日経ビジネス電子版 SPECIAL
サテライトオフィス特集 特別インタビュー

優秀な人材確保を有利に進める“働く場所”改革 社員のやる気と生産性を最大化するワークプレイスの選択肢とは

新型コロナウイルス感染症の拡大とともに、急速に普及した在宅勤務。しかし、社員の生産性を上げるには、在宅よりもサテライトオフィスで働いてもらうほうが効果的との意見もある。東京工業大学の比嘉邦彦教授に聞いた。

在宅勤務の生産性は“慣れ”によって上がる 在宅勤務の生産性は“慣れ”によって上がる

比嘉 邦彦氏

東京工業大学
環境・社会理工学院 教授

比嘉 邦彦

1988年に米国アリゾナ大学から経営情報システム専攻でPh.D.を修得。同大学講師、ジョージア工科大学助教授、香港科学技術大学助教授を経て、96年に東京工業大学 経営工学専攻助教授。99年より同大学教授。

 一時は落ち着いたかに見えた新型コロナウイルス感染症拡大の勢いが再び増大し、企業が社員に在宅勤務をさせる動きも、改めて広がっているようだ。

 2020年5月に東京都が行った調査によると、政府が緊急事態宣言を発令する前の3月と比べて発令後の4月はいずれの規模の企業でもテレワークを導入しているとの回答が増加した(図1)。

 しかし、多くの経営者は在宅勤務によって、「社員の生産性が落ちる」と懸念しているのではないだろうか。

 「テレワークの導入率が増加した半面、20年4月から6月にかけて行われた各種企業アンケート調査では、生産性が落ちたとの回答が多数を占めました。しかし、これは働き方に問題があったのではなく、あくまでも準備不足だったからです」と比嘉邦彦教授は語る。

 生産性が落ちたと答えた企業は、そもそも在宅勤務のための制度や仕組みが整っていなかった。

 「19年4月から働き方改革関連法が段階的に施行されたことなどから、一部の企業では在宅勤務を含むテレワークのための準備を進めてきました。しかし、社員がオフィス外で働くことにあまりメリットを感じない経営者は導入に後ろ向きでした。そこに新型コロナウイルス感染症が拡大したことにより、制度や仕組みが整わない状態で在宅勤務に踏み切らざるを得なくなったので、生産性が落ちてしまったのです」(比嘉教授)

 在宅勤務の導入は事前準備が不可欠と言えるが、生産性の向上につなげるためにはもう一つ必要な要素があると比嘉教授は語る。

 「Google社が今年4月下旬に日本企業を対象に行った調査では、オフィスで働いていた人が在宅勤務で生産性を上げるには、一定の“慣れ”が必要だという報告が出ています。新型コロナウイルス感染症の“第一波”が過ぎたとされる7月以降に日本で行われた企業アンケート調査では、在宅勤務でも生産性が上がったという回答が見られるようになりました。慣れてしまえば、むしろ通勤時間の削減や、満員電車に揺られて通勤するというストレスが軽減されるメリットなどから、社員のやる気や生産性を上げる効果も期待できるのではないでしょうか」

図1 :東京都のテレワーク導入率の変化

図1 :東京都のテレワーク導入率の変化

出典: 2020年5月11日 東京都新型コロナウイルス感染症対策本部「テレワーク 『導入率』 緊急調査結果」

2020年4月の緊急事態宣言の発令を受けて、東京都の企業のテレワーク導入率は急増。従業員30~99人の小規模企業でも3月は19.0%だったのに対し、4月は54.3%と2.8倍増加した

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