転換期を迎えた企業の人財育成
学びの“ニューノーマル”を展望する

企業の研修プロトコルを大きく変えたコロナ。従来の集合研修はオンライン型のバーチャル研修へと切り替わり、企業においても個人にとっても学びの環境は一変した。実際オンラインの有用性は高く、ポストコロナ時代になってもその流れは続くだろうと見られている。一方で、リアルな場に集まって学ぶことの価値が見直されつつあるのも事実だ。今だからこそ見えてきた、オンラインと集合研修によるブレンデッドラーニングの意義について、サイコム・ブレインズ代表取締役社長の西田忠康氏と、KDDIラーニング代表取締役社長の土橋明氏に語っていただいた。

※本対談はウェブ会議システムを活用し実施しました

企業研修の最新トレンドをチェック!オンラインを活用した効果的な研修プログラムの作り方とは?

バーチャル研修の成否を分ける
インタラクティブ性

──サイコム・ブレインズ様、KDDIラーニング様の事業概要と、現在注力していることを教えてください。

サイコム・ブレインズ株式会社
代表取締役社長 西田 忠康 氏

西田 サイコム・ブレインズは、1996年に設立した研修会社です。企業に向けて人財育成や組織開発のプログラムを企画し、講師やファシリテーター、コンテンツなどをコーディネートしてご提供しています。近年特に注力しているのは、ICTを活用してどんな状況下でも学び続けることのできる環境やコンテンツを整備することです。以前から進めていたことではありますが、コロナ禍でそれが一気に加速した状況です。

土橋 KDDIラーニングは、KDDIの人財育成部門の一部が独立して2019年4月に設立。今年4月の宿泊研修施設「LINK FOREST」のオープンを皮切りに、業務をスタートしました。事業内容としては、研修事業、教育プラットフォーム事業、施設運営事業の3本柱を掲げています。開業と同時にコロナ禍に見舞われ、現在は研修をオンラインに切り替えている状況ですが、そこで生じた課題を今後どう研修運用に反映し、より深い学びにつなげていけるかを常に考え、探求しています。

──集合研修の実施が困難な今、ご両社が企業を支援される場面も多かったと思います。対応を通じて改めて気づいたことなどをお話しいただけますか。

西田 4月の緊急事態宣言の前後から、ほとんどの集合研修がキャンセルあるいは延期されましたが、どの企業さんも研修をやめるわけにはいきません。そこでZoom、Webex、Teams といったウェブ会議のプラットフォームを活用した研修が、代替の手段として一気に普及が進み、我々もその実施を支援しています。リアルな場で行う研修と同じようにディスカッションなど双方向性の高い研修がリモート環境で、いわば仮想の研修室で実施できる。当社ではこのようなオンライン研修を「バーチャル研修」と呼んでいます。ただ、集合研修のようにみんなで集まるからこそ生まれる受講者どうしの連帯感のようなものをオンラインで実現するのはまだ難しく、そこはもっとクリエイティブに工夫していきたいと考えています。また同時に、在宅勤務・テレワークの中で社員の自律的な学習をどう支援するかということも、改めて重要な課題として取り組んでいます。

KDDIラーニング株式会社
代表取締役社長 土橋 明 氏

土橋 当社の場合は、急遽オンライン研修に舵を切ったこともあり、その環境整備やコンテンツの用意、講師の習熟で精いっぱいだったというのが正直なところです。実際にオンライン研修をやってみると、当初講師からは「研修者の顔が直接見えないのでやりにくい」「機器操作に不慣れで研修に集中できない」との声も上がってきました。また、集合研修であれば休憩中などに生まれる受講者同士の気軽なコミュニケーションが、オンライン研修ではないので、相互の学びや絆が深まりにくいという問題もあります。オンライン研修でも講師と受講者、あるいは受講者同士のつながりを強めていく仕掛けを考えていく必要があると考えています。

西田 一方で、多くの人がウェブ会議に慣れてきたことから、バーチャル研修にも新たな試みが行われているのも事実です。当社が提供するバーチャル研修でも、ウェブ会議システムの様々な機能、たとえば参加者を少人数のグループに分ける機能を活用して、ディスカッションやロールプレイングといったインタラクティブなワークを取り入れたり、録画機能を活用してスキルの習熟度のアセスメントを実施しています。グループによる学習だけでなく、研修の後で個別のコーチングセッションを実施した企業もありました。そのような試行錯誤をしながら、オンライン研修においても連帯感や気づき、モチベーションアップといったヒューマンな要素をより高めていくことが、これからの課題といえますね。

動画コンテンツと
LMSの活用で自律的な学びを促す

──一方的な詰め込み学習や画一的な教育になりがちというイメージのあったオンライン研修ですが、そうならないような様々な創意工夫が始まっているのですね。今後さらに、受講者や企業の学びのニーズを的確に捉え、成果を上げて いくための取り組みについて教えてください。

LMS(教育管理システム)

土橋 個人の学びを可視化し、組織がその進捗や成果を管理するものとして、LMS(Learning Management System=教育管理システム)があります。当社では今回新しいLMSを構築し、KDDIをはじめ、グループ企業に順次展開しているところです。大きく変わったのは、動画コンテンツを扱えるようになった点と学習履歴を一元的に管理できるようになった点です。コンテンツライブラリーとして、サイコム・ブレインズさんの「ビジネスマスターズ®(Business Masters)」を採用し、バーチャル研修の事前学習や関心分野の学習などに活用してもらっています。誰が何を学んだかといったデータは随時LMSに上がってくるので、今後はそれをもとに各個人に適切な学習コンテンツを提供できるよう整備を進めています。

仕事力を磨くための動画見放題サービス「ビジネスマスターズ®」を動画で紹介

西田 今回KDDIラーニング様に導入していただいた「ビジネスマスターズ®」は、当社が今年の4月にリリースした動画のサブスクリプションサービスです。ビジネスに必須の知識・スキルから、ビジネスの最新ニュースやトレンドまで、人気講師によるレクチャーやドラマで楽しみながら学べる動画を1800本以上ラインナップしています。動画の形式も様々で、企業研修で評価の高い講師陣や各界の有識者による講義動画の他に、1テーマあたり約5分で完結する、いわゆるマイクロラーニング型の動画も数多くあり、忙しいビジネスパーソンでも手軽に学べるのが特長です。実際、テキストよりも動画の方が見る側も作る側も効率がいいんですよね。短時間で作れるし見られるわけですから、テーマや対象を絞ったコンテンツも作成しやすいし、効率的に組み合わせて学ぶことも自在。動画で学ぶというのは、今の時代に合った学習方法だと思います。

土橋 KDDIグループ社内でも、若手はもちろん、中堅・ベテラン社員にも動画は好意的に受け入れられていますね。動画によるマイクロラーニングなら空いた時間を有意義に使えるうえ、理解のスピードも速い。自律的な学びを深めていくには非常に有効なツールだと実感しています。

西田 これも、ただクオリティの高い動画を並べればいいというものではなく、社員が学びやすいようにモジュール化していく必要があります。そのためにはやはりLMSを活用することが望ましい。人財育成上の課題や目標に合わせて学習スケジュールを立てたり、その進捗状況をモニターして次のステップを提案したりといった使い方ができるのは、やはりLMSの強み。LMSをうまく活用して、企業のイニシアティブと個人の自律性をバランスよく調整できれば、研修そのものが社員のモチベーションアップに、ひいては企業利益にもつながるはずです。

オンライン+集合研修の
ブレンデッドラーニングが主流に

──バーチャル研修や動画による学習、LMSの活用などオンラインでできることは増えてきましたが、今後もこの流れは続いていくのでしょうか。

宿泊研修施設「LINK FOREST(リンクフォレスト)」を動画で紹介

土橋 オンライン研修の有効性、利便性はかなり浸透してきているので、コロナ終息後もその流れは止まらないだろうと見ています。ただし、オンラインだけではやはり限界があります。受講者同士がお互いにコミュニケーションをとりながら切磋琢磨しあうような環境は、リアルでこそ生まれるもの。五感を使った研修や交流が行えるのが、集合研修の魅力だと思うのです。

ハイブリッド型研修の例(営業社員対象)

西田 知識をインプットするような研修はオンラインで、交流の刺激を求める場は集合研修で、というブレンデッドラーニングが今後は主流になっていくでしょうね。当社ではこれを「ハイブリッド型研修」と呼んでいます。オンライン研修はたしかに便利ですが、本来の研修はもっとインタラクティブなもの。みんなでアイディアを出し合い、ときには体を動かすようなことも必要なんです。それも1日だけじゃなく、2~3日合宿して食事や宴を一緒に楽しむという集合研修の中でこそ、出会いや気づき、連帯感や高揚感が生まれる。そうした“リアルに集まる”ことの価値が、今改めて見直されてきているのだと思います。その意味で、KDDIラーニングさんの「LINK FOREST」の役割は非常に大きい。

──「LINK FOREST」は、現在どのように活用されているのですか。

土橋 今は、オンライン研修のスタジオとして使用しています。オンライン環境でも質の高い研修をご提供できるよう、機材やテクニカルスタッフを備え、チャットでの質問回答などを行うアシスタントも同席して、講師をサポートするのが主な役割ですね。また、もうひとつの活用としては、企業さんへの施設貸し出しも行っています。実際に「LINK FOREST」を利用されたお客様からは、「緑豊かで落ち着いて学べる環境」「いろいろなコンセプトのコミュニケーションスペースが多く社員同士の絆を深めるのに最適」といったお褒めの言葉をいただいております。こうしたお声に応えるためにも、「LINK FOREST」の魅力をもっと高めていくとともに、研修についてはオンラインとオフラインのそれぞれの良いところを活かすようなブレンド型の研修メニューを今後提供していく予定です。

西田 「LINK FOREST」は私も何度か訪れていますが、都心から少し離れただけで非日常モードに入っていける環境がすばらしい。理想の学びの場だと感じました。オンライン研修やリモートワークが当たり前になった今、“リアルに集まる”機会は貴重なものとなりつつあります。その限られた場をどう活用し、そこにどんな意義を見いだせるかが、今後の人財育成や組織開発の鍵となっていくのではないでしょうか。

次ページではバーチャル研修、オンライン・オフラインを組み合わせたハイブリッド型研修について、自社で実施する際のプログラムの作り方、効果を高めるための実践的なノウハウなどを動画で伝授。本対談で登場した「ビジネスマスターズ®」「LINK FOREST」についても詳しく解説する。

企業研修の最新トレンドをチェック!
オンラインを活用した効果的な
研修プログラムの作り方とは?

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