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自動車ジャーナリスト・渡辺慎太郎氏が試乗レポート キャデラックの哲学が凝縮された新コンパクトSUV XT4が日本上陸

アメリカで話題のコンパクトSUV、キャデラック「XT4」がついに日本国内でも発売を開始する。先んじてシアトルで試乗を行った自動車ジャーナリストの渡辺慎太郎氏がXT4をレビュー。
自動車ジャーナリスト渡辺慎太郎
1966年東京生まれ。米国の大学を卒業後、自動車専門誌の編集者となる。2013年から『CAR GRAPHIC』誌の編集長を務め、2018年から自動車ジャーナリストとしての活動を開始する。

スタイリッシュかつコンパクトなボディに
余裕のある室内空間を備える

XT4

 世の中には「もうちょっと褒めてあげてもいいんじゃなかろうか」と同情したくなるくらい、理不尽な評価をやむなく受け止めているプロダクトがあって、そのひとつがキャデラックであると自分なんかは思っている。“キャデラック”と聞いてたいていの人が抱くイメージは「値段が高い」「サイズが大きい」「燃費が悪い」など、どちらかといえばネガティブなものが多く、これはキャデラックというよりも“アメ車”全般に通じる。アメリカ車にはさまざまなブランドがあるにもかかわらず、それを“アメ車”と十把一絡げにしている風潮が日本には蔓延していて、それがなんとも嘆かわしい事態であると憂うと同時に、自分のような生業がもっときちんと発信しないといけないと猛省もしている。

XT4

 いわばこの都市伝説のようなキャデラックのイメージを一掃できるであろう存在が、この度ついに日本へ導入されることになったXT4である。キャデラックのSUVは大きい順にエスカレード、XT6、XT5とあって、XT4はもっともコンパクトなサイズとなる。全長は約4.6mしかなく、これは競合と目されるドイツ勢各車よりも小さい。それでいて後席のレッグルームはクラス最大を誇り、大人4人乗車でも余裕の居住空間と4人分の荷物をきちんと収めるラゲッジスペースを兼ね備えている。市街地での取り回しでは全長よりも気になる全幅も1880mm台に収まっていて、1900mm超えが当たり前となってきた昨今で、XT4のボディサイズは精神的にもなんとも優しい。「外は小さく中は大きく」は、クルマのパッケージのお手本である。

 まずはこれで、キャデラックの「サイズが大きい」というイメージは払拭できたはずだ。ちなみに、XT4のデザインは若手のデザイナーが中心となって作り上げたもので、洗練さと新鮮さが同居したシャープな印象でほどよくまとまっている。男性でも女性でも似合う雰囲気もまた、XT4のデザインの魅力のひとつでもある。

XT4

 “アメ車”のインテリアに関しても「野暮ったい」「質感が低い」「装備が不十分」といったイメージが一部にはあるようだけれど、XT4にはこれも当てはまらない。シートやトリムに使われている素材はいずれも本物で、“本革風”とか“ウッド調”ではなく厳選されたマテリアルが室内の上質な雰囲気作りに一役買っている。本革シートをはじめ、BOSE製サラウンドサウンドシステム、全席シートヒーター、ステアリングヒーター、クラウドストリーミングナビゲーション、ハンズフリーパワーテールゲートなどは全車に標準装備で、グレードによってはさらにウルトラビューパノラミックサンルーフやワイヤレスチャージング、そしていまの時期には嬉しいイオン発生除菌機能付きエアコンなどが加わる。それでも、ドイツの競合車の車両本体価格のほうが約200万円も高額であるという事実を知ったらきっと驚かれるに違いない。「キャデラックは高い」というイメージこそ、いまや過去の遺物なのである。

XT4

 どんなに商品力や競争力があっても、クルマは乗ってなんぼの工業製品でもある。走る/曲がる/止まるの基本性能に妥協があっては元も子もないのだけれど、XT4はその点においても期待を大きく上回っていた。