善浪:内山さんは、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進や、デジタルイノベーション創出のためのアドバイスやコンサルティングを行っておられますが、今回の新型コロナウイルス感染症の流行は、日本企業によるDXへの取り組みに、どのような変化をもたらしたとご覧になっていますか。
内山:新型コロナウイルス感染症によって、多くの企業はこれから本格化する「アフターデジタル」の世界観を疑似体験したと思います。
アフターデジタルの世界観とは、数カ月前のように人々の生活や消費の接点のほとんどがリアル(対面)で、たまにオンラインショッピングや楽曲ダウンロードなどのデジタルにつながるような状況ではなく、接点のほとんどがデジタルで、時々、特別な体験としてリアルな接点につながる世界観のことです。アフターコロナの新しい生活様式を 「ニューノーマル」という言葉で言い表すようになってきていますが、アフターデジタルとニューノーマルはほとんど同じ意味と捉えて良いでしょう。
いずれにしても、多くの日本企業は、やがて本格化するデジタルを中心とした新しい生活様式を垣間見せられて、「DXを本格的に加速させなければ、変化に取り残されてしまう」という強い危機感を抱いたのではないでしょうか。
善浪:全く同感です。新型コロナウイルス感染症の流行前から、日本でもDXに取り組む企業は増えていましたが、ここに来て取り組みが一気に加速したように思います。
もともとDXの目的は「不確実な時代への対応」ですから、まさに新型コロナウイルス感染症は予測し得ない最悪なことが起こったと言えます。今まで漠然としていた目標。すなわち、経営環境の変化に機敏に対応できる体質やペーパーレスやリモートに対応するといった要件がクリアになりました。これらにいち早く対応できるか否かということがニューノーマル時代の企業の盛衰を分けると言って過言ではないでしょう。
ニューノーマルに対応するにはDXで目指してきたビジネスデータの持ち方と経営への活用がとても有用であると検証できました。このあたりを深掘りしていきたいと思います。