日経ビジネスONLINE SPECIAL

「モノを売る」だけでは生き残れない サブスクリプションの普及で変革を迫られる製造業のあり方

「モノはいらない。感動が欲しい」。今、世界中の消費者の意識は大きく様変わりしている。所有する満足よりも、特別な体験が受けられることへの満足が選ばれる時代となった今、製造業の存在意義が問われている。モノが売れなくなる時代をどのようにして生き延びていくのか? 有効な処方箋は、顧客に感動を与え続ける「サブスクリプションモデルへの対応」である。

「モノの価値」を超えた
ユーザーエクスペリエンス

 第1次産業革命以来、数百年にわたって培われてきた製造業の存在意義が根底から大きく揺らいでいる。

 「モノからコトへ」「所有から使用へ」と消費者の意識が大きく変化していることはあらためて言うまでもないが、それによって「モノが売れなくなる時代」が迫っている。実際、製造業においても変化の兆しがすでに表れている。

久納 氏
ServiceNow Japan株式会社
ソリューションコンサルティング統括本部
第二ソリューションコンサルティング本部
本部長/ITSMエバンジェリスト
久納信之
P&Gにて長年、国内外のシステム構築、導入プロジェクト、ITオペレーションに従事。1999年からはITILを実践し、ITSMの標準化と効率化に取り組む。その後、日本HPや、日本IBMにおいてITSMコンサルタント、エバンジェリストとしての活動を得て、現在に至る。

 「トヨタ自動車がソフトバンクとMaaS(Mobility as a Service:サービスとしての移動の意)に対応するための共同出資会社を設立したことは、製造業が今後進むべき道を示した象徴的な出来事だといえます。もはやクルマをつくって売るだけでは生き残れない。サービスとしてのモビリティを提供し続ける仕組みを構築しなければ、収益を得られなくなるという未来を見据えているのです」

 そう語るのは、法人向けにデジタルトランスフォーメーションを支援するクラウド型プラットフォームや、各種SaaSソリューションを提供するServiceNow Japanのソリューションコンサルティング統括本部 エバンジェリストの久納信之氏である。

 「ユーザーが本来求めているのは、クルマという製品ではなく、便利で快適に移動できる手段です。一定の料金さえ支払えば、その手段をコンスタントに利用できるサービスがあるのなら、わざわざクルマを所有しなくてもよいという人が増えてきています。モノづくりだけに執着するのではなく、サービスを通して付加価値を提供する発想が今後は求められるようになります」

 付加価値の高いサービスとは、「ユーザーエクスペリエンス(顧客体験)にフォーカスを当てたサービス」だと久納氏は指摘する。

 そのサービスを受けることによって、どのような驚きや感動がもたらされるのか。ユーザーの心をつかむ体験をコンスタントに提供し続けることが、継続的な収益に結びつく。

 「また、今後MaaSなどのサービスが普及し、シェアリング・エコノミーが確立すると、世の中に必要とされる車の絶対数は減っていきます。時代の変化に合わせて生き延びるためには、製造業もサービスに積極的に取り組んでいくことが避けられなくなっているのです」

 これは、最終製品を消費者に提供するBtoCのメーカーのみならず、部品や原材料を供給するサプライヤーにもいえることだ。

 「クルマや家電、情報機器などの需要が縮小すれば、部品や原材料のニーズも減ることは自明の理です。BtoBを主体とする製造業も、サービス化という大きな時代のうねりにしっかり対応していかないと、生き残れなくなる時代がやってくるのではないでしょうか」

 では、サービスへの取り組みが求められる時代に、製造業はどう対応していけばいいのか? 取り組むべき優先課題の1つは、顧客のニーズをリアルタイムに吸い上げ、それに応じて製品・サービスの質をコンスタントに改善していく仕組みづくりだ。その仕組みづくりの必要性は、下図の経済産業省「ものづくり白書」でも課題として取り上げられ、製造業のあり方に変革を求めている。

 「同じ製品を同じサービスで提供し続けているだけでは、いずれ顧客に飽きられてしまいます。つねに改善を加えることによって、カスタマーエクスペリエンスを高いレベルに保ち続ける仕組みが必要なのです」と久納氏はアドバイスする。

 次ページ以降で、その仕組みを詳しく紹介していこう。

スマート製造の取組の捉え方
製造業におけるスマート化・デジタル化となると、日本の製造業の間では製造工場の中でのライン生産の最適化などの狭い話として捉えられがちだ。本来は、デジタルツールを活用したプロセス全体を最適化する必要がある。
メーカーのままでは「革新的な企業」になれない?

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