G-MAFIA+BATなど、世界経済全体をけん引する力を持つハイテク企業群が生まれている。その一方で、かつて製造大国として世界をリードした日本企業は、技術的潜在能力をビジネス的な成果につなげるのに苦慮している。現在、世界で急成長している企業には1つの共通点がある。財務諸表には直接現れない“見えない資産”である知的財産を上手に運用し、ビジネス競争力の向上に活用していることだ。これまで測り難かった知財の価値も、クラリベイトなどが提供する分析ツールやサービスを活用することで、客観的に見ることができるようになってきた。いま、目覚ましい成長を遂げている企業は、こうしたツールやサービスから得た情報を成長戦略策定の羅針盤として利用している。経営者は、ビジネス成長のために知財を理解し、見えない資産の活用を含めて経営戦略を考えなければならない。知財を最大限に活用するには、知財×ビジネス×経営、すべての視点が必要だ。有力な知財を持つ製造業企業から休眠特許を買い取り、国外企業などに貸し出して運用する知財ファンド「IP Bridge」を立ち上げるなど、知財を基にした新規事業創出で豊富な経験を持つ事業構想大学院大学 特任教授の早川典重氏に、日本企業が知財を生かして再び世界市場での輝きを取り戻すための方策について聞いた。

早川典重(はやかわ のりしげ)氏
事業構想大学院大学特任教授
はがみのもりデザインCEO


はがみのもりデザインの創業者およびCEOであり、前職の三井物産では、海外でのインフラプロジェクト、省エネ事業、都市開発事業、M&Aや知財事業を含めて数々の新規事業を立ち上げてきたビジネスアーキテクト。知財分野では、産業革新機構とIP Bridgeを設立し、同社の執行役員兼Chief Strategy Officerとして立ち上げに尽力した。現在は、プロジェクトマネージメント、IT、金融並びに知財のノウハウと経験を活かし、事業構想の策定から実行までを共に推進するビジネスアーキテクトとして、日米星企業の新規事業のアドバイザー並びに顧問を務める。知財戦略の分野では、経営としての知財戦略を独自の視点から捉えており、2017年、2018年、2019年、2020年のThe World Leading IP Strategist 300(iam300)に選出。事業構想大学院では、「知が創る未来ビジネス(事業構想のための知財戦略)」「イノベーションの発想」や特定企業向けに「Block Chain新事業研究」の講座を持つと共に「月間事業構想」にて「知が創る未来ビジネス」を連載中である。屋久島在住。

モノづくりだけでは成長できない時代がやってきた

――GAFAのように莫大な収益力を誇る企業がある一方で、かつて一時代を築いた日本の製造業企業は伸び悩んでいるように見えます。両者の間には、どのような違いがあるのでしょうか。

早川 20世紀から21世紀にかけて、ビジネス環境には2つの大きな変化が起きました。1つは、インターネットで世界中がつながり、あらゆる情報が透明化したことです。家電製品も服も、現在の販売価格が瞬時に知れ渡るようになり、消費者は最も安い店を選んで買うようになりました。もう1つは、新興国での生産能力が急増し、市場での需給バランスが、需要先行から供給過多へと変わったことです。それまで高い値段で販売できていた商品も供給過多が常態化したことで、すぐに値崩れするようになりました(図1)。

 これら2つの変化から、大量生産型の製品には、常に価格の下方圧力が掛かるようになりました。モノづくりを行うためには、設備投資や人件費など多額の固定費が必要になります。ところが固定費を抱くリスクを取っても、確実に回収できなくなってきました。要するに、モノづくりだけでは儲からなくなったのです。こうしたビジネス環境の変化に適応した企業は強いビジネスを展開できていますが、日本企業の多くは適応できていないのだと思います。

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“見えない資産”が、企業成長の原動力に

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