日経ビジネス電子版 SPECIAL
先進企業に学ぶ“デジタル変革の鍵”とは?
小堺 弓木奈 氏
伊藤 孝史 氏
蝶採 トックディル 氏
松岡 聡 氏
堀江 健志 氏

顧客接点の拡大、
新しい顧客体験の創出を目指す

小堺 弓木奈 氏

小堺 弓木奈

株式会社三菱UFJ銀行
デジタル企画部
デジタルバンキング企画室 次長

 デジタル化の急速な進展とともに、金融サービスのあり方も大きく変化している。そうした流れに沿って、顧客接点の拡大や新しい顧客体験の創出を目指し、新たなデジタルサービスの開発、提供に注力しているのが株式会社三菱UFJ銀行だ。

 同行のデジタルイノベーション全般に関わるデジタル企画部 デジタルバンキング企画室 次長の小堺弓木奈氏は、「銀行は規制で守られてきた産業であり、規制に従ってサービスを提供していれば問題なしといった部分がありました。しかし、デジタル化の流れが急速に進んだことで、お客様の行動の変化をキャッチアップしていくことが急務になっています」と語る。

 銀行に求められるのは安全・安心なサービスであり、その基本はこれからも変わらないが、さらに一歩進んで、顧客のニーズに応えたサービスのデジタル化を推し進めることを目指しているのだ。より具体的なデジタル化の要点として、小堺氏は「お客様との接点の強化、印鑑など旧来の手続きのデジタル化」の2つを挙げる。

 これらを実現する新たなデジタルバンキングサービスとして、三菱UFJ銀行は2020年9月24日に「Mable(メイブル)」をリリースした。

 「『Mable』は銀行や証券、クレジットカードといった身の回りの金融サービスを『見える化』する家計管理アプリです。預金残高や資産の運用状況などを常に把握することで、『老後のお金は足りるのか?』といった不安を解消することができます。従来の銀行サービスでは、お客様との接点は、口座開設、住宅ローン、年金運用と、商品ごとにばらばらの“点”でしかありませんでしたが、このサービスを通じて、顧客接点を“線”で捉え、お客様との日常的かつトータルな“つながり”を創出していきたいと考えています」と小堺氏は語る。

 三菱UFJ銀行は、このデジタルバンキングサービスを提供するための基盤として、「Red Hat® OpenShift®」を活用している。小堺氏は、外部パートナーとの連携によってスムーズに開発できたことや銀行ならではの堅牢なセキュリティ基盤の上にそのまま載せられる点など、同コンテナプラットフォームを高く評価した。

 長引く超低金利による構造的な収益力の悪化、フィンテックの勃興による競争激化など、金融業界を取り巻く環境は厳しさを増している。そうした中、デジタルの力を駆使して顧客接点の拡大や新たな顧客サービスの創造に積極的に取り組む三菱UFJ銀行の姿勢は、多くの金融機関の参考となりそうだ。

IT業務プロセスの自動化で、
5G時代のスピードに対応する

伊藤 孝史 氏

伊藤 孝史

株式会社NTTドコモ
ネットワーク本部
サービスデザイン部 部長

 デジタル変革の中でも、とくに大きな技術革新やビジネスモデル変革の波を浴びている業界の一つが通信業界であろう。日本最大の移動体通信事業者である株式会社NTTドコモでサービスの企画を担当するネットワーク本部 サービスデザイン部 部長の伊藤孝史氏は、「通信業界は10年に1回ジェネレーションが大きく変わってきた業界で、2020年は本格的な5G元年に当たります。ここから5Gを活用して、どのように産業構造を変えていけるかということを考えると、今の状況は大きなチャンスです」と語る。

 一方で、サービス変革のためにはデジタル技術によって業務プロセスの自動化を進めるなど、「人の介在をできるだけ排除する仕組みが、ますます求められるようになるはずです」と伊藤氏は予見する。人による作業がサービス対応を遅らせ、品質を下げると、顧客体験に致命的な悪影響を及ぼしかねないからだ。

 そこでNTTドコモは、4000万人強のモバイルユーザーにインターネット接続やドコモメール、位置情報などの各種サービスを提供するための携帯サービス基盤「CiRCUS/MAPS」を含むシステムに、レッドハットの自動化プラットフォーム「Red Hat® Ansible® Automation Platform(以降Ansible)」を採り入れた。

 伊藤氏はその理由について、「すべての自動化を1つのプラットフォームで行うという思想を持っていることが、我々にとってのメリットにつながると判断しました。5Gの普及とともに今後ますます通信量が増えれば、お客様にインターネット接続などの各種サービスを提供するために、相当な設備機器の増強が必要になってきます。従来のように人手が介在するオペレーションを行っていたら、コストも時間も膨れ上がってしまうことでしょう。持続可能で、常に進化し続けるサービスを提供するためには、プラットフォームの抜本的な見直しが避けては通れなかったのです」と説明する。

 また、「Ansible」は開発が容易で、工数やコストを大幅に低減できることも選定の理由であった。伊藤氏は、「22年までにインフラ開発・運用コストとその作業工数を従来の2分の1に削減することを目標としています」と語った。

 5Gの本格的な普及とともに、通信サービスそのものや、それを支える周辺サービスに対するユーザーの要求はますます高まっていくだろう。人手のかかっていたオペレーションを自動化したNTTドコモの取り組みは、より高品質で迅速なサービス提供にも結びつく。ユーザーにとっても非常にメリットのある変革と言えそうだ。

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