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ポストコロナ時代へ、感染症の専門家が提言

発生から間もなく世界中に感染が拡大し、医療だけでなく人々の生活や経済活動にも大きな影響を及ぼした新型コロナウイルス(COVID-19)。人類の脅威ともいえる今回のパンデミック(世界的大流行)を経て、医療や社会はどのような方向へ向かうべきか。感染症の専門家である昭和大学医学部客員教授の二木芳人氏に聞いた。(この取材は2020年4月14日に行われました)

新型コロナウイルスでは
深刻なPPE不足が発生

二木 芳人 氏
昭和大学医学部 客員教授
内科学講座臨床感染症学部門担当
二木 芳人

1976年川崎医科大学卒業。同大学呼吸器内科を経て、1988年から米国ニューヨーク・Memorial Sloan-Kettering Cancer Centerに留学。1990年に帰国後は、川崎医科大学、倉敷第一病院呼吸器センターを経て、2006年より昭和大学医学部臨床感染症講座教授。2017年より同特任教授、2020年より現職。日本化学療法学会、日本感染症学会、日本呼吸器学会などに所属。

 感染症の世界的な流行は今に始まったことではなく、2000年以降を見ても、2002年のSARS(重症急性呼吸器症候群)、2009年の新型インフルエンザ、2012年に発生したMERS(中東呼吸器症候群)と、数年おきに世界中で猛威を振るってきた。感染症専門医の二木芳人氏は、さまざまなウイルスがある中でも、じっくりと時間をかけて感染を広げるタイプのウイルスこそ危険だと指摘する。
「エボラウイルスはアフリカの村を全滅させるほど危険なウイルスでしたが、すぐに宿主を殺す、いわば自爆型でした。SARSやMERSも自爆型で、抑え込み対策が奏功したこともあり、いずれもWHOによって終息宣言が出されています。対して、新型コロナウイルスは長い時間をかけて宿主を弱らせ、その間に感染を広げていく、狡猾で賢いウイルスです。今後さらに手強いウイルスが登場し、人類を翻弄することもあるでしょう」(二木氏)

 新型コロナウイルスの流行を受け、医療現場ではマスクやゴーグルなどのPPE(個人防護具)が不足し、医療従事者が感染リスクにさらされている。日本では2009年の新型インフルエンザウイルス流行をきっかけに、PPEの備蓄を増やした医療機関もあったが、それでも十分ではなかったということだ。
「これまでのパンデミックを見ても、急速に感染拡大するのは呼吸器系に感染するウイルスです。こうした感染拡大に対処するためには、マスクやガウンなどのPPEが不可欠となります。いつ起こるか分からないパンデミック対策をするならば、政府が責任を持って膨大な量のPPEの備蓄を行うべきです」(二木氏)

先の見えない不安と戦う
感染症治療の難しさ

 感染症はいつどのような形で発生するか分からないが、それ以上に「先にいくほど状況が悪くなる怖さがある」と二木氏は話す。「自然災害であれば、発災時が最悪の状況で、そこから大変な状況は続くとしても、より良い状態に向かっていくことになります。医療においても、DMATという災害派遣医療チームが駆けつけて活躍できる仕組みがある。しかし、感染症パンデミックはまるで逆です。始めはそれほどでないと思っていても、感染拡大に伴って状況が悪化する中で戦っていかなければいけません」(二木氏)。

 医療現場で必要とされる資材や医療機器を扱う企業には、そのような状況を見越したBCP(事業継続計画)をしてほしいと二木氏は要望する。「感染症との長期戦では、経営的に厳しい局面になるとは思いますが、しっかりとした供給体制を維持することが大切でしょう。言うは易しではありますが、医療サプライの安定供給のための体制づくりをお願いしたい」(二木氏)。

感染症という病だけでなく
患者個人を診る医師に

 現在直面している感染症の問題としては、多剤耐性菌や院内感染対策などもある。感染症の治療を主として行いつつ、感染制御の専門的知識を有するICD(インフェクション・コントロール・ドクター)として、院内での感染制御をサポートする立場にもある二木氏は、「これからますます感染症専門医の重要性は増す」と断言する。

 しかし、日本は感染症医療において、先進的とはいえないという。現在、日本感染症学会が認定する感染症専門医は1560人(2020年5月13日現在)。アメリカには8000人近い感染症専門医がいるうえに、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)という組織が中心となって国家規模で感染症対策にあたっている。
「日本の感染症専門医の約1500人のうち、本当のスペシャリストといえるのは3割程度に過ぎません。ここ数年は私も後進の育成に力を注いでいますが、若い感染症医を育てていくと同時に、CDCのような感染症のプロ集団を作っていくことが必要だと思います」(二木氏)

 目の前の患者をよく見て、感染症を的確に診断し、治療することに注力してきた二木氏。現在は直接診療をすることはないが、「病ではなく、人を治すという気持ちでやってきました。若い医師たちにもその大切さを伝えていく」ことがこれからの使命だという。

 感染症は集団に広がるからこそ恐ろしい。だが、重要なのは患者1人1人に目を向けて寄り添うことができるかどうかだ。そんな姿勢を持つ感染症のプロフェッショナルたちが、未知のウイルスから人々を救うことになるのだろう。

二木 芳人 氏

メディアスホールディングス 池谷社長に聞く

医療環境サプライヤーとして、
人々の健康と暮らしを支える
池谷 保彦 氏

メディアスホールディングス株式会社
代表取締役社長
池谷 保彦

 当社は、衛生用品などのPB、注射器や針などの消耗品から、MRIやPETといった診断機器まで30万種以上を扱う医療環境サプライヤーです。新型コロナウイルスの感染拡大に対しては、独自の仕入れルートを駆使することで医療材料の安定供給に努めております。

 少子高齢化が進み医療費が増大する日本では、国民皆保険制度を維持することが大きな課題のひとつとなっていますが、私たち医療機器のディーラーには、安全で高品質な製品をできるだけ安価に医療機関に提供することが期待されております。私たちは製品価格だけでなく、病院への物流や医療材料の管理を含むトータルソリューションの提案など、時代の変化に対応したサービスを積極的に取り入れることで、ローコスト化を進めています。

 また、SARS流行時の経験を踏まえて、かねてからPPEの備蓄などのBCPに取り組んできました。新型コロナウイルスは予想を上回る早さで感染が拡大したため、備蓄は瞬く間に底をついてしまいました。しかしながら、将来起こりうるパンデミックに備え、安定供給に向けた取り組みを続けることが私たちに求められている使命だと改めて痛感しています。

 医療を支えることは、人々の健康と暮らしを支えることです。私たちが強みとするスケールメリットを最大限に活用しつつ、個々の医療現場の声に応えるようなきめ細かな取り組みを推進していきます。

商品写真

メディアスホールディングスは、プライベートブランド「ASOURCE® SELECT」(アソースセレクト)を立ち上げ、PB商品のラインアップ拡充にも取り組む。

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