日経ビジネス電子版Special

DXの命運を握る通信インフラ・サービスプロバイダー業界 ニューノーマル時代への挑戦と課せられた社会的使命

新型コロナウイルスの感染拡大とともに、ビジネスではリモートワーク、プライベートでは動画サービスなどの需要が急速に高まっている。人々の働き方や暮らしが大きく変わり、事態の収束後にはニューノーマル(新常識)時代が到来するといわれる中で、通信インフラ・SP(サービスプロバイダー)業界は、どうすれば膨張する需要に適切に対応し、安定的なサービス品質の維持や、さらなる成長を実現できるのだろうか。

通信の需要が激増する中、
いかにサービスの質を維持すべきか?

 2020年は、通信インフラ・SP業界にとって華々しい歴史の変わり目となるはずだった。

 前年に米国と韓国で5Gの商用サービスがスタートし、日本でも3月に始まったことで超高速・大容量通信時代がいよいよ本格的に幕を開け、そのテクノロジーを応用した革新的なICTサービスが次々と登場することが期待されていた。

 もちろん、時計の針が止まったわけではなく、5Gに対応した新たな製品やサービス、ソリューションの開発は続いている。

 だが、足元で通信会社やSPがより多くの経営資源を投入せざるを得なくなっているのは、新型コロナウイルス感染拡大への対応ではないだろうか。

山下 氏
ServiceNow Japan 合同会社
執行役員
第一営業統括本部
統括本部長
山下 一将
日系ITベンダーを経て、2009年に日本ヒューレット・パッカードに入社し、ソフトウェア事業部にて営業本部長を経験。16年3月にServiceNow Japanに入社し営業部隊のリードに従事し、18年1月より執行役員に就任。日本市場での「働き方改革」や「デジタルイノベーション」を推進。

 人と人の接触が生命の危険を脅かす中で、企業はリモートワークを積極的に推し進め、在宅を余儀なくされた人々は、持て余した時間を動画サービスやオンラインゲームなどに費やしている。おのずと通信回線のトラフィック量や、サービスに関する問い合わせなどは激増し、通信インフラやICTサービスを提供する企業の業務負荷も、かつてないほど大きくなっている。

 「あまりにもトラフィック量が増大して、提供する動画の解像度を落とさざるを得なくなった例なども見受けられます。通信需要の急速な膨張が、ICTサービスの品質にまで影響を及ぼしているのです。多くの国では、経済や社会活動を止めないように通信会社に回線をもっと太くすることを求めていますが、すぐに対応できるわけではありません。一方で、通信の遅延や停滞、サービス品質の低下が著しくなると、ユーザーからの苦情は増え、コールセンターなどの対応が煩雑化します。通信インフラ・SP業界は、国からの要請と、ユーザーからの要望との間で板挟みの状態になっているのです」

 そう語るのは、通信インフラ・SP業界をはじめ、あらゆる産業向けにクラウド型ビジネスプラットフォームやSaaSを提供するServiceNowの山下一将氏である。

御厨 氏
ServiceNow Japan 合同会社
第一営業統括本部
通信・xSP営業本部
本部長
御厨 健悟
日系ITベンダーを経て、日本IBMへ入社。Lotus コンサルティング部長、Tivoliテクニカルセールス部長を経て、GEデジタルエナジーでは営業部長に就任。2014年にServiceNowに入社し、19年より現職。ワークフローからシステム運用まで日本市場でのDXを推進する。

 サービスの質が下がれば、顧客は離れていく。だが、新型コロナウイルスの感染拡大とともに普及するリモートワークや在宅中心の暮らし方は、サービスへの需要の“量”を増やし、その結果、提供できるサービスの“質”が下がるというジレンマが増幅しているのだ。こういったジレンマに対し、同じくServiceNowの御厨健悟氏は次のように語る。

 「新型コロナの流行が収束してからも通信インフラ・SP業界のサービスに対するニーズが衰えることはないでしょう。むしろ、在宅という働き方や暮らし方が完全に定着し、ますますニーズが高まっていく可能性があります。そうした状況のもと、拡大する需要を取り込みながら成長を続けていくためには、ユーザーからの要望や苦情に適切に対応し、速やかに通信インフラやサービスを提供または復旧できる仕組み作りが不可欠だと言えます」

 そうした通信インフラ・SP業界が直面する喫緊の課題はいかにして解決できるのか? その詳細について、次のページから詳しく見てみよう。