日経ビジネス電子版Special

未曾有の事態だからこそ、守りから攻めへ いま、日本社会がやらなければならないこと

型コロナウイルスの世界的な感染拡大とともに、リーマンショックを上回る未曾有の経済危機への懸念が強まっている。企業経営者は必死の思いで会社を守ろうとしているが、クラウド型ビジネスプラットフォームやSaaSを提供するServiceNow Japanの村瀬将思社長は、「こんなときだからこそ、守りだけに徹するのではなく、攻めの変革が求められています」と語る。

デジタル変革を「やれればいい」から
「やらなければならない」に

 2020年の年初に発生した新型コロナウイルスの感染は、瞬く間に世界中に広がり、日を追うごとに深刻さを増している。そんななか、企業が直面しているのは、テレワークの一斉開始である。

 これまでは福利厚生などの意味合いで、一部の社員に対して限定的にテレワークを認めているケースがほとんどだった。しかし、今の状況はこれとは全く異なる。降って湧いたようにテレワーク“前提”の就業環境になり、それをオフィス内からサポートする従業員が社内に常駐している体制でもない。

村瀬 氏
ServiceNow Japan 合同会社
執行役員社長
村瀬 将思
1993年TKC入社、2000年iGATE Global Solutions Limited入社、09年日本HPにHPSW、PS事業本部本部長として入社。12年itSMF Japan理事に就任。14年日本HPのHPSW事業統括執行役員に就任。16年1月より現職。

 企業経営者の多くは、この未曾有の危機、そして就業環境の激変を前にして、戸惑い、手を打ちあぐねていることだろう。しかし、ServiceNow Japanの村瀬氏は「対処法がないわけではありません。むしろ、打つ手はいくらでもある。なぜなら、テクノロジーの急速な進歩とともに、企業が危機に立ち向かうためのツールや、取り得る選択肢はひと昔前と比べてはるかに増えているからです」と語る。

 「未曾有の危機」というフレーズから思い起こすのは、9年前に発生した東日本大震災だ。あの時も、甚大な津波被害や原子力発電所事故などの影響によって、日本の社会と経済は大混乱に陥った。

 しかし、「日本の経営者は、あのショックを乗り越えたことで一定の経験値と自信を積んだはずです。地震とウイルス感染では原因こそ異なるものの、危機が起こったらどう対処すべきかという方法論に変わりはありません。就業環境の変化を冷静に分析しながら、まずはこの危機をどう乗り切るべきかを考えることが大切です」と村瀬氏は語る。

 さらに村瀬氏は、東日本大震災が発生した9年前と現在の大きな違いとして、
①増強されたネットワークインフラ
②ほぼ全国民に行き渡ったスマートフォン
③ビジネスにおけるクラウドサービスの浸透
の3つを挙げる。

 「新型コロナウイルスの感染拡大とともに、社員を会社に出社させず、テレワークを促す動きが広がっていますが、これはネットワークとスマートフォン、クラウドサービスという通信・情報インフラが、この10年近くで急速に整備されたからこそ実現できているのです。言い換えれば、これらのインフラや最先端ITツールをもっと積極的に活用することで、新型コロナの影響からのリカバリーは早まり、感染終息後は、他社に一歩先んじた成長を実現できるようになるはずです」(村瀬氏)

 村瀬氏が提唱するのは、まずはこの危機のなかで会社をしっかり守り切ること。そして、この危機をきっかけとして、これまでの常識を乗り越え、攻めの変革にも挑むことである。

 「例えば働き方改革。社員がどこで働いてもパフォーマンスを最大限に発揮できるようにするには、デジタルテクノロジーを駆使した仕組みづくりが必要ですが、ここ数年、政府が推進を呼び掛けてきたにもかかわらず、いまだにデジタルを駆使できていない企業が少なくありません。しかし、今回の新型コロナウイルスの感染拡大によって、多くの企業は否が応でもデジタル化を推し進め、社員の働き方を本質的に変えなければ、生産性を維持することが困難な状況に追い込まれてしまいました。これをきっかけに、これまで多くの日本企業にとって『Nice to have』(やれればいい)という程度の選択にすぎなかったデジタル変革が、『Must to have』(やらなければならない)といった選択に変わっていくのではないでしょうか」(村瀬氏)

 ServiceNowは、そうした企業のデジタル変革をサポートする一方、今回の新型コロナウイルス感染拡大で危機に陥った企業や公的機関の支援にも動き出しているという。

 具体的にどのような取り組みを行っているのか、次のページから詳しく見てみよう。

ビデオ会議
今回のインタビューが実施されるにあたり、事前準備はすべてテレビ会議を通して行われた。ServiceNowでは、この写真のように幹部会もテレビ会議となり、映し出される背景の画像を変えるなどして、個人個人で工夫している。