日経ビジネス電子版 SPECIAL
先進企業に学ぶ“デジタル変革の鍵”とは?
小堺 弓木奈 氏
伊藤 孝史 氏
蝶採 トックディル 氏
松岡 聡 氏
堀江 健志 氏

世界第1位の
スーパーコンピュータに
求められたOSとは?

松岡 聡 氏

松岡 聡

理化学研究所
計算科学研究センター
センター長

 かつて世界一に輝いた「京」(けい)の100倍の性能を誇り、4つのベンチマークで世界第1位(※)を獲得した次世代スーパーコンピュータ「富岳」。共同開発した理化学研究所と富士通株式会社は、「アプリケーションファースト」を最大の方針に掲げ、医療や創薬、環境、災害、エネルギー、ものづくりなど、国民の関心の高い社会問題に対し、最高の性能を発揮することで、迅速に解決するスーパーコンピュータを目指した。

 理化学研究所 計算科学研究センター センター長の松岡 聡氏は、「『京』の100倍という目標を達成するには、競合CPUの3倍の性能で3分の1の消費電力を実現するという、矛盾する課題の克服が必須でした。また、アプリケーションファーストを実現する汎用性の高いアーキテクチャの構築にも非常に苦労しました」と振り返る。

堀江 健志 氏

堀江 健志

富士通株式会社
執行役員常務

 「富岳」のOSには「Red Hat® Enterprise Linux®」が採用されている。富士通 執行役員常務の堀江健志氏は、同OSの選定理由について、「オープンソースは、コミュニティに参画する多種多様な技術者が共同開発を進めることで、最先端の技術をスピーディに生み出せるのが最大の特長です。さらに、『富岳』開発の重要テーマのひとつが汎用性・互換性の高いスパコンを目指すことだったので、数多くあるLinuxディストリビューションの中から『Red Hat Enterprise Linux』を選んだのです」と説明する。

 あらゆる社会的課題の解決に利用できる汎用性の高さを発揮して、「富岳」は新型コロナウイルスの分子レベルでの分析や約2000種類に及ぶ既存薬の中から新型コロナウイルス感染症に効果のあるものを見つけ出す研究などに活用されている。

 松岡氏は、「『富岳』は、すべての人とモノがつながり、今までにない新たな価値を生み出す超スマート社会『Society 5.0』を世界に先駆けて実現するための重要な情報基盤です」と、これからの役割にも期待している。堀江氏も「すでに新型コロナウイルス対策に試験的に利用されていますが、今後も幅広い分野の最先端研究に活用されるものと確信しています」と語った。

 処理能力が格段に向上し、幅広い社会問題の解決に適用できる汎用性・互換性を備えた「富岳」。レッドハットのオープンソース・ソリューションを採用したことが、その特長を実現する原動力のひとつとなったことは注目に値する。オープンソースが社会変革にも大きな役割を発揮することを証明した事例だと言える。

※「富岳」は国際会議「ISC2020」2020年6月22日付発表、TOP500、HPCG(High Performance Conjugate Gradient)、HPL-AI、Graph500 Committeeのベンチマーク4部門のランキングにおいて、世界第1位を獲得した。TOP500、HPCG、HPL-AI、Graph500 Committeeの4部門では、国際会議「SC20」11月16日付発表のランキングでも第1位を獲得。2期連続の第1位獲得となった。

市場ニーズの変化に即応できる
開発基盤を求めて

蝶採 トックディル 氏

蝶採 トックディル

株式会社日本総合研究所
DXシステム本部 DX開発システム部 部長

 フィンテックを活用する新業態、新サービスの台頭など、金融業界を取り巻く環境は目まぐるしいスピードで変化している。コンサルタントやSIerに任せっきりでは、そうしたデジタル変革のスピードに追いついていけないと、サービス開発の内製化に力を入れているのが株式会社三井住友フィナンシャルグループである。

 銀行、リース、証券、クレジットカード、コンシューマーファイナンスなど、幅広い事業を展開する同グループにおいてデジタル変革をリードする株式会社日本総合研究所 DXシステム本部 DX開発システム部 部長の蝶採トックディル氏は、「金融業界は今、ITによるパラダイムシフトやゲームチェンジが絶えず起こり得る状況にあり、新たなデジタルサービスを創出する立場として非常にやりがいを感じています」と語る。


 内製化を進めるために不可欠なのが、人材の育成と抜擢だ。蝶採氏は、「当グループ独自のデジタル人材の要件を定義した上で、3年間の要員計画を策定。若手を中心にOJT、コーチング、社内研修などを実施しています。チームを率いるデジタルリーダーを育成することにも力を入れています」と説明した。

 一方、三井住友フィナンシャルグループは、2020年度にコンテナ基盤として、レッドハットのマネージドサービス型コンテナ基盤である「Red Hat OpenShift Dedicated」を採り入れた。これは、商用サービスの基盤としては国内金融機関で初の導入事例である。

 蝶採氏は選定の理由について、「インターネットを通じたデジタルサービスを開発するための基盤なので、市場ニーズの変化に即応できるスピードを重視した結果、パブリッククラウドのAWS上でレッドハットが提供する『Red Hat OpenShift Dedicated』が最適だと判断しました」と明かす。

 当初は3カ月程度の構築期間を想定していたが、専門知識や経験が豊富なレッドハットのコンサルティングサービスを得られたことや、レッドハットが米国本社幹部と密に連携しながらハードルの高いリクエストにも応えてくれたこと、24時間対応のプレミアムサポートで問い合わせ対応が迅速だったことなどから、わずか3日程度で完了したという。

 DXの推進において、クラウドサービスの活用は必須である。とくに金融のように市場環境や顧客ニーズが目まぐるしく変化する業界においては、新サービスをタイムリーに提供できるクラウドベースの開発・運用基盤が欠かせない。その意味で、三井住友フィナンシャルグループがレッドハットのソリューションを採用したのは合理的な決定である。「Red Hat OpenShift Dedicated」を活用した同社の今後の新サービスに期待したい。

 このように、レッドハットのエンタープライズ・オープンソース・ソリューションは、企業のデジタル変革をスピーディに、かつ目標通りに実現する。オープンソースならではの多種多様な技術者同士による「開かれた開発」がそれを可能にするのだ。

 激しい変化の時代をオープンソースの力で乗り切り、ネクストノーマルに踏み出してみてはどうか。

Red Hat APAC Innovation Awardsとは?

 本記事内で紹介した株式会社三菱UFJ銀行、株式会社NTTドコモ、理化学研究所と富士通株式会社、株式会社三井住友フィナンシャルグループと株式会社日本総合研究所は、いずれもレッドハットの「Red Hat APAC Innovation Awards 2020」を受賞している。同賞は、ビジネス、業界または社会に変化をもたらす独創的な考え方、確固たる問題解決、レッドハットのエンタープライズ・オープンソース・ソリューションの独創的な利用を実証する組織の技術的成果を上げたアジア太平洋地区の企業や団体などに贈られている。

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