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複雑な勤務形態をリアルタイムに把握する

日本インシュレーションが提供している、1000度の熱にも耐えられる耐火・保温断熱素材であるゾノトライト系ケイ酸カルシウム材料は、発電所、石油化学などのプラント(大型産業設備)や商業ビル、物流施設などの建築になくてはならないものだ。耐火性の柱や梁、プラントの配管の保温材、焼入れなどの熱処理をおこなう施設の断熱材と幅広い分野で活用されている。同社では素材や製品を製造・提供するだけでなく、各施設の現場で施工までを請け負っており、社員の勤務形態は多岐に渡る。働き方改革が求められるなか、同社もその潮流に乗ることになった。そこで注目したのがシフトの独自技術である次世代カラーバーコード「カメレオンコード」を使用した勤怠管理システム「勤給解決」である。リアルタイムに勤務の実態を把握できるようになり、従業員にも利用のメリットがあるシステムを手に入れることになった。

効率的な「働き方」を
追求するための現状把握

日本インシュレーション株式会社
参事
管理本部 情報管理部長
金子 一郎 氏

 日本インシュレーションの強みは、ケイ酸カルシウムの結晶であるゾノトライトの人造合成技術を確立したことにある。国内に2つの工場を展開し、2016年にはベトナムにも工場を新設して海外にも進出している。

 ゾノトライトの特徴は、軽量ながら1000度を超える熱でも耐えられる耐火性にある。建築物の耐火被覆材やプラント施設の配管の保温などに利用され、炉の断熱や建物内装の不燃化にも使われている。日本インシュレーション 参事 管理本部 情報管理部長 金子一郎氏は「“熱”をキーワードに省エネ用途などで新しい商品開発にも注力しています」と語る。

 そんな同社を悩ませてきたのが、複雑な勤務形態での勤怠管理の難しさだ。「プラント施設で、施工を請け負う従業員はお客様の現場に常駐しています。また、年末年始、夏期休業、ゴールデンウィークを除き、24時間稼働の当社工場では、4直3交代制(24時間を3つに分けて、それを4つのグループで回しながら業務を行うシフト制度)で勤務しています。さらに事務作業を担当するスタッフもいるので、大きく3つの勤務形態が存在することになります」と金子氏は複雑さを説明する。

日本インシュレーション株式会社
管理本部
人事部長
野尻 茂 氏

 「人材不足感が強い今は、新卒・中途を問わず、採用は思うようにいかない状況です。それだけに今の従業員数でいかに効率を上げていくかが重要です。働き方改革への対応も求められるなかで、勤務実態を正確に把握することが求められていました」と同社 管理本部 人事部長 野尻 茂氏は語る。

 また、同社 管理本部 情報管理部 コンピュータグループ 課長 久保田 力氏は「以前、給与計算はオフコンで処理していましたが、勤務データは人手で集計して入力していたので、結果でしかありません。勤務時間をリアルタイムに把握し、働き方改革につなげたいという気持ちは常に持っていました」と話す。

転記ミスや計算ミス、
手作業の勤務時間集計は限界に

日本インシュレーション株式会社
管理本部 人事部
係長
朝日 智栄 氏

 従業員の残業情報は自己申告したものを上長が承認し、月締めでそのデータを工場や本社ごとに手書き集計し、月の締め日から2日ほど後に給与システムに送信していた。一方、いったん給与データが確定したあとに、タイムカードの打刻時間を見ながら表計算ソフトのエクセルシートに転記するという作業もおこなっていた。同社 管理本部 人事部 係長 朝日智栄氏は「タイムカードの打刻時間をエクセルシートに転記していた理由は2つあります。1つは転記ミスや計算ミス、集計ミスなどによる間違いがないかを確認するため。もう1つは超過勤務申請のない管理職の勤務時間を把握するためでした」と語る。

 このエクセルシートに転記する集計作業は、人事部の新人の仕事とされていた。また、オフコンの給与システムから出力される給与明細を裁断して各事業所へ発送する作業も作業量が多く、各地への送付費用もかかっていた。約400名の従業員がいるだけに作業量は相当なものになる。朝日氏は「人が集計するわけですから、見直してもミスは発生します。手作業するには限界でした」と当時を振り返る。

 こうしたなかで人事給与システムのリプレースの計画が持ち上がり、それに合わせて勤怠管理システムを導入することになった。2017年9月のことだ。4社から提案を受け、2社に絞り込み、最終的にシフトの「勤給解決」が選定された。

 決め手となったのは、操作性の良さと運用の容易さだ。「様々な勤務パターンに対応しており、現場で従業員側が新システムを意識することなく使えるシステムだと思いました」と久保田氏は操作性を挙げる。また、野尻氏は「超過勤務時間のアラート設定が簡単にできることと、カメレオンコードを活用した認証システムの利便性を評価しました」と話す。

 カメレオンコードは「勤給解決」を提供するシフトが開発した独自のカラーバーコードで、既存のカラープリンタから容易に出力することができ、バーコードのように簡単に読み取ることで本人認証ができる。紛失してもすぐにカラープリンタから再発行(印刷)できるカメレオンコードは、同社のニーズにぴったりだった。

管理側と利用者側の双方にメリットがある「勤給解決」
管理側と利用者側の双方にメリットがある「勤給解決」

管理側と利用者側の
双方にメリットがある「勤給解決」

 施工、生産、事務という3つの職種が混在する同社にとって、異なる勤務形態すべてでストレスなく使えることが重要だ。たとえば、事務職は1人1台のPCを使っているが、工場や現場では、PCを利用していない場合もある。カメレオンコードを活用した勤給解決であれば、従来のタイムカードと変わらずに容易に運用できる。

 実際、同社の岐阜工場では、紙で出力したカメレオンコードをタイムカードの上に貼り付けてタイムカードラックに差し込み、レコーダーの場所に本人認証用のタブレットPCを設置している。従業員は以前と同じ感覚でラックから自分のカメレオンコードを取り出して、タブレットPCで撮影するだけだ。カメレオンコードと一緒に本人が画像に写ることでなりすまし防止にもなる。

タイムカードラックに収納された従業員各自の「カメレオンコード」。台紙はタイムカード利用時のものを流用(同社 岐阜工場)
タイムカードラックに収納された従業員各自の「カメレオンコード」。台紙はタイムカード利用時のものを流用(同社 岐阜工場)
日本インシュレーション株式会社
管理本部 情報管理部
コンピュータグループ
課長
久保田 力 氏

 こうして“打刻”されたデータは他の事業所のデータと同様に富士通のクラウド「FUJITSU Cloud Service for OSS」をベースにしたSaaS「勤給解決」に反映され、リアルタイムに集計される。集計データは人事部や上長だけでなく、本人もいつでも確認できる。「正確性とスピードが格段に違います。間違いがなく早いので安心感につながります。従業員はパソコンから自分の勤務状況を閲覧することができます。勤怠管理だけでなく利用する従業員の仕事に取り組む意識も一段上がったと感じました」と久保田氏。

 朝日氏は「以前は人事部が岐阜工場の従業員の直近の勤務状況を知りたい場合、工場にあるタイムカードのコピーをメール等で送ってもらうしか確認の方法がありませんでした。それが今ではオンラインでリアルタイムに遠隔地の従業員の勤務状況を把握できます。有給休暇の日数も反映されているので、本人の認識との違いもなくなりました」と管理側と従業員側の双方にメリットがあると語る。

日本インシュレーション株式会社
管理本部 情報管理部
コンピュータグループ
係長
亀井 哲次 氏

 さらに大きな成果は「勤給解決」の導入に合わせて、給与体系を統一できたことだ。同社 管理本部 情報管理部 コンピュータグループ 係長 亀井哲次氏は「以前は工場と本社で給与システムが別々にあり、ベースは同じなのにそれぞれが独自運用していて、整合性を取るのが煩雑でした」と語る。集計方法もカウントする時間の最小単位も違っていたのである。

 同社では慣習的に別々になっていた勤怠管理の違いを洗い出し、整理し、統合していった。朝日氏は「導入をサポートしてくれたシフトさんが丁寧に対応してくれて、複雑な状況を整理してくれました」とシフトの対応力を高く評価する。

シフト独自開発のカメレオンコード認証システムを使用した「勤給解決」のシステム画面
シフト独自開発のカメレオンコード認証システムを使用した「勤給解決」のシステム画面
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株式会社シフト
営業部
リーダー
新妻 宗人 氏

 勤給解決を提供するシフト 営業部 リーダー 新妻宗人氏は「今回の日本インシュレーションさんのプロジェクトで、各社それぞれ特殊な事情があることがわかりました。きめ細かな機能を増やしていきたいですね。また、富士通が運営する開発者コミュニティ『Fujitsu Tech Talk』で色々な開発者と意見交換し、人手不足で無理をしている製造業や建築業が楽になるように勤怠管理の側面からサポートできるソリューションにしていきます」と話す。

 金子氏は「まだまだデータの利活用ができていません。もっと深掘りしていきます」と語り、野尻氏は「もう一歩踏み込んで労働時間の削減や負担の重い部署へのサポートなど、働きがいの向上につなげていきます」と話す。勤務時間がリアルタイムで見える化されたことで、同社にどんな変化が生じてくるのだろうか。今後の展開が楽しみである。

企業紹介
日本インシュレーション株式会社
  • 日本インシュレーション株式会社
  • 創業1914年4月8日
  • 本社住所大阪市中央区南船場1丁目18番17号
  • 資本金7億4376万円(2019年4月1日現在)
  • 代表者代表取締役会長 大橋健一
  • 代表取締役社長 吉井智彦
  • 主な事業内容けい酸カルシウム製品(耐火被覆材,保温材等)及びその施工材料の設計、製造及び販売。耐火被覆に係る各種工事、けい酸カルシウム製品を用いた壁・天井等の内装工事、断熱工事とそれに付帯する各種工事に係る設計及び施工。
  • URLhttps://www.jic-bestork.co.jp/
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