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オンライン禁煙外来で社員の「卒煙」を支援

健康経営の一環として禁煙外来補助を打ち出す企業は多い。しかし、それが成果に結びつかないケースも少なくない。全社を挙げて健康経営に取り組み、経済産業省の健康経営優良法人「ホワイト500」にも認定されている第一生命保険では、オンラインの禁煙外来の費用を健康保険組合が全額負担するとともに、独自に工夫を凝らして着実に成果を上げつつある。どのような施策が成果に結びついたのだろうか。同社の具体的な取り組みについて話を聞いた。

効果が期待される
オンライン禁煙外来

田中 耕次 氏
第一生命保険株式会社
人事部 部長 健康増進室 室長
兼 健康保険組合 常務理事
田中 耕次

 第一生命保険の健康経営への取り組みは早い。2011年7月に「第一生命グループ健康宣言“いきいきダイイチ110”」を宣言したのが始まりだ。同社の人事部 部長 健康増進室 室長の田中耕次氏は「社会保障を補完し健康をお届けしている企業として、お客様だけでなく社員の健康への意識を高めることも重要と考え、健康経営に取り組んできました」と背景を語る。

 さらに同社は、禁煙支援についても積極的に取り組んできた。2011年から非喫煙者のサポーターとペアを組んで禁煙にチャレンジする「全社禁煙キャンペーン」を展開。毎月22日の「禁煙の日」にちなんで、2013年には毎月22日、2014年以降は毎月2日、12日、22日を「禁煙の日」として全社で啓蒙活動に取り組んできた。2013年には禁煙外来の一部費用の補助を開始し、2016年以降は全額補助に切り替えている。

竹田 桂子 氏
第一生命保険株式会社
人事部 健康増進室 兼 健康保険組合
保健師 課長補佐
竹田 桂子

 しかし、期待していたほどの成果は上がっていなかった。「全社禁煙キャンペーンは参加者の3割から4割が禁煙に成功したものの、回を重ねるごとに参加者が減少したため、いったん終息することにしました」と同社の人事部 健康増進室の竹田桂子氏は語る。禁煙外来補助の利用者も期待したほどには増えなかったという。

 ただし、活動の中で一筋の光明も見えてきた。最近になって導入したアプリを使った禁煙支援プログラムには参加者が多く、禁煙成功率も高いことだ。禁煙外来に行きたくても忙しくて受診できない禁煙希望者に支持されたのである。同社ではこの活動を強化するための検討を開始した。

 情報を収集するなかで浮かび上がってきたのが、チャンピックスなどの禁煙補助薬を使ったオンライン禁煙外来プログラムだった。「ワーキンググループに参加する産業医から提案を受けたのがきっかけでした」と竹田氏は振り返る。

参加申込者の数が
従来の1.5倍に

Medicallyの「禁煙外来」サービス
Medicallyの「禁煙外来」サービス
➜ https://www.medically.com/smoking/
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 同社では具体的なプログラムを選定するために、禁煙補助薬を使ったオンライン禁煙外来プログラムを提供している数社にヒアリングを実施した。その結果、選ばれたのがメドケアの健康経営推進サービス「Medically(メディカリー)」のオンライン禁煙外来だった。選定理由として竹田氏は、実施期間などのフレキシブルな対応を挙げる。

 「多くのプログラムの実施期間は2カ月間でしたが、治療効果のエビデンスがある3カ月間への変更を希望していました。それに応じてくれたのはメドケアのMedicallyだけでした」(竹田氏)

 Medicallyのプログラムは健康増進月間とされる2019年10月から導入されることが決まり、同年の8月から告知を開始して希望者を募り、9月から面談を開始した。「従来のオンラインプログラムに比べて1.5倍もの多くの参加申し込みがありました。想像以上でした」と田中氏は話す。

 成果が上がった背景には、禁煙支援に対する幅広い選択肢を提示したことがある。まず禁煙希望者は、通院とオンラインプログラムのどちらでも選ぶことができる。費用はどちらも全額補助される。また、オンラインプログラムには禁煙補助薬を使うMedicallyのプログラムと、従来の禁煙パッチやニコチンガムを使うアプリの両方が用意されている。

 さらに参加申込書に独自の工夫を加えた。どちらのオンラインプログラムを選ぶべきかを導くためのチェックシートを用意したのである。竹田氏は「参加者の喫煙状況などから適切なプログラムに誘導するようチャートにしました」と話す。

 参加申込者にはオンラインプログラムの利用説明書が送付され、医師によるオンライン診断を受診すると処方薬が配送される。すべてスマートフォンを使用したオンライン診断で完結するため、利用者は都合のいい時間・場所で受診できる。受診していない人にはMedicallyからプッシュメールが送信され、受診予約を促す仕組みも提供されている。

 「初回の面談率は7割と高く、2回目以降の面談は1回につき10分程度と短時間で済むので好評です。また一度パッチで禁煙に失敗した人が禁煙補助薬のオンライン禁煙外来にチャレンジしてくれています。それもうれしいですね」と竹田氏は成果を語る。

Medicallyの「禁煙外来」サービスの流れ

幅広い選択肢で
要望に応じた支援を

 同社の禁煙補助薬を使ったオンライン禁煙外来の利用はまだ始まったばかりで、どれだけの人が禁煙に成功したのかというデータは集められていない。しかし、Webサイトを通して処方薬の処方状況を見ることで、進行状況はリアルタイムに確認できる。

 「いつでもどこからでも短時間で受診できて周囲に負担がかからないので続けやすい、という声が多いですね。また、ついたばこを吸ってしまったときの対応や薬の副作用などを直接医師に聞けるのは心強いという声もあります。禁煙成功率がどのくらいになるのか楽しみです」(竹田氏)

 いつでも受けられるオンライン禁煙外来は、全国に1200以上の事業所を展開する同社にとっては、社員に平等に機会を提供できるという意味でも重要な役割を果たしている。禁煙を希望していても、仕事の都合や家庭の事情で通院できない人たちも支援することができるからだ。

 「ダイバーシティを推進している当社では、働き方も様々です。禁煙についても強制するのではなく、あくまでも社員を応援する仕組みとして幅広い選択肢を提供することを目指しています」と田中氏は語る。

 同社では健康増進を支援するために、昨年10月には健康増進支援アプリ「健康第一アプリ」をリニューアルしてヘルスケアに関するポイント制度を強化している。これも個人を尊重し、企業としてできるだけの支援をしていく同社の健康経営の活動の一環として捉えることができる。

 こうした健康経営によって同社が効果を上げてきた理由の一つには、幅広い情報収集活動があるのも重要なポイントである。健康増進活動に積極的に取り組む「KENKO企業会」への参画などを通じて広く他社事例などを集め、そこでの成果や実績をもとに自社の活動を見直してきた。

 Medicallyのオンライン禁煙外来のプログラムは厚生労働省の公募事業である「ICT禁煙支援コンソーシアム」に採用され、現在11の健康保険組合で利用されている。このような実績を持つプログラムを活用することが、禁煙支援を成功させるカギといえるのではないだろうか。

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