。経済成長期には労働力人口も増えていたので、人海戦術でカバーすることもできたでしょう。しかし、労働力人口が減少局面に入ったいま、同じようなスタイルを維持することはできません。当然ながら、一人一人の生産性を高めるしかないのです。こうした時代背景があった上で、現在、働き方改革が大きなテーマとして挙げられています。ただ、今のところ残業時間の短縮やリモートワークに注目が集まりがちで、生産性向上への取り組みはあまり進んでいないように見えますね。

手島 日本企業と日本経済全体の発展のためにも、生産性向上は避けては通れないテーマです。デジタルを活用して生産性を向上するために、私たちIT企業側も、顧客に新たな洞察、体験を提供できるように顧客との関係性を変えていく必要がありますね。