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着実に成果を出せる人事部の生産性向上

着実に成果を出せる人事部の生産性向上
~HRテクノロジーを活用した、業務プロセス改善の成功事例

倉橋 隆文 氏
株式会社SmartHR
取締役COO
倉橋 隆文 氏

生産性向上は日本企業の至上命題

倉橋 隆文 氏
株式会社SmartHR 取締役COO
倉橋 隆文 氏

「働き方改革を生産性の向上に結びつけることは、今の日本企業にとって至上命題です。多くの企業の人事部門の方々とお話し、さまざまな取り組みを分析してきた中で、成功企業の勝ちパターンというものが我々なりに見えてきました」

セミナーが始まると、倉橋隆文氏は早速このように切り出した。

「まず前提として、なぜ働き方改革と生産性向上が求められるのかを確認したいと思います。ここには『労働人口の減少』と『労働時間の削減』という2つの背景があります。

人口減少に伴い、労働力人口は今後着実に減っていきます。厚生労働省が推計した最悪シナリオのデータでは、14年時点から約800万人減るとしています。比率にして11%減です。同時に、一人当たりの労働時間は減らすことが求められています。これまで日本の労働者は1カ月平均で47時間の残業をしてきましたが、仮にこれをすべて無くすとすれば、一人当たり22.7%も労働時間が減ることになります。

この2つの数字の掛け算で導き出されるのは、生産性が変わらない限り、日本の生産量は69%にまで低下するという事実です。企業で言えば売上高が、日本という国で言えばGDPが、自然に69%までに下がってしまう。この厳しい現実に対し、生産性の向上で対応しようというのがこの問題の要です。具体的には10年間で全従業員の生産性を1.5倍に引き上げることが必要で、相当の努力が求められます」(倉橋氏)

生産性向上は人事労務改革から

倉橋 隆文 氏

では、生産性向上を実現する方法やその留意点は何だろうか。

「生産性向上の具体的な方法は、じつはいろいろとあります。例えば業務効率化ツールの導入であったり、リモートワークやフレックスタイムの拡大など働ける人を増やす制度改革であったり。また福利厚生の充実もその一つです。米カリフォルニア大学のある教授の研究では、幸せな従業員とそうでない従業員では、生産性が約30%も違うことが明らかになったと言います。福利厚生の取り組みなどにより従業員満足度を上げることもきれい事ではなく、生産性向上において非常に重要と言えます。

ただしどんなに良い改革プロジェクトでも、新しいことには常に抵抗や摩擦が起こりますから、実行するのは本当に大変なもの。問題は、その負担をいったい誰が担うのかということです。難易度の高い改革を遂行するのに、経営陣の後押しが必要不可欠なのは言うまでもありませんが、実際に改革実務を担当するのは本日ここに来ている人事・管理部門の皆さんでしょう」(倉橋氏)

たしかに、働き方改革が人事・管理部門に丸投げされているようなケースは少なくない。しかも倉橋氏も指摘していたように、人事・管理部門の担当者が1つの業務に専念できているケースは稀だ。採用、研修、労務、評価などのうち、多い人で6つ以上を兼任。残業時間も半数以上の人が30時間を超えているというデータもあるという。

「つまり人事・管理部門のみなさんは本当に忙しい。加えて働き方改革を進めようとすれば、さらに業務が増えてしまいます。うまくいかないのは当然です。

働き方改革・生産性改革が成功するか否かは、つまるところ、どれだけ人事・管理部門の業務効率化を図り、時間を確保して、改革に専念していただけるかにかかっています。『生産性向上は人事労務改革から』。これが本日みなさんに最もお伝えしたいことです」(倉橋氏)

一口に人事労務改革といっても、成果の出やすい業務とそうでない業務があると倉橋氏は言う。 「人事・管理部門の業務を改めて整理してみると、まず『採用』『研修・教育』『人事企画』『評価』は、できるだけ時間をかけるべきもので、人と人との関わり合いでしか進まない業務でもあります。また『勤怠管理』や『給与計算』についてはアウトソースや専用システムの活用により、ほとんどの企業がすでに効率化されているはずです。

すると残るのは『入退社手続き』『年末調整』など煩雑で手間のかかる労務手続きです。これらは現在も手書きで用紙記入するなどアナログな方法で行っている企業が少なくありません。一番着実に業務効率化で成果を上げるのであれば、この3つに注力するのが良いはずです。弊社が人事労務に特化したクラウドサービスを提供しているのも、まさにそこに貢献するためです」(倉橋氏)

煩雑な作業の多い労務業務こそ、効率化の成果は大きい

例えば入社手続きだけでも、社会保険・雇用保険の資格取得書類や扶養控除等申告書をはじめ、さまざまな書類作成が必要になり、作業も煩雑になりがちだが、最近ではこれを効率化するサービスが登場している。

「弊社のクラウド人事労務ソフト『SmartHR』では、これらすべてをクラウド上で作成・管理できる仕組みを提供しています。担当者の方は専用ページにログインして、新入社員の人をメールで招待。本人に必要事項を直接入力してもらい、あとは入社予定日や初任給など人事側が入力すべき情報を入力するだけで、必要書類が完成します。行政への電子申請にも対応しているので申請の手間もありません」(倉橋氏)

こうしたサービスの利用によって、実際にどの程度の効率化が図れるのか。倉橋氏はこのセミナー中に「年末調整」の書類作成を例としてデモンストレーションを行った。計4枚の書類を作成するのに早い人で20分、遅い人だと40分程度かかるのが普通だというが、計測したところ、倉橋氏が「SmartHR」で作業を完了するまでに要した時間は4分29秒だった。

「ご覧頂いたように、すべてアンケート形式になっているので、社員の方は画面上に表示される二十数問の質問に順次答えるだけ。住所情報はもちろん配偶者や扶養親族、生命保険などに関する前年度の入力情報が蓄積されているので、再入力も不要です。入力が簡単だと提出率が上がるので、その意味でも担当者側の負担は大幅に軽減されます。未提出の社員への督促メールも自動送信されます。

今も複数の書類を手書きで作成している企業は意外に多い上に、派生する煩雑な作業も多いので、この分野におけるペーパーレス化、業務効率化の効果は極めて大きいものです」(倉橋氏)

最後に、同社サービスの導入企業の事例や感想コメントが紹介された。「労務にかかる時間が3分の1に減った」「全体の60%の社員の生産性が向上した」といったコメントのほか、「早く帰宅できるようになった人事担当者が、自らスキルアップのための勉強を始めるようになった」という声が紹介されていたのも印象的だ。いずれ企業にとってHRテクノロジーの活用が当たり前の時代になる。テクノロジーの導入自体ではなく、業務効率化で生まれた余力をいかに生産性向上やイノベーション創出に結びつけていけるか、その差が企業の競争力を左右するようになるのだろう。

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